2018年11月12日号

(2018年11月05日~2018年11月09日)

先週の為替相場

中間選挙で振幅もドルはしっかり

 11月5日の週は、6日に行われた米中間選挙を受けてドル相場が振幅する場面が見られたが、大きな流れとしてのドル高が継続しており、ドル円は114円を付ける場面が見られた。

 注目された6日の米中間選挙は、日本時間で7日の朝から開票が始まった。選挙前及び選挙が始まっても開票が始まる前の段階でのドル円は、しっかりという展開で113円台半ば前後まで上昇を見せた。

 大きなイベントを前に積極的な取引が手控えられる流れとなったが、英国のEU離脱関連でアイルランドの国境問題での妥協報道などが入り、ポンド買い円売りが進んだことで、ドル円などでもやや円安に。

 中間選挙の開票は、米国内で時差があるため州によってスタート時間がかなり違う。日本時間7日午前8時には最初の地区で開票作業が始まったが、接戦が予想されていた下院(用語説明1)において大勢が判明するのは大票田であるカリフォルニアの開票が始まる7日の午後1時過ぎとみられていた。しかし、その前の段階で民主党が下院で過半数を確保との情勢が報じられる展開に。

 朝方にバーモント州の下院接戦区で民主党優勢が報じられてドル売り、その後、同じく接戦区のケンタッキー6区で共和党が民主党の現職を破って勝利したことで、一転してドル買いが入るなど、神経質な振幅を経て、民主党が下院での過半数を確保した見込みが報じられたことで、ドル売り円買いが強まった。

 ドル円は同日のロンドン市場で113円割れまで下落。しかし、その後は一転してドル買いが強まった。

 7日、8日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、事前の見通しどおりの金利据え置き。声明では設備投資について急速なペースから緩やかなものになったと評価を引き下げるなど、慎重なものとなった。しかし、サプライズ感は薄く、市場の反応は一息。FOMC後はイベントクリアでドル高基調に復する展開に。

 その他通貨で目立ったのはポンド。

 週の半ばまではブレグジット交渉の進展期待から、ポンド買いが優勢となり、ポンドドルは週初めの1.30割れから1.31台後半まで上値を伸ばした。

 しかし、FOMC後のドル高基調に、ポンド売りドル買いが入ると、その後、ブレグジット交渉自体への警戒感がポンド売りを誘った。

 メイ首相がEUに提出する予定のEU離脱プランについて、英政府に閣外協力している北アイルランドの地域政党DUP(用語説明1)が同意していないことや、閣僚からも不満が広がっていることなどが、市場の警戒感を誘った。

 ポンドドルは1.31台後半から一時1.30割れまで売り込まれる展開が見られた。ポンド円も149円台半ば近くから148円割れまで売りが進んでいる。

 ユーロもポンドにつれ安。イタリアの予算問題なども重石となってユーロドルは1.15ちょうど近くから1.13台前半へ。

今週の見通し

 ドル高の流れが継続するとみられる。

 米中間選挙の結果、上院は共和党が多数派を維持、下院は民主党が8年ぶりに多数派を確保し、上院・下院で多数派の違うねじれ議会となった。

 米国では予算などの審議では上院・下院は基本的に同じ権限を有しており、両院を通す必要がある。そのため、今後は下院のチェック機能が強まり、トランプ大統領の政策運営が難航するとの思惑で、結果判明後はいったん売りが広がった。また、下院によるロシア疑惑の追及が強まるとの思惑もドル売り材料に。

 もっとも、こうしたドル売りは限定的なものにとどまった。2年後の大統領選挙を見据えて、民主党としてもインフラ投資など景気刺激策への過度な反対はやりにくいとの思惑や、トランプ政権の内政運営が難しくなる分、通商問題などでは先鋭的な姿勢が強まり、新興国通貨などが売られることで、ドル全般の上昇基調が継続するとの思惑がドル買いに。

 米FRBの金融政策への影響は小さく、来月の利上げをはじめ、来年以降の追加利上げ路線が継続との思惑などもドルを支えている。

 ドル円は115円を強く意識する展開となりそう。大台を前に利益確定の動きがある程度入るとみられるが、流れは上方向。

 ユーロドルなどでもドル高の流れが継続。1.13のポイントを割り込んで、1.10-1.12の水準をトライする流れに。イタリアの予算問題などの状況次第ではあるが、中期的には1.10割れが視野に入ってくるとみられる。

用語の解説

下院 米下院(House of Representatives)、二院制を取る米国議会のうちの一つ。直訳すると代議院となるが、両院は一般的には上院(Senate・直訳すると元老院)と下院と呼ばれている。定数は435議席。人数比例による少数選挙区制で選挙区が決まるため、各州2名ずつの議席となる上院と違い、7つの州で1議席しかなく、人口の多いカリフォルニア州では53議席が割り当てられている。任期は2年で、2年ごとにすべての議席が改選される。議会のトップは下院議長で、多数党から選ばれる。大統領権限継承順位は副大統領(上院議長を兼務する)についで第2位。
DUP 英領北アイルランドの地域政党である民主統一党(Democratic Unionist Party)。北アイルランドの地域政党において、UK(連合王国)との帰属を重視する政党Unionist(ユニオニスト)の中で、最大規模かつ最強硬派。メイ首相率いる保守党政権に閣外協力を行っている。

今週の注目指標

英消費者物価指数(CPI・10月)
11月14日18:30
☆☆☆
 英国の10月の物価統計、消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)、小売物価指数(RPI)が14日に発表される。注目度が最も高いのが、インフレターゲットの対象であるCPIの前年比。ターゲットである+2.0%を超えて、昨年秋から今年の1月分まで+3%の大台に乗せ、その後ある程度落ち着いたものの、前々回8月分で+2.7%を記録するなど、高水準な同指標の動向が、昨年11月、今年8月の利上げを誘った。次回の利上げは来年夏以降とみられているが、物価の上昇圧力が高まるようだと、時期が早まる可能性があり要注意。今回の予想は+2.5%と、前回の+2.4%から若干強まる見込み。予想を超えて2%台後半の上昇を見せるとポンド買いにつながる。ブレグジット交渉で不安定な状況であるが、対ドルで1.30を意識する展開となりそう。
米消費者物価指数(CPI・10月)
11月14日22:30
☆☆☆
 2日に発表された米非農業部門雇用者数が、予想を超える雇用増を示すなど、米国の雇用市場は依然として好調。米FRBの2大責務のうち、雇用の最大化は事実上実現されているだけに、FRBによる利上げの決定を決めるカギは物価が握っている。そのため、米国の消費者物価指数への注目はかなり強まっている。前回は前年比+2.3%と事前予想の+2.4%、前々回の+2.7%を下回る弱めの数字となった米国のCPI。今回は+2.5%まで回復すると期待されている。予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、前回の鈍化に対する懸念が後退し、ドルを支える材料となりそう。来月の利上げがほぼ確実視される中で、ドルを買い上げることは難しいとみられるが、114円台を支える材料に。
パウエル米FRB議長講演
11月15日08:00
☆☆☆
 パウエルFRB議長が、ダラス連銀主催のイベントで、カプラン・ダラス連銀総裁らとディスカッションを行う。テーマは米国内およびグローバルの経済状況。中間選挙の結果をうけて、今後の米経済の見通しと、金融政策に関する姿勢についての言及があると期待される。前向きな姿勢が目立つようだと、来年の利上げペース加速期待につながり、ドル円は115円を目指す展開も。

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