2018年12月10日号

(2018年12月03日~2018年12月07日)

先週の為替相場

リスク警戒続き、株安ドル安円高の流れに

 12月3日の週は、リスク警戒感の強い不安定な展開となった。週初は113円台後半を付けていたドル円は一時112円20銭台まで値を落とす展開に。

 週明けは、週末の米中首脳会談で米国の対中追加関税税率引き上げを90日延期するとの合意が好感される形でドル買い円売りが優勢に。株の買い戻しも入り、リスク警戒の動きが一服する流れとなった。

 しかし、英国のEU離脱協定の11日の採決をめぐり、4日の議会の紛糾が見られたことをきっかけに、リスク警戒感が強まる流れに。世界的に株が値を崩しダウ平均株価が一時800ドル超の下げとなる中で、為替市場ではドル安円高の動きが強まった。

 リスク警戒感からの株安、米債利回り低下の流れはその後も継続し、6日のNY市場では一時112円20銭台と、先週の安値を付ける動きに。

 その後は週末を前に買い戻しなども見られたが、7日の米雇用統計が予想に反して弱めの結果となったことで、戻りも鈍くなり、112円台で週の取引を終えている。

 先週もっとも動きが見られたのはポンド。11日に予定されている英下院(用語説明1)でのEU離脱協定採決を前に、不安定な動きが目立った。閣外協力している北アイルランドの地域政党DUPが反対姿勢を示し、与党内からも反対の意見が出ており、否決の可能性が強まる展開に。メイ首相の求心力低下から政権自体が揺るいでいるとの見方が広がっており、ポンド売りの動きが優勢に。

 一方で、カーニー英中銀総裁が、最悪の事態の可能性が低いなどと発言した際や、武田薬品工業がロンドン上場のアイルランドの製薬大手シャイアーの買収を正式決定したとの報道にポンドが買われる場面が見られるなど、ポンド相場は不安定な動きに。

 その他目立ったのはカナダドルの動き。事前見通し通り政策金利の据え置きが発表された5日のカナダ中銀政策理事会。声明の中で、インフレを伴わない経済成長余地があるとして、今後の利上げに慎重な姿勢を示し、一気にカナダ売りが強まった。

今週の見通し

 ドル円はリスク警戒の動きを中心に下値トライの流れが続きそう。

 11日に予定されている英下院でのEU離脱協定の採決は、否決見通しが広がっている。与党内では採決延期などを求める声も上がっているが、週末にバークレーEU離脱担当相が採決実施を国営放送BBCで示すなど、メイ政権は強行する見込み。

 野党が反対で一致した状況を続け、閣外協力していたDUPが反対に回った時点で、反対多数が確定。与党内からも反対票が出てくるとみられ、反対の圧倒的多数という可能性まで出てきている。この場合、メイ首相の進退問題にもつながりそう。また、合意なきEU離脱への動きが加速するとみられ、ポンド売りが進むだけでなく、世界的なリスク警戒の動きが強まる可能性。

 米国を巡る状況も不安定。先週末の米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を大きく下回る弱めの数字に。来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ見通し自体は継続も、来年に向けた参加メンバーによる金利見通しなどに悪影響を与える懸念が広がっている。

 112円台前半には買い意欲が残っているとみられるが、状況によってはあっさり割り込んで111円台トライの可能性も。ターゲットは10月26日に付けた111円30銭台。

 ポンド円はドル円以上に下値リスク。ドル円が直近安値を付けた10月26日のポンド円の安値142円70銭が間近に迫っており、ここを割り込むと8月につけた140円割れも視野に入ってくる。

用語の解説

英下院 庶民院(House of Commons)。英国は上院にあたる貴族院と下院にあたる庶民院の二院制を取っているが、下院に絶対的な優先権があり、上院は下院で成立した法律の執行を一定期間遅らせることが出来る程度の権限しか有していない。前回の総選挙で与党保守党は議席数を減らし、318議席と下院での単独過半数である326議席(議会に参加しないシンフェイン党などの関係で実質過半数は322議席)を割り込んでいる。北アイルランドの地域政党であるDUP(10議席)が閣外協力する形で、過半数を確保している。
バークレーEU離脱担当相 ステファン・バークレー(Stephen Barclay)。EU離脱問題での欧州委員会などとの交渉担当となるEU離脱担当相は、メイ首相との路線の違いで7月に当時のデービス離脱担当相が辞任。後を継いだラーブ離脱担当相も、今回採決されるEU離脱協定の閣議決定をめぐる意見対立で先月辞任し、その後を継ぐ形でバークレー氏が同相に就任した。就任までは保険担当の閣外相であった。前任者たちと違い、欧州委員会などとの交渉に関してはメイ首相が直接担当し、英議会内での調整役となっている。

今週の注目指標

英下院EU離脱協定採決
12月11日
☆☆☆
 先月欧州理事会首脳会合で合意した英国のEU離脱協定案について、英下院で採決が行われる。可決しない場合、同案は成立せず、新たな協定案を欧州理事会や欧州委員会と合意する必要が生じる。期日までの新たな合意は非常に難しく、合意なきEU離脱への可能性が強まるとみられる。ぎりぎりの調整が続いているが、否決される可能性が高い。ある程度は織り込んでいるが、影響が大きい事案だけに、ポンド売りが見込まれている。ポンド円は140円に向けた動きも。
米消費者物価指数(CPI・11月)
12月12日22:30
☆☆☆
 来年以降の米FRBの利上げペース鈍化が懸念される中、カギを握る雇用と物価の二つの材料のうち、雇用は先週末の非農業部門雇用者数がやや弱めに出て、市場の懸念が強まった。もう一つの鍵である物価も弱めに出てくると、利上げペースが鈍化となる見通しが加速し、ドル売りにつながる可能性が広がる。米国のインフレターゲットの対象はPCEデフレータであってCPIではないが、動きはほぼ似通るため、発表の早いCPIの時点で市場が反応するケースがほとんど。予想は全体の数字が前回から鈍化も、食品・エネルギーを除くコア部分は強まっている。予想通りの数字が出てくると、利上げ見通しの鈍化懸念が一服し、ドル買いになりそう。ドル円は113円台の回復も。
米小売売上高(11月)
12月14日22:30
☆☆☆
 先週末の米雇用統計が弱めに出たことを受けて、雇用と密接な関係のある小売売上高の数字への警戒感が広がっている。もっとも、先月のブラックフライデー(米年末セールのスタート日)の売り上げは歴史的な活況であったと報じられており、予想ほど弱くならない可能性も。今のところの予想は前月比+0.4%、変動の激しい自動車を除くコアの前月比+0.5%と、10月分よりやや伸びが鈍化する見込み。雇用統計同様に予想よりもさらに弱めに出てくると、ドル売りが広がりそう。ドル円は112円割れを試すか。

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