2018年11月26日号
先週の為替相場
リスク警戒の動きもドル円はしっかり
11月19日の週は、株安原油安などを受けてのリスク警戒の動きが目立つ展開となった。もっとも、英国のEU離脱(ブレグジット)協定案の承認が前向きに進んだことなどを好感した動きなどもあって、方向性が交錯。ドルは全般的に上昇基調が目立ち、ドル円も下値しっかり感が強い展開に。
ドル円は20日に112円30銭台を付けるなど、週の初めはややドル安円高が優勢に。22日の米感謝祭、23日の日本の勤労感謝の日など、週後半に取引が閑散となることを意識し、ポジション調整の動きが目立った。
20日にダウ平均株価が一時600ドル以上下げるなど、米株安の動きが広がったことも、ドル売りを誘った。
英国のEU離脱協定案について、25日に欧州委員会臨時首脳会合を行うにあたって、週の前半はジブラルタル問題(用語説明1)やメイ首相の党首不信任投票などの報道が目立ち、警戒感を誘ったことも、ドル円の重石に。
もっとも安値を付けた後は買い戻しが優勢に。
イタリアの予算問題への懸念を受けたユーロ売りドル買いの動きなどが、ドル全面安の調整につながった。
その後は週後半に取引が閑散となったこともあって、113円前後でのレンジ取引が続く展開に。
EU離脱交渉が大詰めを迎え、動きが神経質なポンドは、荒っぽい動きが続いた。週の前半はポンド売りが優勢。メイ首相に対する与党保守党党首不信任投票の思惑や、EU離脱協定での英領ジブラルタルの取り扱いについてスペインが不満を表明し、交渉が難航するとの思惑が、ポンド売りにつながった。
ポンドドルは1.27台後半での推移が続いた後、22日にポンドは急伸。英国とEUがブレグジット後の将来の関係について合意する草案文書を公表したことが好感され、一気に1.29台まで急騰。その後、EU報道官がジブラルタル問題や漁業権に関する問題が未解決と発言したことでいったん1.27台に戻すなどの場面が見られたが、その後再び1.29台を付けるなど、ポンド高の動きに。
週末の欧州理事会臨時会合でのEU離脱協定案正式承認への期待感も広がったが、ポジション調整もあって、ポンドドルは高値からじり安となって週末を迎えている。ポンド円も144円20銭台から一気に146円手前まで急騰した後、144円台前半まで値を落とすなど、荒っぽい動きに。
今週の見通し
30日、1日にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスでの開催が予定されている20カ国・地域(G20)サミット(用語説明2)及び同地での米中首脳会議に市場の注目が集まっている。
トランプ米大統領と習近平中国国家主席の直接の対談は昨年11月にトランプ米大統領が訪中するなどの機会に行われてきたが、米中通商摩擦問題が深刻化してからは今回が初めて。
今月1日に両氏が電話会談を行った際には、習国家主席が両国ともに受け入れ可能な案をまとめる必要性を示唆しており、その後事務レベルでの協議が行われるなど、状況改善に向けた動きが見られる。そのため、市場では米中通商摩擦懸念の後退につながる前向きな動きが期待されている。
注目は来年1月1日から予定されている関税率引き上げの猶予などに向けた動きがどこまで前向きに進むか。さらに第4弾として2670億ドルの追加関税の動きも見られる。こうした関税強化を先送りするような中国側からの提案がどこまで出てくるのかがポイントに。
米国の関税対象は現時点で中国が米国から輸入する全額を超えており、中国側からは有効な対抗策がとりにくい。さらに第4弾が実施された場合、関税という面での有効な対抗策はほぼなく、貿易戦争の激化が避けられない。こうした状況に至るような米中関係の深刻さを示す会談になると、一気にドル売り円買いの動きが強まりそう。ドル円は110円の大台割れを中期的目標とした大きな動きも意識される。
市場が期待しているように首脳会談で前向きムードが強調され、関税引き上げの中止はともかく、第4弾の追加関税の先送りが果たせれば、リスク警戒感は一服。ドル円は113円台にしっかりと乗せ、114円を目指す動きも。
EU離脱協定案が正式承認された英ポンドは、12月上旬に予定される英国議会(庶民院)で承認が可決されるかどうかが焦点となる。カギを握る北アイルランドの地域政党DUPをはじめ、永議会当局者からの発言に一喜一憂する流れとなりそう。議会通過への動きが広がるとポンド買い円売りに。ポンド円は146円乗せが最初のポイント、同水準をしっかりとつけると、今月の高値149円台半ば近辺を目指す展開に。
用語の解説
ジブラルタル問題 | スペイン南東部にある小半島であるジブラルタルは、スペイン継承戦争に絡んで1713年に交わされたユトレヒト条約において、英国の領有が認められた。スペインは返還を求めており、300年以上にわたって領土問題が続いている。現時点でスペインは共同主権を主張しているが、そうした交渉において、英国とEU間の全般協議に組み込まれることをスペインが拒否し、英国との2国間交渉を求めていた問題。 今回の協定案では、英国とEUの全般的な協議においてジブラルタルを取り扱わないことが合意された。 |
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G20 | 中国など新興国経済の成長を受けて、従来のG7の枠組みだけでは世界経済に対する協議を行うには不十分という見方が広がり、1999年にG7の7カ国及びEUにロシアを加えたG8に、さらに新興11カ国(中国、インド、韓国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、南ア、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、オーストラリア)を加えた20カ国・地域の財務相・中央銀行総裁会議がスタートした。さらに2008年からこれらの国の首脳を集めたG20首脳会合が開かれることとなった。対象国のGDP合計は世界全体の90%に及び、世界経済に大きな影響力を持つ会議となっている。議長国は各国が年毎に持ち回りとなり2018年はアルゼンチンが議長国となっている。2019年は日本が議長国となり、大阪でG20サミットが開催される。 |
今週の注目指標
米FOMC議事録 11月30日04:00 ☆☆ | 11月7日、8日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が現地時間29日に公表される。次回12月のFOMCでの追加利上げがほぼ確実となる中で、来年以降も継続するとみられる緩やかなペースでの利上げについて、参加メンバーからどこまで前向きな姿勢が見られるのかなどが注目ポイントに。来年は年3回の利上げを見込む動きが大勢となっているが、その予想に変化が出るようならば相場の大きな動きにつながりそう。基本的には週末のG20を控えて動きは限定的とみられるが、利上げ期待を強めるようだと、ドル円は114円台にしっかりと乗せるような動きも。 |
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G20サミット 11月30日・12月1日 ☆☆☆ | 今回のテーマは「公平で持続可能な開発への共通認識の結集」。G20シェルパ(議長国での補佐役)であるペドロ・ビジャグラ・デルガド氏は、通商摩擦問題に関して、開放的かつ規則に基づいた多角的自由貿易システムを維持し、世界経済の安定した成長を促すことが重点となると発言。米国を中心とした通商摩擦問題が大きなテーマの一つとなることを示唆している。共同声明などでどこまで踏み込んだ表現ができるのかなどが焦点となる。保護主義的な動きが鈍るような動きが見られると、ドル高円安が進みそう。ドル円は113円台後半へ向かうと期待される。 |
米中首脳会談 11月30日・12月1日 ☆☆☆ | G20で直接顔を合わせるトランプ米大統領と習近平中国国家主席は、米中首脳会談を行う予定。中国側から通商摩擦問題に関する何らかの提案があるとみられ、どこまで両国が歩み寄れるのかが世界中から注目されている。今回の場で決定まで至らずとも、今後の事務レベル協議での進展を示す動きが見られれば、ドル買い円売りにつながりそう。内容次第であるが、ドル円は114円台半ばを試す大きな動きになる可能性も。 |
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