2018年10月15日号

(2018年10月08日~2018年10月12日)

先週の為替相場

米株の急落がリスク警戒誘う

 10月8日からの週のドル円相場は、米株の急落を受けた世界的な株安に、リスク警戒感の動きが広がり、ドル円は一時111円台まで値を落とすなど、大幅なドル安円高が進行した。

 先週は週明けから世界的な株安の動きが優勢に。イタリアの予算問題への警戒感や、米中の通商摩擦問題を意識しての上海株安などが重石となった。

 イタリアの予算問題に関しては、赤字削減姿勢が不十分としてEUからの批判が強まる中で、イタリア債の利回りが上昇(イタリア国債価格が下落)し、警戒感を誘った面も。

 トランプ大統領がFRBの利上げ路線への不満を表明したことも、ドル売り円買いの動きを誘った。

 その後は米長期債利回りの上昇が米株安の材料とされた。米10年債利回りは節目の3.0%を大きく超えて上昇傾向に。利回りの上昇が株式市場への投資資金流入を抑制するとの思惑が、米株安ドル安の流れにつながった。

 週の後半にかけてもリスク警戒でのドル安円高の流れが継続。

 11日に112円割れを試すと、その後は112円台半ばが重くなり、頭の重い展開に。やや売り遅れが意識される展開で、戻りが鈍い。

 週末に行われたドイツ南部バイエルン州議会選挙への警戒感も、ユーロ円の重石となって、ドル円にも売り材料に。

 結果は事前に行われた世論調査の結果どおりCSU(用語説明1)が前回選挙から一気に得票率を下げた。第一党は確保したものの、これまで確保してきた過半数を失った。もっとも、これは想定内の結果だった。

 ポンドはブレグジットがらみの警戒感が継続。アイルランドと英領北アイルランドの国境問題でのEUとの意見の相違が埋まらず、合意なきEU離脱への警戒感がポンドの頭を抑える展開に。

 ドル円は週末前の海外市場でも111円台をトライするなど、ドル安円高が優勢に。少し値を戻して112円台前半で週の取引を終えている。

今週の見通し

 リスク警戒の動きが広がる。

 ドル円は上昇傾向が一服し、調整局面に入っている。

 これまでドル高要因となっていた米長期金利の上昇であるが、勢いが強いこともあり、米株式市場の売り材料となっており、ドル安円高要因に。

 イタリアの予算問題や英国の合意なきEU離脱への警戒感も継続で、市場全体が神経質に。

 15日が米議会への提出期限となっている米財務省半期為替報告(用語説明2)への警戒感も強い。

 対米貿易黒字が拡大し、人民元安の流れも広がる中で、米国が中国を為替操作国認定するのかどうかがポイントに。

 トランプ大統領は大統領選の最中から操作国認定の意向を示しており、ここにきてその要求を強めている。米中の通商摩擦問題が深刻化する中、為替操作国認定が実施されると、状況がさらに悪化するとみられ、ドル売り円買いの材料となりそう。

 ドル円はリスク警戒の動きから戻りが鈍くなっており、110円台をトライする可能性も。

 ポンドを中心に欧州通貨売りの動きも継続。クロス円も安値トライの可能性が高そう。ポンド円は145円割れを意識へ。

用語の解説

CSU バイエルン・キリスト教社会同盟(Christlich-Soziale Union in Bayern e.V.)。ドイツ南部バイエルン州の地域政党。メルケル首相率いるCDU(キリスト教民主同盟)と長らく統一会派を組んでおり、CSUがバイエルン州でのみ活動する代わりに、CDUはバイエルン州では活動しない。もっとも、若干主張は異なっており、CDUよりもやや保守的。
半期為替報告 米財務省が1988年の包括通商競争力法、2015年の貿易円滑化・貿易執行法に基づいて、主要な貿易相手国が不当な通商条件での利益計上を行っていないかを調査し、4月と10月の年二回、議会に報告するもの。ともに15日が報告期限となっているが、それほど厳しい期限認識ではなく、ある程度遅れることがある。1994年を最後に為替操作国認定を受けている国はないが、日本や中国をはじめ7カ国・地域が監視リストに入っている。

今週の注目指標

半期為替報告
10月15日
☆☆☆
 米財務省の半期為替報告がおそらく15日、少なくとも今週中には発表される見込みとなっている。市場の注目は中国に対する為替操作国認定を行うかどうか。為替操作国の認定基準は、1)対米貿易黒字額が200億ドル超、2)経常収支黒字が対GDP比3%超、3)継続的な為替介入による外貨購入がGDPの2%超の三つとなっており、中国は対米黒字以外は該当していないが、その黒字額が大きすぎるため、今回の報告で操作国認定される可能性が指摘されている。もっとも、財務省内には操作国には当たらないとの見方も強い。警戒感から事前にドル安円高が進んだ分、認定を見送ればドル買い円売りとなる可能性。ドル円は112円台半ば超えも。
米小売売上高(9月)
10月15日21:30
☆☆☆
 米国のGDPの約7割を占める個人消費動向を表す指標。堅調な労働市場動向もあり、力強い個人消費動向が期待されている。予想は前月比+0.6%と前回の+0.1%から大きく上昇の見込み。もっとも、これは9月の新車販売台数が年率換算で1744万台と2018年に入って月別で最多となった影響が大きい。月ごとのばらつきが大きい自動車を除くと前月比+0.4%の見込み。もっともこれでも前月の+0.3%から伸びが強まっており、堅調な個人消費動向が見込まれている。予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、米株安の流れの一服を誘い、ドルの買い戻しにつながると期待される。ドル円が112円台をしっかりと回復するきっかけとなる可能性も。
FOMC議事録
10月18日03:00
☆☆☆
 9月25日、26日に開催され、今年3度目となる0.25%の利上げを決めた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が公表される。この時のFOMCでは今年と来年の経済成長率見通しの引き上げなども見られた。また、年内あと一回の利上げを想定していることが示された。こうした前向きな姿勢が、どのような議論の下で出てきたのかなどが注目材料に。また、来年以降の利上げについて、どこまで自信を持っているのかなども注目材料。前向き姿勢が強調されるとドル買いの材料に。ドル円は113円を意識するところまで買いが入る可能性も。

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