2018年11月19日号

(2018年11月12日~2018年11月16日)

先週の為替相場

ポンドが乱高下

 11月12日の週は、英国のEU離脱(ブレグジット)交渉をめぐって、ポンドが乱高下する展開となった。

 週前半は事務レベルでのEU離脱案の合意が13日に報じられたことや、EU離脱の合意草案に関して14日に英首相官邸で行われた閣議で、閣僚からの合意が得られたと報じられたことなどがポンド買いを誘い、ポンドドルが週初の1.28台前半から1.30台後半まで上昇する場面が見られた。

 25日に開催予定となっているEU離脱交渉に関するEU首脳会合(欧州理事会特別会合)を前に交渉の前向きな進展が好感された格好に。

 しかし、15日にラーブEU離脱担当相やバラ北アイルランド担当閣外相(用語説明1)など複数の閣僚が辞任すると報じられ、一気にポンド売りが進行。また、英与党保守党に閣外協力している北アイルランドの地域政党DUPが合意案に反対との見通しが報じられ、草案の議会通過が不透明になったことも、ポンドの売りを誘った。ポンドドルは1.27台前半まで大きく値を崩す格好に。ポンド円も148円台後半を付けた後もみ合っていた148円ちょうど前後の水準から一気に144円台前半まで値を落としている。

 その後は週末にかけて少しポンドの買い戻しに。同交渉をめぐった求心力低下もあって、メイ首相に対する保守党党首の不信任投票を求める議員が相次いでいたが、投票を実施する必要数に達していないと首相が発言したことや、15日時点ではラーブ氏らとともに辞任見込みが報じられたゴーブ環境相(用語説明2)が辞任を撤回したことなどが買い戻しを誘った。

 ドル円はブレグジット問題などでのクロス円の売りに加え、週末に開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)を前にした米中の通商摩擦問題への警戒感がドル売り円買いを誘い、週前半の114円台から週末には112円台へ値を落とす展開に。

 APECではペンス米副大統領から、中国側がやり方を変えない限り1月の追加関税発動などの方針は変わらないなど、強気な発言が見られた。

今週の見通し

 週後半は取引参加者が減ることもあり、様子見ムードが広がりそう。

 今週は木曜日が米国の感謝祭(Thanksgiving)の祝日、金曜日は日本が勤労感謝の日で祝日、米国は平日であるが、株式や商品市場が短縮取引になるなどお休みムードが強い日となっており、外国為替市場でも木曜日から連休を取っている参加者が多くみられる。そのため、週の後半にかけて取引参加者が極端に少ない時期となる。

 米国は祝日でもそれなりに市場に参加してくる投資家が見受けられるが、イースター、感謝祭、クリスマスはしっかりと休暇を取る参加者が多く、通常の祝日以上に取引は閑散になるとみられる。

 取引参加者が少ないと、基本的にはレンジ取引が見込まれるが、25日のEU首脳会合を前に、英国のEU離脱がらみでリスク警戒感が高まるなど、材料が出てくると不安定な動きを見せる可能性があるだけに要注意。

 25日の臨時首脳会合の開催を決めたトゥスクEU大統領は、状況が大きく変化した場合、会合を開かない場合があるとの姿勢を示しているほか、メイ首相がユンケル欧州委員長と会談を行い、離脱協定の修正を模索しているという状況もあり、今後についてはかなり不透明となっている。

 ポンドは基本的に上値の重い展開となりそう。議会通過が不透明状況では積極的なポンド買いを入れにくい。DUPなどから強い反発が見られた場合などは、ポンド売りが再び強まる可能性も。

 こうしたブレグジット問題でのリスク警戒感に加え、APECでペンス副大統領が強気な姿勢を示したことで、月末の米中首脳会合についての警戒感も強まっており、ドル円は頭の重い展開か。

 もっとも、リスク警戒の動きが収まると、基調としてのドル買い円売りの動きが見られることもあり、下がったところではドル買い円売りが出る流れに。

 週後半の取引減少もあり、基本的には112円台後半を中心としたレンジ取引が続く展開が見込まれ、リスクとして下方向の動きが意識される形か。

 ポンド円がどこまで崩れるのかにもよるが、110円から111円にかけての重要なサポート水準を試しに行く可能性がある。

用語の解説

閣外相 英国では各中央省庁のトップである大臣(閣内大臣・Cabinet ministers)だけでなく、議会に参加しない閣外大臣(閣外相)が多数指名される。閣内大臣は20名程度となっているのに対して、閣外大臣は政権にもよるが100名を超える。日本における副大臣格にあたる。
ゴーブ環境相 マイケル・ゴーブ(Michael Andrew Gove)。保守党に所属する英庶民院議員。2005年から議員となっており、2010年に教育大臣に就任。その後大法官、法務大臣などを務め、キャメロン首相の辞任を受けた2016年の首相選挙に立候補して、メイ首相に敗れている。

今週の注目指標

米耐久財受注(10月)
11月21日22:30
☆☆
 米国の設備投資に大きな影響を与える耐久財受注が21日に発表される。前回9月分はマイナス予想に反して+0.7%と力強い結果となったが、この数字は軍用機関連の受注が一気に入った影響が大きく、今回はその反動もあって-2.5%と一気の減少が見込まれている。もっとも輸送関連は月毎のブレが大きいため、市場は輸送を除いたコアを同時に確認することが一般的。前回は前月比変わらずとなったコア部分は、今回は+0.4%と堅調な数字が見込まれている。予想前後の数字が出てくると、米景気の堅調さが意識され、ドル買いを誘いそう。ドル円が113円台をしっかり回復するきっかけとなりそう。
ブラックフライデー
11月24日
☆☆
 感謝祭の翌日の金曜日のこと。この日から米国では年末商戦のセールが一般的に始まる。米国の小売店で売り上げが最も上がる日といわれており、小売業者が儲かって黒字になるとことからこの名で呼ばれている。米国のGDPの約7割を占める個人消費の勢いが示されるということで、この日の売り上げ状況に対する注目度は高い。数字的な意味での結果が出るのは後日となるが、混雑状況などがメディアで報じられ、売り上げ見込みなども示されるため、旺盛な消費動向が見られると、ドル買いにつながる可能性も。ドル円は113円台半ばに向けた動きが期待される。
EU臨時首脳会合
11月25日
☆☆☆
 英国のEU離脱交渉で、事務レベルの合意ができたことを受けて、欧州委員会は欧州理事会に対して交渉妥結に向けた動きを進めるように勧告し、これを受けてトゥスクEU大統領は25日に欧州理事会特別会合を開催することを決定した。離脱合意草案に対する英国内での混乱もあり、今回の会合で交渉がまとまる可能性は低くなっており、期限の延長などが決定する可能性もある。交渉が前向きに進み、妥結への動きがしっかりと見えるようだと、ポンドは大きく買い進まれる可能性。ポンド円は150円に向けた大きな動きを見せる可能性も。

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