2018年10月01日号
先週の為替相場
株高が円安誘う
9月24日からの週のドル円相場は、堅調な動きが続いた後、週の後半にドル買い円売りが加速する展開となった。
112円台半ばで始まった先週のドル円相場。週の半ばまでは、底堅い動きの中で113円を何度かトライする展開となったものの、113円前後での売りに頭を抑えられ、上値を伸ばしきれない展開が見られた。
ドル円以外でもドルは底堅く、ブレグジット交渉の難航が報じられたことでポンド売りドル買いが見られたほか、強めの経済指標にいったんは買われていたユーロが、イタリアの2019年予算問題(用語説明1)などを警戒してユーロ売りドル買いに転じるなど、欧州通貨売りドル買いの流れに。
その後、米連邦公開市場委員会(FOMC)をきっかけにドル円は大台をしっかり超えてドル高円安の流れが強まる展開となった。
事前の見通しどおりの利上げを決定したFOMC。声明で現状の政策について「緩和的」の表現が外れたことや、経済成長見通しの引き上げ、今年あと1回の利上げ、来年3回の利上げの見込みが示されるなど、前向きなものとなり、瞬間的にドル買いが入った後、いったんは利益確定売りが広がった。
しかし、イベント通過での利益確定売りの動きが112円台半ばで止められると、その後はドル高円安の流れが加速した。イタリアの予算問題を受けてのユーロ売りドル買いが強まったことも、ドル高の流れに寄与。
米短期金利の上昇で短期投資筋のドル買い円売り、ドル買い資源国通貨売りなどの動きも見られた。
週末にかけてこうしたドル買いの流れは続き、ドル円は113円台後半まで上昇して、ほぼ高値圏で週の取引を終えている。
欧州通貨は、ユーロドルが1.18台前半から1.15台後半まで。ポンドドルが1.32台前半から1.30割れなど、週の後半にかけて対ドルで売りが強まる展開に。
今週の見通し
ドル高円安の流れが継続する展開が期待されている。
113円台後半まで上昇し、さすがに高値警戒感も見られるが、押し目が限定的でやや買い遅れが目立つだけに、流れはまだ続きそう。
イタリアの予算問題を受けたユーロ売り、ブレグジット交渉の難航が懸念されるポンド売りの流れが継続。米短期金利上昇を受けてスワップポイント狙いのドル買い円売りの動きなども見られ、対主要通貨に対するドル買いの動きが優勢に。
114円を超えても、115円にかけては売りが並んでいるとみられており、一気の上昇は難しそう。
ある程度振幅を繰り返しながらの上昇が期待されるところ。
もっとも、株高を受けての円安と、米金利上昇などを受けてのドル高の両面からドル円は支えられており、地合いはかなり堅調。
5日の米雇用統計の好結果も期待されており、ドル高基調は継続か。
先週のFOMCを終え、FOMC前のブラックアウト期間が明けたことで、今週はパウエルFRB議長をはじめ、FRB要人の発言予定が目白押しとなっている。今後の利上げ基調継続がドル高の要因の一つとなる中で、発言に対する注目度が高まっているだけに要注意。
もっともハト派で知られるメンバー以外からは基本的に前向きな姿勢が示されそう。ドル高の流れを崩すほどのインパクトのある発言は期待薄。
新興国関連では7日のブラジル大統領選(用語説明2)が注目されている。世論調査で極右のボルソナロ候補が支持率でトップに立っている。7日の第1回投票で決まる可能性はほとんどなく、28日の決選投票では直近の支持率拡大でボルソナロ氏に迫る左派アダジ候補が優勢とみられるが、ボルソナロ氏の第1回投票のリードが大きなものとなると、雰囲気が変わってくる可能性が高い。この場合、世界的なリスク警戒の動きが広がり、ドル買い新興国通貨売りの流れが加速する可能性も。
用語の解説
イタリア予算問題 | イタリアの2019年予算案に関しては、財政赤字削減の意向を示したトリア財務相が財政赤字の対GDP比を1.6%に抑えることを要求した。しかし、選挙戦の中での公約実現のため、予算拡大を求める連立与党の一角「五つ星運動」党首のディマイオ副首相と「同盟」の書記長サルビーニ副首相の反対を受けて、財政赤字対GDP比2.4%までの拡大が決定した。財政赤字削減を求めるEU側との対立が見込まれることもあり、市場では警戒感が広がっている。 |
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ブラジル大統領選 | 10月7日に第1回投票が行われるブラジルの大統領選挙。現職のテメル大統領は低い支持率もあって早々に出馬を断念。支持率で圧倒的にトップに立っていたルラ元大統領は、収賄罪で収監中ということもあり、選挙管理委員会から出馬を認められなかった。そうした中で、国民の支持を広げたのが、極右で知られるボルソナロ下院議員。ルラ元大統領が出馬を断念し、左派労働党の後継候補として出てきたアダジ元サンパウロ市長と人気を二分している。両氏とも第1回投票で過半数の得票を得る可能性はほぼなく、第1回投票の得票数上位2名によって行われる28日の決選投票で大統領が決定するとみられている。 |
今週の注目指標
米ISM製造業景気指数(9月) 10月1日23:00 ☆☆☆ | 前回8月分のISM製造業景気指数は市場の予想(57.6)に反して7月分の58.1から大きく上昇し、2004年5月以来の高水準である61.3を記録した。新規受注が65.1、生産が63.3とかなりの高水準を記録。雇用統計との関連で注目される雇用部門も6か月ぶりの高水準である58.5を記録した。今回の全体の予想は60.0。さすがに少し調整が入ると見込まれている。もっとも水準的にはかなり高く、予想前後の数字が出てくると米景気の力強さを好感してドル買いが強まる可能性も。ドル円が114円台で定着する材料となる可能性。 |
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豪中銀政策金利 10月2日10:30 ☆☆ | 豪中銀は当面の金利据え置きを表明しており、現行の1.50%の維持が見込まれている。事前の見通しどおり据え置きとなった場合、24会合連続となる。注目は声明の内容。前回9月3日の理事会では、家計消費の先行きが不確実と表現するなど、先行きに慎重な姿勢が見られ、利上げ見通しが2019年後半から2020年になるのではとの思惑を誘った。今回も慎重な姿勢を強調してくるようだと、今後の利上げ見通しの後ずれを誘い、豪ドル売りが広がる可能性も。豪ドル円はサポートである81円ちょうど近辺を意識する展開に。 |
米雇用統計(9月) 10月5日21:30 ☆☆☆ | 前回8月分の雇用統計で、非農業部門雇用者数(NFP)は前月比20.1万人増と、予想の19.1万人増を超えて節目の20万人を超える好結果を示した。物価との関連で注目される平均時給は前年比+2.9%と2009年6月以来の高水準を記録。労働需給のひっ迫感のわりに遅れていたといわれていた賃金の伸びが示される結果となった。今回の予想はNFPが前月比18.5万人増、平均時給が前年比+2.8%とともに若干の鈍化も水準的にはかなり好調。予想前後の数字が出てくると、好調な米労働市場への安心感からドル買いを誘いそう。ドル円は114円台半ばを試す展開も。 |
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