2018年09月18日号

(2018年09月10日~2018年09月14日)

先週の為替相場

円安ドル安

 10日からの週のドル円相場は、円安及びドル円以外でのドル安がやや優勢な展開となった。

 株高の動きがドル円を支えたほか、13日のトルコ中銀金融政策理事会での事前見通しを超える大幅利上げを好感した新興国通貨買いドル売りの動きも、リスク警戒感の後退につながる形で円安を誘った。

 英国のEU離脱(ブレグジット)に関して、EU側のバルニエ首席交渉官が前向きな姿勢を示し、市場が警戒する合意なきEU離脱懸念が後退したことも、リスク警戒感の後退につながったほか、対ドルでの欧州通貨高を誘う形で、ドル円以外でのドル安進行に寄与した。

 週の初めは米中の通商摩擦問題などを警戒しての円買いも見られ、ドル円は111円を挟んでの展開で始まった。

 バルニエ首席交渉官が「8週間以内のEU離脱交渉合意は現実的」と発言し、ユーロ円やポンド円が買われたことで、ドル円も111円台でのしっかりとした展開に。

 13日のトルコ中銀政策理事会は17.75%から21%~22%程度への利上げ見通しが中央値となっていたが、結果は24%への大幅な引き上げに。前日にエルドアン・トルコ大統領が同国の政府系ファンド(SWF・用語説明1)のファンドマネージャーを全員解雇し自身が会長に就くという強権人事を発表。さらに高すぎる金利を下げるべきなどの発言を直前に行ったことで、中銀へのプレッシャーが強まっているのではとの思惑が広がった。そうした中での大幅利上げに、市場の警戒感が大きく後退する流れとなった。

 ドル円はこうした流れを受けて112円台を一時回復し、その後も112円挟みの高値圏での推移が続いた。

 クロス円もこうしたリスク警戒感後退の流れで基本的に堅調。ユーロ円が10日の127円台から131円台まで、豪ドル円が78円台から80円台後半までの上昇。

 ブレグジット交渉進展を好感してポンド自身にも買いが出ていたこともあり、ポンド円は143円台前半から147円近辺への上昇を見せた。

今週の見通し

 方向性を探る展開に。

 米中の通商摩擦問題への警戒感は継続。中国からの輸入品約2000億ドルに対する追加関税発動までは想定内も、その世界経済への影響などが未知数で、市場としては慎重な反応を見せている。

 もっとも、同問題に関してはドル高材料として意識されている面がある。そのためドル円での円高進行は限定的。

 中国の対米貿易が縮小した場合、影響を強く受けるのは新興国及び資源国とみられ、こうした国からの米国への資金移動の動きがドル全面高を誘う可能性。

 先週のトルコ中銀の積極的な利上げで新興国市場への警戒感は後退しているが、今週はトルコ以外のフラジャイル5(用語説明2)の中で、南アとブラジルの金融政策発表があり、結果次第では新興国通貨売りの動きが広がる可能性もあるだけに、警戒は必要か。

 なお、ブレグジット交渉の進展は安心材料。合意なきEU離脱懸念が一時広がっていた分、ポンドなどは対ドル、対円ともに買われやすい流れに。もっとも、英国はここにきて物価が落ち着いてきており、利上げペースの鈍化懸念が広がっているだけに積極的な買いには慎重な動きも。

 こうしたリスク要因を除くと、基本的にドル買いの流れ。堅調な雇用状況を背景とした米国の利上げ期待がドルを押し上げる展開に。

 ドル円は112円台をどこまで積極的に試すことができるのかがポイントに。それほど大きな材料はないが、こうしたときにじりじりと上値を伸ばす展開というのはよく見られる。

 113円超えを目先のターゲットに上値期待の展開が見込まれる。

用語の解説

政府系ファンド 政府系ファンド(SWF:sovereign wealth fund)、天然資源による国家収入や貿易黒字などによる外貨準備などを原資として、政府の出資する投資機関によって運営されるファンドのこと。運用基金が110兆円を超えるノルウェーの政府年金基金グローバルやアブダビのアブダビ投資庁などが有名。日本のGPIFやカリフォルニアのカルパースのような年金基金(ノルウェーのSWFは年金(pension)の文字がつくが原資は石油収入)と並んで、市場に影響を与える重要な機関投資家となっている。
フラジャイル5 高インフレ、経常赤字・財政赤字などにより経済基盤が脆弱(フラジャイル)となっているブラジル・インド・インドネシア・トルコ・南アの5か国のこと。ファンダメンタルズの脆弱性から通貨売りが起きやすい。米国の量的緩和第3弾の縮小が開始された際に同5か国の通貨が売られたことから、米金融機関モルガンスタンレーが名付けたものが広まった。

今週の注目指標

英消費者物価指数(CPI/8月)
9月19日17:30
☆☆☆
 19日に英国の物価統計である消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)、小売物価指数(RPI)いずれも8月分が発表される。もっとも注目度が高いのはインフレターゲットの対象であるCPIの前年比。予想では2.4%と前回の2.5%から鈍化見込み。昨年後半から今年初めにかけて3%台を付けていた英国のCPIは、英中銀の利上げ継続の大きな材料となった。しかし、その後物価は少し収まる傾向を見せており、前回8か月ぶりに上昇を見せる展開となったが、今回再び物価が収まる見込み。予想前後であればすでに織り込み済みも、予想以上に鈍化が目立つと、来年の利上げ期待後退につながってポンド売りも。ポンド円は146円をターゲットに下げを見せる可能性。
自民党総裁選
9月20日
☆☆
 安倍首相の優勢が意識されていることで、国内では材料視する動きは少ないが、メディアでの露出が多いこともあり、海外勢を中心に石破氏の可能性が意識されている。政策の継続性などから、現職が勝利すると一般的にリスク懸念の後退につながる。下馬評通り安倍首相の三選が決まると、ある程度円安の動きにつながる可能性。ドル円は112円台にしっかりと乗せる材料となりそう。
南ア中銀政策金利
9月20日
☆☆☆
 19日にブラジル中銀政策金利発表、20日に南ア中銀政策金利発表が行われる(ともに結果発表は会合終了後となっており時刻未定)。両国とも金利据え置きの見込み。来月の大統領選に向けて金融政策の大きな変更がやりにくいブラジル中銀はともかく、南ア中銀に関しては通貨安やインフレ抑制のための利上げに踏み切るのではとの思惑がごく一部で出ている。南ア中銀が利上げを実施した場合は、一気のランド買いに。ランド円は8円が視野に見えてくる。

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