2018年09月10日号

(2018年09月03日~2018年09月07日)

先週の為替相場

週の後半に円安強まる

 3日からのドル円相場は、週の半ばにかけてドル高円安の動きが優勢となったが、その後値を落とす展開に。もっとも110円台前半から111円台後半にかけてのレンジの中での取引に終始しており、目立った方向性は見えなかった。

 ドル高新興国通貨安の流れなどが支えとなり、週の半ばにかけてはドル円も下値しっかりの動きに。

 カナダとのNAFTA再交渉が難航するなど、米国の通商問題への懸念が見られた。しかし、こうした懸念が投資資金の米国への集中を誘うとの思惑もあり、ドル全面高の流れが継続した。

 4日に発表された米ISM製造業景気指数(用語説明1)が、予想を超えるかなりの好結果を示したことも、ドル買いに安心感を与えた。

 もっとも111円台後半からは利益確定の売りが優勢となり、高値での買いには慎重な姿勢が見られた。

 世界的な株安の動きなども重石となり、ドル円は一転して頭の重い展開に。

 さらに、6日の海外市場で米紙WSJのコラムニストであるフリーマン氏が、トランプ大統領が同氏との電話で「貿易問題で次に日本と争う公算を示唆した」と発言したことにより、一転して円買いが優勢に。

 ドル円は8月22日以来となる110円台前半まで値を落とす場面が見られた。

 注目された7日の米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を超える前月比20.1万人増を記録したことに加え、平均時給が前年比+2.9%とこちらも予想を超える好結果に。平均時給の伸びはリーマンショック後の景気後退(リセッション)終了後で最大となっており、米労働市場の力強さを印象付けるとともに、個人消費への期待や、物価上昇圧力への期待にもつながってドル高を誘った。

 ドル円は一転して111円20銭台まで上昇と、ドル買いの動きが優勢に。

 しかし、その後トランプ大統領が中国製品に対する2000億ドル規模の追加関税の早期発動見込みを示したことや、さらに2670億ドル規模の追加関税の用意があると発言したことがドル円の重石に。日本に対しても新たな協定で合意する必要があると発言しており、通商摩擦問題が円買いを誘う格好で、高値から調整が入って週の取引を終えている。

今週の見通し

 通商摩擦問題をにらむ展開。

 先週末の米雇用統計にみられるように米経済自体は依然としてかなり好調。一方で通商摩擦問題がリスク警戒感を誘っており、非常に難しい展開に。

 110円台前半から111円台後半にかけての直近のレンジを超えていくだけの方向性が見えない展開で、レンジの中での振幅が基本となりそう。

 通商摩擦問題に関しては、まず対中国では2000億ドルの追加関税の早期発動に加えて、2670億ドルの追加関税に言及したことで、とりあえずの区切りとなるかがポイントに。昨年の中国からの米国の輸入総額は5050億ドルで、すでに発動済みの500億ドルに今回の2000億ドル及び2670億ドルを足すと、昨年の輸入総額を超え、基本的に100%関税がかかる格好となる。中国側からの有効な対抗措置が取りにくいこともあり、材料的には出切った感はある。実体経済への影響を見極め、中国株の動向などを確認しながら、円買いの動きとドル買いの動きの勢いを確認する格好に。

 カナダとのNAFTA再交渉に関しては、前向きな協議が続くとは報じられているものの、合意がまだ遠い印象。焦点となる乳製品の障壁問題でどちらがどの程度歩み寄れるのかがポイントに。協議が長引き、トランプ大統領がより圧力を強めてくると、こちらもリスク警戒の円買いと、対カナダを中心としたドル買いの流れを誘いそう。

 ここにきて直接の言及がある日本との通商問題も、今後は材料視されてくる可能性。11月の中間選挙(用語説明2)に向けて、対外強硬姿勢はアピールポイントとなりやすいだけに、要注意。

 もっとも、これらの通商問題を除くと、米経済の力強さはドル円の支えに。通商交渉に進展が見られないと、ドル買いの勢いが強まる可能性も。

 カナダとの協議は月末までかかる可能性が指摘されており、中国との協議は11月後半のG20までまとまらない可能性があるだけに、いったんはドル買いが強まる可能性が高そう。

 ドル円は110円台前半から111円台後半にかけてのレンジを中心に、上方向を試す可能性がやや高い展開か。

用語の解説

ISM製造業景気指数 米国の供給管理協会(ISM: Institute for Supply Management)が毎月発表する製造業に関する景気動向調査。全米の製造業約350社の購買(仕入れ)担当役員に対して生産、新規受注、価格、雇用など10項目についてアンケート調査を行い、その結果を基に指数化した指標。50を景気の好悪判断の境目としている。計測月の翌月第1営業日に発表され、発表が早いことから、景気の先行指標として意識されている。
中間選挙 西暦で偶数の年の選挙の日(11月の第一月曜日の翌日にあたる火曜日)に行われる米国の連邦議会選挙のうち、4年に一度の大統領選と被らない選挙のこと。大統領の任期である4年の半期にあたるところでの選挙のため、中間選挙と呼ばれる。任期が2年である下院のすべての議席と、任期が6年である上院の三分の一が改選となる。また、任期満了となる州知事などの選挙も同時に行われる。

今週の注目指標

トルコ中銀政策金利発表
9月13日20:00
☆☆☆
 対ドルを中心に新興国通貨が大きく売られるきっかけとなったトルコリラ安。その背景には高インフレへの警戒感が見られる。エルドアン大統領の低金利志向もあって、7月の理事会では利上げを見送ったトルコ中銀であるが、今回の会合では適切な対応をとると表明しており、大幅な利上げが期待されている。もっとも、その利上げ幅の見通しは専門家の間でも大きく分かれており、予想が難しい状況に。利上げ見送りもしくは利上げを実施しても小幅なものにとどまる場合は、市場の見切り売りが強まり、ドル高リラ安から、他の新興国通貨特に南アランドなどの売りを誘いそう。リスク警戒での円買いもあって、ランド円は大きく下落する可能性も。サポートとなっている7円10銭近辺をしっかり割り込むと、2016年以来の7円割れまで意識されるところ。
ECB理事会
9月13日20:45
☆☆☆
 13日には20時に英中銀金融政策会合。20時45分にECB理事会の結果が発表される。共に政策金利は据え置きの見込み。英中銀は四半期インフレ報告や総裁会見などが行われる回ではなく、波乱要素はほぼない。ECBは21時半からのドラギ総裁の記者会見に注目。前回示されたユーロ圏経済は底堅く、すそ野の広い成長軌道という見通しが、米国との通商摩擦などを受けて後退しているかどうかがポイントに。通商摩擦への強い懸念が広がっているようだと、ユーロ売りドル買いに。ユーロドルは1.15を割り込んで下値をトライする流れが期待される。
米消費者物価指数(8月)
9月13日21:30
☆☆☆
 今月の米FOMC(連邦公開市場委員会)での利上げはほぼ確定的。市場の関心は12月に今年4回目となる利上げが実施されるかどうか、さらに来年以降の利上げペースはどうなるのかといったところ。先週発表された米雇用統計が強めに出たように、雇用市場は十分に堅調となっていることから、利上げペースを決めるカギは物価動向にあるという見方が一般的。13日の消費者物価指数は前年比2.8%と、前回から鈍化見込み。もっとも水準的には十分高く、予想を大きく下回らない限りドル売りは限定的か。予想通り、もしくはそれ以上でドル買いとなり、111円台で下値を支える材料となりそう。

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