2018年12月03日号

(2018年11月26日~2018年11月30日)

先週の為替相場

G20及び米中首脳会談をにらむ展開

 11月26日の週は、30日、1日とアルゼンチンのブエノスアイレスで開催された20か国・地域(G20)首脳会談及び、その機会を利用して行われる米中首脳会談をにらむ展開となった。

 週の半ばまではドル高が優勢な展開に。ドル円は一時114円台を回復する動きを見せた。感謝祭明けのブラックフライデー(11月23日)に本格的に始まった米国の年末商戦で、売り上げが過去最高水準に増加しているとの報道が、ドル買いを誘う格好に。

 トランプ大統領が知的財産権侵害(用語説明1)での制裁第3弾で実施した2000億ドル規模の中国製品に対する関税について、1月から関税率を引き上げる計画に変化はないと発言したことなどが重石となる場面も見られたが、週末の米中首脳会談を前にした政治的な駆け引きの一環との思惑もあり、市場の反応は限定的に。

 ユーロドルが週初めの1.13台後半から1.1260台まで値を落とすなど、ドルはほぼ全面高基調となっていた。

 しかし、28日のNYエコノミッククラブ(用語説明2)でのパウエルFRB議長発言で流れが一気に変化した。

 議長は「政策に既定路線なく、金利は中立レンジをやや下回る」と発言。10月までは中立レンジまで程遠いとしていただけに、市場はサプライズとしてとらえ、一気にドル売りが広がった。

 ドル円は113円台半ば割れまで値を落とし、その後も売りが出て113円20銭割れまで。ユーロドルが1.1260台から1.1380超えを付けるなど、ドルは全面高に。

 その後主要通貨はもみ合いのまま週末を迎えた。米中首脳会談を前に積極的な取引を手控える動きも見られた。

 米中首脳会談では、知的財産侵害の協議を即時始めることを条件に米国が1月からスタートする予定となっていた2000億ドル規模を対象とした関税の税率引き上げ(10%から25%)を保留。2670億ドル規模も追加関税計画についても凍結することで合意した。知的財産侵害で90日以内に合意がなければ再開するという一時的な休戦であるが、市場はリスク選好の動きを強めた。

今週の見通し

 米中首脳会談を受けてリスク選好の動きが広がっている。

 米中の通商摩擦問題は世界経済に大きな影響を与える重要な問題として、市場でも注目されてきた。同問題を受けての中国景気の鈍化懸念が資源国・新興国通貨からドルへの資金シフトを誘ってきた面もある。

 今回の米中首脳会談で知的財産侵害での交渉期限である90日間は保留される形で、貿易戦争が一時休戦したことで、市場ではリスク選好の動きが回復する流れに。

 90日後の再燃を意識して、突っ込んだ動きへの警戒感は見られるが、最悪の事態は避けられたとの思惑も強く、ドル安円安の流れが当面続きそう。

 ドル円に関しては、ドル安と円安が相殺されて、動きが出にくいが、流れ的には上を期待。世界的な株高の動きの割に頭の重い展開が続いていたが、今回の状況を受けて上に抜けやすくなったという印象。

 もっとも115円手前には依然として売り意欲が残っており、114円台に乗せた後の買いの勢いを確認したいところ。

 豪ドル円やユーロ円はもう一段の買いを期待も、調整を交えながらの展開となりそう。豪ドル円は83円20銭近辺がしっかりしてくると、84円超えが見えてくる。

 今週は金曜日に米雇用統計を控えている。利上げが濃厚な今月のFOMCを控えての雇用統計だけに、注目が集まるところ。パウエルFRB議長発言で来年以降の利上げ期待が後退しているが、労働市場の力強さが確認されると、利上げのハードルが下がるだけに、ドル買いが入りやすくなりそう。

用語の解説

知的財産権侵害 知的財産とは著作物など無形のものに対して、作成者などが有形のものと同様に専有する権利(所有権)を認めたもの。産業財産権としては特許権、実用新案権、意匠権、商標権などがある。中国は国内に進出する外国企業に対して、許認可などを通じて実質的に合弁を求め、さらに最先端技術の知的財産を供与するように強制していると米国が主張して、米中通商摩擦問題の大きな要因となった。
NYエコノミッククラブ Economic Club of New York、ニューヨークにある非営利、政治的中立な会員組織。社会、経済、政治問題などの研究・議論を組織の目的としている。1907年に設立された伝統ある組織で、歴代大統領や各国の代表、中央銀行総裁などが講演を行うことで知られている。現在の議長はハドソン研究所のクラビス・シニアフェローが務めている。

今週の注目指標

米パウエルFRB議長議会証言
12月5日22:15
☆☆☆
 パウエルFRB議長の上下両院合同経済委員会での議会証言が5日に行われる。先日の講演で現行の政策金利が中立金利のレンジまでわずかと発言し、市場の今後の利上げ期待を一気に後退させた後だけに、議会証言という公式の場での発言が注目されている。証言に先立って20時15分に証言テキストが公表され、こちらも注目される。テキスト及び本証言で先日の発言に触れなかった場合でも、質疑応答での質問が出てくると期待され、注目されるところも。議長の慎重な姿勢が強調されるようだとドル売りが強まる可能性も、ドル円は112円台に値を落とす可能性。
ドイツキリスト教民主同盟(CDU)党首選
12月07日
☆☆☆
 ドイツの与党CDUの党首選が7日に行われる。このところの選挙戦での厳しい結果を受けて、現党首であるメルケル首相は今回の党首選に出馬していない。事前の世論調査ではメルケル首相に近いといわれるクランプカレンバウアー幹事長が支持率でトップに立ち、対抗馬といわれるメルツ元院内総務や若手のシュバーン保険相をリードしている。このままクランプカレンバウアー氏が勝利すると、メルケル路線の継承が進むと期待され、ユーロ買いにつながりそう。ユーロドルは1.14超えを試す期待も。
米雇用統計
12月07日22:30
☆☆☆
 11月の米雇用統計が7日に発表される。非農業部門雇用者数は前回予想を超える25万人増を記録した非農業部門雇用者数(NFP)は、19.9万人増が見込まれている。節目の20万人に迫る数字となっており、前回からは鈍化も数字的には力強い印象。前回9年半ぶりの高い伸びとなる前年比+3.1%を記録した平均時給は同じく+3.1%が見込まれており、こちらもかなり強めの数字に。予想前後の数字が出てくると、今月の利上げだけでなく、パウエルFRB議長の発言以来、後退している来年の利上げ期待の押し上げにもつながり、ドル買いに。ドル円は114円台に乗せるきっかけとなりそう。

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