2018年10月09日号

(2018年10月01日~2018年10月05日)

先週の為替相場

ドル高円安継続も、高値からは調整が入る

 10月1日からの週のドル円相場は、一時114円台半ばを超えるなど、ドル高円安の流れが継続した。

 米長期債利回りの上昇がドル全面高を誘い、ドル円は114円台にしっかりと乗せる展開に。

 対立が目立っていた米国とカナダのNAFTA再交渉は、メキシコも含めた三国間での新協定(USMCA・用語説明1)の大枠で合意し、警戒感が後退。週半ばにかけてのリスク警戒感後退に一役買った格好に。

 英与党保守党の党大会が開催され、最終日の3日に演説を行ったメイ英首相は、合意なき離脱を恐れないと冒頭で宣言。ポンド売りドル買いを誘い、4日朝までのドル全面高基調に寄与した。

 もっとも、週の後半、4日の東京市場からは高値圏からのドル売りが優勢な展開に。

 米雇用統計を前にした調整ムードや、米金利上昇を嫌気した米株式市場の調整売りなどに押される格好に。

 米中の南シナ海での駆逐艦の異常接近報道などに見られた緊張感がリスク警戒の動きを誘った面も。

 注目の米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を大きく下回る結果となったが、前回値、前々回値が大きく上方修正されており、平均してみた場合、弱い数字とは言い切れない。また、ハリケーンでの悪天候による雇用減がかなり膨らんでいたことも数字として出ており、弱めの数字による相場への影響は限定的に。失業率が予想を下回り過去最低水準まで下がったことなども、雇用統計結果への警戒感を後退させた。

 ドル円は113円台後半で週の取引を終えている。

今週の見通し

 頭の重さが意識されて、いったん調整が広がる展開。

 114円から115円にかけてのドル売りに頭を抑えられた格好。短期筋からのポジション調整意欲が強まっている。

 雇用統計での雇用者数の弱めの結果自体の影響は限定的なものとなったが、今週予定されている米国の物価統計もやや弱めに出ると見込まれており、これらの指標結果が一時のドル買いムードを抑える可能性も。

 中国市場が国慶節の長期休場から復活したことで、米中の通商摩擦問題が再び意識されている面も。

 新興国リスクに対する警戒感もくすぶっている。8日のブラジル大統領選第一回投票は、事前見込み通り極右のボルソナロ氏と左派のアダジ氏(用語説明2)が28日の決選投票に進んだ。しかし、ある程度の接戦見込みであった両者の得票率は46%対29%と圧倒的にボルソナロ氏のリードとなった。

 決選投票の場合、中間層の取り込みで有利とみられていたアダジ候補の逆転はかなり難しいとの見方が広がっており、政治リスクがレアル売りに。さらにこの流れが他の資源国に広がると、新興国売りの流れが再び活発化する可能性も。

 こうしたリスク警戒感の流れもあり、ドル円は調整がもう一段強まる可能性。112円台前半程度までの動きは意識するべきか。

 もっとも基調はドル高円安で変わらず。投資資金のドルへの集中が見込まれる中で、中期的には再び114円台を試しに行く流れに。

用語の解説

USMCA 米国・メキシコ・カナダ協定。米国・カナダ・メキシコによる北米自由貿易協定(NAFTA)について、米トランプ大統領の意向で再交渉が行われ、新たな三国間の貿易協定として枠組みが合意されたもの。略称は三国の頭の文字からとられている(USMCA:United States-Mexico-Canada Agreement)。米国市場への無税での自動車輸出に際して、原産地比率の引き上げや高賃金労働者による生産比率の設定などを満たした場合にのみ認められるとしている。
アダジ氏 フェルナンド・アダジ。元サンパウロ市長で左派労働党の大統領候補。支持率でトップに立っていたが、収監中ということで立候補が認められてなかったルラ元大統領に代わって労働党の候補として出馬。ルラ元大統領の支持層を中心に支持を集め、直前の世論調査でボルソナロ氏に僅差で迫っていたが、第一回投票ではアダジ氏の出身であるサンパウロ市で敗北するなど、支持を伸ばしきれていない。

今週の注目指標

G20
10月11日
☆☆☆
 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議がインドネシアのバリで開催される。米中の通商摩擦問題が注目される中で、米中の当局者が揃うG20に市場の注目が集まっている。米財務省当局者は、中国に対して最近の人民元安についてG20の場で警告する意向を示しており、両国の対立構造が強まる可能性も。この場合、円高の動きが広がる可能性。ドル円は112円台半ばをトライする可能性も。
米消費者物価指数(CPI・9月)
10月11日21:30
☆☆☆
 米国の年内あと一回の利上げはほぼ確定的となっているが、来年の利上げペースについては見方が依然、分かれるところとなっており、そのカギを握る物価情勢へ注目が集まるところ。今回のCPIは前年比+2.4%と、前々回の+2.9%、前回の+2.7%から大きく鈍化する見込み。前回の数字は被服費が70年ぶりのマイナスを記録するなど厳しいものとなったが、そこからさらに大きく鈍化ということで、市場の警戒感を誘う可能性も。もっとも、比較対象となる昨年9月はエネルギー価格が一時的な急騰を見せた月でもあり、食品・エネルギーを除くコアで比べると、前年比+2.3%と、前回の☩2.2%から小幅高に。予想前後の数字であれば、相場への影響は限定的で、113円台でのしっかりとした推移を支えてきそう。コアも総合と合わせて鈍化を見せるようだと、ドル円は112円前半をトライの可能性も。
バイエルン州議会選挙
10月14日
☆☆
 バイエルン州の州議会選挙が14日に行われる。メルケル首相率いる与党CDUは、同州では長く連立を組む同州の地域政党CSUに配慮して、候補者を立てない。CSUはCDU以上に右派姿勢が強いことで知られているが、移民問題での与党の対応への不満が同州内で広がっており、極右AfDに支持を奪われ、苦戦が報じられている。CSUが現在確保している単独過半数を失うような事態になると、メルケル首相の求心力低下にもつながり、ユーロ売りが広がる可能性。ユーロドルは1.14割れを意識する展開も。

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