2018年10月22日号

(2018年10月15日~2018年10月19日)

先週の為替相場

イタリア予算問題警戒

 10月15日からの週のドル円相場は、イタリアの予算問題に対する懸念などで欧州通貨売りの動きが広がった。

 ドル円は週明けに111円60銭台を付けるなど、それまでの株安警戒からの円高が広がる場面が見られたが、その後は少し買い戻しが入る展開に。

 米株に一時買い戻しが入る場面が見られたことで、ドル円は112円台を回復も、中国株安の流れからリスク警戒での円買いが入る局面が見られるなど、株式市場の不安定な動きに、外国為替市場もしっかりとした流れにはならず。

 欧州通貨は頭の重い展開。15日にイタリアは2019年度予算を閣議決定、議会も通過し、欧州委員会に提出も、同委員会は財政赤字の削減姿勢が見られないとして拒否。

 イタリア政府は対応を迫られたが、サルビーニ・イタリア副首相(用語説明1)の強硬な発言などもあって、市場の警戒感が続き、19日にはユーロドルが一時1.14台前半を付けるところまで値を落とした。

 その後、イタリア政府の財政赤字目標修正見込みの報道や、モスコビシ欧州委員からのイタリアの状況は理解しているなどの発言もあって、警戒感が後退し、1.15台へ値を戻して週の取引を終えている。

 ポンドはブレグジット問題への警戒感が継続。アイルランドと英領北アイルランドの国境問題での英国と欧州の対立が継続。国境でのハードボーダー設置の回避を目的とした予備的プランであるバックストップ条項(用語説明2)に関する対立が、英国と欧州の対立に加え、ある程度の妥協を見せようとするメイ首相に対する批判にもつながっており、状況はかなり不透明となっている。

 ポンドドルは1.32台から一時1.3010近辺まで下落。1.30の大台は何とか維持したものの、頭の重い展開が続いている。週末にはEU離脱撤回を求める大規模デモが英国内で起こるなど、同問題をめぐる英国情勢はかなり不安定となっている。

今週の見通し

 基調はドル高円安。

 米中問題、イタリアの予算問題、英国のEU離脱問題など、警戒材料は軒並み残っているが、ドル円の基調はまだ上方向。

 111円台までの下げで調整ムードが一服。12月の追加利上げ見通しも含め、基本的に堅調な米ファンダメンタルズを背景にしたドル高円安基調に復する流れとなっている。

 米中通商摩擦問題からの中国売りの流れが一時強まる中で、19日に発表された中国の第3四半期GDPがリーマンショック直後の2009年以来の低水準となったことなどが警戒材料となったが、中国人民銀行、中国銀行保険監督管理委員会、中国証券監督管理委員会などの中国金融当局トップの相次ぐ口先介入もあって、警戒感が後退。通商摩擦問題については当面継続も、11月の米中首脳会議でも交渉進展は期待薄との見通しが広がるなど、問題は相当長期化するとの思惑が広がっており、短期的な円高圧力は一服している。

 ドル円は112円台でのレンジ取引を中心に、113円台にしっかり乗せる展開が期待される。113円台半ば近辺がターゲットとなりそう。

 ユーロ円やポンド円での買い戻しが優勢になると、ドル円も上昇しやすい流れに。イタリアの予算問題については、イタリア政府のある程度の妥協が期待されており、解決への動きが広がる可能性。

 ユーロ円が9月に付けた133円台は少し遠いが、131円台にしっかり乗せる可能性は十分あるとみており、その場合、相場の雰囲気が変わってくると期待している。

用語の解説

サルビーニ副首相 マッテオ・サルビーニ(Matteo Salvini)。イタリアの連立与党の一角「同盟」の第3代書記長(党首)。元々北部同盟の名称でイタリア北部を中心とした地域政党であった同党において、北部の名称を外し、イタリア中南部でも支持を広げ、2018年の下院選挙で第3党となった。その後、同選挙で第1党となった五つ星運動との連立で政権与党となり、自身は五つ星運動のディマイオ党首とともに副首相となった。
バックストップ条項 英国のEU離脱に際して、アイルランドと英領北アイルランドの国境に鉄条網や検問所などの物理的な障壁(ハードボーダー)の設置を回避し、EU離脱後も北アイルランドをEUルールに合致させるという条項。北アイルランドの地域政党であり英国議会ではメイ首相を閣外協力している北アイルランド民主統一党(DUP)などが強く反対しており、ブレグジット問題における重要な案件となっている。

今週の注目指標

トルコ中銀政策金利
10月25日20:00
☆☆☆
 トルコ中銀の政策金利が25日に発表される。前回9月13日にそれまでの17.75%から24.00%まで一気に利上げを実施したところであり、今回は現行水準での維持が見込まれている。もっとも9月の消費者物価指数が前年比24.52%、生産者物価指数に至っては46.15%に達する状況の中、利上げ継続が必要との見方から、今回も利上げに踏み切るのではとの期待が一部で見られる。前回の利上げ後の声明では追加の引き締めを行う可能性を示唆しており、今回現状維持となった場合でも、今後については引き締め姿勢を強調してくる可能性も。利上げや声明での早期追加利上げ示唆でリラ円が上昇した場合、南アフリカ・ランド円などにも波及すると期待される。ランド円は10月1日に付けた8円台に再び乗せる可能性も。
米第3四半期GDP速報値
10月26日21:30
☆☆☆
 米国の第3四半期GDP速報値が26日に発表される。第2四半期は力強い個人消費動向や輸出の伸びなどに前期比年率4.2%という2014年第3四半期以来の高水準を記録した。さすがに同水準の維持は難しく今回は同+3.3%が見込まれている。もっとも、水準的にはかなり高め。上半期の成長率は+3.2%で、トレンドを上回る水準であり、前期に輸出が大きく伸びた要因である関税発動前の駆け込み輸出の反動が見込まれることを加味すると、相当強めの数字。予想通りの好結果が示されると、ドル買いに安心感が出てドル円を支えると期待される。ドル円は113円台にしっかりと乗せる可能性。
ブラジル大統領選決選投票
10月28日
☆☆
 10月7日に行われたブラジル大統領選第1回投票でトップに立ったボルソナロ下院議員と二位になったアダジ元サンパウロ市長の二名による決選投票が28日に行われる。極右的な色彩の強いボルソナロ氏はもともと決選投票では不利とみられていた。しかし、第一回投票でのアダジ氏との得票率の差がかなり大きいことや、決選投票の相手が中道候補ではなく、左派のアダジ氏となったことで、中道右派陣営の支持を見込めることなどから、ボルソナロ氏の勝利が見込まれている。当初は極右候補への警戒感が市場で見られた。だが、民主化を進める姿勢を同氏が示し、財務相候補として米シカゴ大学出身で自由競争的なアプローチを示すグエデス氏の名前を挙げていることから、ボルソナロ氏勝利の場合レアル高が広がると期待されている。この場合、新興国・資源国全体の買いにつながると期待されており、豪ドル円が81円台を目標に上昇するなどの影響が期待される。

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