2018年10月29日号

(2018年10月22日~2018年10月26日)

先週の為替相場

イタリア予算問題警戒

 10月22日からの週のドル円相場は、ドル安円高の動きがやや優勢となった。

 米株安の動きが継続し、市場のリスク警戒感が広がる中で、ドル円は頭の重い展開に。

 米中の通商摩擦問題、イタリアの予算問題、英国のブレグジット問題などへの警戒感が継続したほか、サウジアラビアの大使館でのジャーナリスト殺害問題なども警戒感を誘った。

 米企業の第3四半期決算発表が本格化する中で、アマゾンやアルファベット(グーグル)などのハイテク主要企業の決算が弱めに出たことなども、米株安の動きを誘った。

 週の前半はドル安が主導でユーロ高ドル安の動きなどが広がったこともあり、株安に対するドル円の下げは限定的。111円台では買いが入って値を戻す展開が続いた。

 もっとも、下押しに際して安値が切り下がり、戻りの上値も切り下がるという頭の重い展開。週初の112円89銭から111円95銭を付けた後の戻りが水曜日海外市場の112円74銭まで。その後の下げで火曜日安値を下回り木曜日朝に111円85銭を付け、同日の海外市場での戻りは112円67銭までという流れ。週末にかけてハイテクを中心に米株安が続いたこともあって、111円38銭まで下げが強まり、111円台後半で週の取引を終えている。

 欧州通貨は対ドル、対円ともに頭の重い展開に。

 週初はムーディーズによるイタリアの格下げが、市場が懸念したほど一気の引き下げにならず、一段階でとどまったことなどを好感した買いが入り、ユーロドルは1.1550超え。ユーロ円も130円20銭近辺まで上昇。

 しかし、その後は欧州委員会によるイタリアの予算拒否(用語説明1)などもあって、ユーロの売りが広がる展開に。特にドル円などでの円高進行も加わったことで、ユーロ円は126円60銭台までと、大きく値を落としている。

 ユーロ円の下げに加えて、英国のEU離脱問題でアイルランドの国境問題における英国とEUの対立や、英国内でのメイ首相の求心力低下などもあって、軟調地合い。ポンド円は週初の147円台半ば超えから142円70銭台まで大きく値を落としている。

今週の見通し

 方向性探る展開も、調整一服後はドル買い円売りに期待。

 イタリアの予算問題への警戒感は継続も、ドル円の下値はこれまで比較的しっかりとしており、111円台半ば近辺では買いが入りそう。

 欧州通貨売り円買いに頭を抑えられているものの、欧州通貨は対ドルでも売りが広がる展開で、ドル円への影響は微妙。週末のドイツ・ヘッセン州(用語説明1)での州議会選挙でメルケル首相率いる与党CDUが得票率を10%以上落とす大敗を喫し、ドイツでの政局懸念が強まっていることも、ユーロ売りにつながりそうで、ユーロドルは1.13台前半をにらむ動きもあるが、1.13台を積極的にユーロを売りに行く動きにも慎重。

 ユーロが大きく崩れると、ドル円も重くなりそうだが、週末の米雇用統計の発表まで111円台後半から112円台前半にかけてのレンジ取引か。

 リスクはやや下方向で、先週末のNY市場で付けた111円38銭近辺をしっかり割り込むと要注意。

 米雇用統計は前回ハリケーンの影響で弱く出た雇用者数の増加も戻り、堅調な数字が期待されている。もみ合いのまま週末を迎え、雇用統計が強めに出た場合は、112円台後半をトライする動きなどが期待されるところ。

用語の解説

欧州委員会のイタリア予算の拒否 EUの行政機関である欧州委員会は、ギリシャショックに対する反省から2013年に権限が大きく強化され、加盟各国の予算案を調査/拒否する権限を有している。その後、フランスなどがEU基準を超える対GDP比赤字となる予算を提出するなどの事態に対しても、予算案の拒否は見送られており、今回権限強化後初めて予算案を却下した。これを受けてイタリアは3週間以内に予算の再提出を行うことが求められる。
ヘッセン州 ドイツ経済の中心地であるフランクフルトなどを含むドイツ中部の州。州議会の第一党は連邦議会と同じくCDU(キリスト教民主同盟)。連邦議会ではSPD(社会民主党)と連立政権を組むCDUだが、ヘッセン州では緑の党と組んで州の連立与党となっている。

今週の注目指標

英スーパーサーズデー
11月1日21:00
☆☆☆
 1日の英中銀金融政策会合(MPC)は、会合結果、議事要旨、四半期インフレ報告が同時に発表され、その後カーニー総裁が記者会見を行ういわゆるスーパーサーズデーにあたっている。前回8月のスーパーサーズデーで0.25%の利上げに踏み切った英国。現在はその影響を見極める時期にあたっていることや、ブレグジット問題の不透明感などもあって、今回は金利据え置きで市場の見方は一致している。注目は直近のブレグジット問題の深刻化などに関する今後の金融政策動向について、カーニー総裁が会見でどのような姿勢を示すのか。今後の漸進的な利上げペース維持が示されるようだと、ポンド買いの動きも。この場合ポンド円は146円がターゲットとなる。
米ISM製造業景気指数
11月1日23:00
☆☆☆
 8月に約14年ぶりの高水準である61.3を付けたISM製造業景気指数。前回は59.8と予想の60.0を下回る水準まで鈍化した。もっとも絶対的な水準としては強めの数字。内訳をみても雇用部門が今年2月以来となる58.8まで上昇するなど、まずまずの結果であった。今回は59.0ともう一段の鈍化が見込まれている。予想前後の鈍化であれば影響は限定的も、前回鈍った新規受注などの数字がもう一段弱めに出るようだと、ドル売りを誘う可能性も。ドル円は111円台前半のサポート水準をトライする可能性も。
米雇用統計
11月2日21:30
☆☆☆
 10月の米雇用統計が2日に発表される。前回は非農業部門雇用者数が予想を大きく下回る前月比13.4万人増にとどまった。もっとも、これはハリケーン「フローレンス」の影響が大きいとみられ、市場では大きな問題とはみなされなかった。今回は前月比19.3万人増が期待されている。前回3.7%と約49年ぶりの低水準まで低下した失業率は、同水準での維持が見込まれている。予想から大きく外れた結果とならない限り、堅調な雇用市場への安心感が広がり、ドル買いの材料となりそう。前回大きく減少を見せた観光業などの雇用回復が著しいと、予想を大きく超える雇用増も期待されるところ。この場合はドル買いの動きが強まり、113円に向けた動きを見せる可能性も。

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