2018年11月05日号

(2018年10月29日~2018年11月02日)

先週の為替相場

米雇用統計は好結果

 10月29日からの週のドル円相場は、ドル高円安の動きが優勢となった。

 週初は株安の動きもあって111円台でスタートしたドル円。米中の通商摩擦問題に対する警戒感なども重石となっていたが、30日にトランプ大統領が対中貿易に関して「素晴らしい取引を望む」と前向きな発言を行ったこともあり、ドル高円売りの流れに。

 その後、ユーロ圏第3四半期GDPの弱さやイタリアの予算問題を受けてのユーロ売りドル買いにドル全面高基調となり、ドル円は113円台を回復。

 ブレグジット交渉が難航しているとみられた英国では、ラーブ英EU離脱担当相が21日までの交渉妥結見込みと議員あてに書簡を送っていたことが報じられ、ポンド高の動きが進み、ポンド買いドル売りの動きになった。ドル円はいったん調整に。米雇用統計前のポジション調整意欲も重石。

 2日にトランプ大統領が今月の米中首脳会談で両国が貿易合意に向かう草案の作成をスタッフに命じたとの報道で、一転してドル買いが進行。同日の米雇用統計を控えていったん調整も、米雇用統計がかなり強めに出たこともあり、再びドル買いが強まって、113円台前半に乗せて週の取引を終えている。

 米雇用統計では非農業部門雇用者数が予想を大きく上回る伸びを示したほか、平均時給が前年比+3.1%と高く出たことで、物価上昇圧力が高まるとの思惑からドル高に。

 先週もっとも目立ったのがポンドの買い。週前半はドル高ムードや、ユーロ圏指標の弱さを受けた欧州通貨安の流れもあって1.27割れを付ける場面が見られたが、ブレグジット交渉の進展期待で一気にポンド買いに。

 ブレグジットにあたって懸念項目となっていた英国の金融サービス会社による欧州市場へのアクセスを可能にすることで英国とEUが合意との報道なども、ポンド買いを誘い、ポンドドルは1.3040近辺まで大きく上昇している。

今週の見通し

 6日の米中間選挙(用語説明1)をにらむ展開。

 今回の米中間選挙では、上院は共和党が過半数を維持する見込みとなっているが、下院はかなりの混戦で不透明感が強い。

 民主党が若干優勢といわれる現状の勢いのまま下院で過半数を握ると、上院下院のねじれ状態(用語説明2)の中で、トランプ大統領としてもこれまで同様な強引なかじ取りが難しくなり、米株高ドル高の流れに調整が入るのではとの思惑から、ドル売りの動きが強まる可能性も。

 下方向のポイントは111円台後半から112円ちょうど近辺となりそう。

 世論調査の結果では下院では民主党が優勢も、ほぼ誤差の範囲でしか差が出ていない選挙区も多く、どちらが勝ってもおかしくない状況。共和党がこれまで同様に下院でも過半数を抑えた場合は、ドル高が見込まれる。

 上方向のポイントは114円台半ば近辺。

 米FOMCは現状維持見込みが濃厚。前回のFOMCでの利上げから間がないこともあり今回は様子見が見込まれている。注目材料もそれほど多いわけではなく、相場への影響は限定的なものにとどまりそう。

 その他の国では8日の中国貿易収支に注目が集まりそう。前回は予想を上回る輸出の伸びを記録。特に対米貿易黒字が過去最高を記録し、通商摩擦問題への警戒感が広がった。こうした流れが続いているようだと、ドル売り人民元買いの動きから、ドル円にも重石となりそう。

 豪中銀、NZ中銀の金融政策発表は、大きな注目ポイントなく、現状維持見込みが広がっており、相場への影響は限定的か。

用語の解説

米中間選挙 米上院議員の任期は6年で、2年ごとに1/3ずつの改選が行われる。米下院の任期は2年で、2年ごとに全議席の改選が行われる。西暦偶数年の選挙の日(11月の第1月曜日の翌日)のうち、4年ごとに行われる大統領選と被らない選挙を、大統領の任期4年の中間で行われる選挙ということで、中間選挙と呼ぶ。今回の中間選挙では、上院は任期中の辞任などに伴う特別選挙を含めて35議席、下院は全議席である435議席の改選が実施される。なお、州議会選挙、州知事選挙なども同時に行われるケースが多く、今回は36の州で知事選が実施される。
ねじれ状態 現在の米連邦議会は、上院・下院ともに共和党が多数派となっている。今回の中間選挙では上院は共和党が多数派を維持の見込みも、下院は混戦となっており、民主党が過半数を抑えた場合、上院、下院で多数派政党が違う格好となる。これをねじれ状態と呼ぶ。衆議院に予算の先議権や、議決の効力における優越のある日本と違い、予算関連では基本的に同等の権利を有する米国のケースでは、予算が決まりにくいなどの弊害が生じる可能性がある。

今週の注目指標

米中間選挙
11月6日
☆☆☆
 米国の中間選挙が6日に行われる。上院は共和党が現状の51議席を維持する見込み。ブレがあったとしても50議席から53議席の間とみられ、50対50の同数になった場合は議長を務める副大統領の採決で決定するとのルール上、共和党の優勢が見込まれている。下院は現在共和党が235、民主党が193、欠員7と、共和党が圧倒的に優勢となっているが、今回の選挙では民主党が議席数を伸ばすことが確実視されている。ただ、過半数の218を抑えきれるかどうかは不透明。世論調査の結果どおりに決まると民主党が過半数を確保するが、誤差の範囲の優勢にとどまっている選挙区も多く、どちらに決まってもおかしくない状況。民主党が過半数を抑えた場合はドル売りが強まると見込まれる。ドル円は大きく売られ112円を割り込む可能性も。
中国貿易収支(10月)
11月8日
☆☆☆
 米中の通商摩擦問題が市場の懸念材料となる中で、10月の中国貿易収支が8日に発表される。時間は決まっていないが、日本時間のお昼前後となるケースが多い。前回9月分の同指標は、予想を大きく超える貿易黒字が計上され、特に対米黒字は過去最大を記録した。人民元安が中国の輸出を支援しているものとみられる。今回は前回に比べるとやや黒字が縮小する見込みも、水準的にはかなりの黒字が見込まれており、予想前後もしくは予想を上回る黒字額が示されると、米国からの通商摩擦問題での圧力が強まる可能性も。この場合、ドル円は値を落とすと見込まれる。目先のターゲットは112円台半ばか。
米FOMC
11月9日04:00
☆☆☆
 米連邦公開市場委員会(FOMC)が11月7日、8日に開催され、日本時間で9日午前4時に結果が発表される。今回はFOMCメンバーによる経済・物価・金利などの見通しが示される回には当たっていないこと、前回9月のFOMCで0.25%の利上げが実施された直後ということなどから、現状維持が見込まれている。今後の利上げ継続に向けて、声明などがどこまで前向きな姿勢を示してくるか。12月のFOMCでの利上げはすでに織り込み済みで、来年も緩やかなペースでの利上げ継続が見込まれているが、具体的な頻度や回数に関する見通しはある程度分かれている。来年以降も今年並みの利上げが実施されるとの見通しが広がると、ドル買いが強まる可能性。この場合ドル円は中長期的に115円をターゲットとした上値圧力が強まりそう。

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