2018年12月17日号

(2018年12月10日~2018年12月14日)

先週の為替相場

政治リスク警戒

 12月10日の週は、リスク警戒感の強い不安定な展開の中、ドル円は比較的しっかりとなった。

 週明けはリスク警戒感が強まる展開で始まった。週明けの東京株式市場で株安が進んだことなどが重石となったほか、11日に予定されていた英国のEU離脱協定案の下院採決が延期になる見通しとの週末の英メディア報道がリスク警戒を誘った。

 その後英議会の採決は実際に延期が決まり、メイ首相は合意なきEU離脱に向けた準備を加速すると発言したことで、警戒感が広がる展開に。もっとも、ポンドドルでのポンド売りドル買いがメインとなったことで、ドル円自体はしっかり。113円台を回復する動きに。

 113円台を回復後は、113円ちょうど手前がサポートとなり、堅調な地合いが続いた。米株安が進む場面も見られたが、反応は限定的。欧州通貨売りドル買いの動きなどが支えとなった。

 米中通商摩擦問題に関して、ファーウェイCFOの保釈決定や、中国が米国産自動車関税について、先日の米中首脳会談で約束した関税率引き下げの実施を示したことなども、ドル買い円売りの動きを誘った。

 ドル円は113円台後半まで上昇し、もみ合いの展開に。上値では利益確定売りの動きが見られ、114円が遠い展開となるなど、値幅は限定的なものにとどまったが、下値もしっかり。

 その他通貨で目立ったのはポンド。11日に予定していた採決の延期を決めた10日海外市場で1.27台から1.25ちょうど近くまで下落。メイ首相の英保守党党首としての不信任決議案(用語説明1)が発動される動きも、ポンド売りを誘い、一時1.2470台まで。

 メイ首相の保守党党首信任投票は200対117で信任多数となり、政治的混乱が避けられるとの思惑がポンドの買い戻しに。もっとも、不信任票が三桁に乗ったことで、メイ首相主導で欧州理事会と合意した現状の協定案が議会を通過する可能性が絶望的との見方が広がったことへの懸念も見られた。

 いったんは買い戻しの動きが強まったポンドドルは週の取引を1.25台前半で終えるなど、頭の重い展開に。

今週の見通し

 今週は18日、19日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えている。

 0.25%の利上げ見通しが広がっているが、ここにきて金利先高観が急速に後退する中で、据え置き見通しも一定数みられる。

 実際に据え置かれた場合は、かなりのサプライズでドル売りが広がるとみられる。ドル円は112円を一時割り込むような大きな動きも期待されるところ。

 また、大勢の予想通り利上げを実行した場合でも、今後の金利見通しの下方修正が想定以上に厳しい可能性があり、この場合もドル売りを誘いそう。

 今回のFOMCではFOMC参加メンバーによる経済成長率、失業率、物価、年末時点での政策金利水準の見通し(プロジェクション)(用語説明2)が発表される。前回9月の発表では、今回利上げした上で、来年3回の利上げ見通しが大勢となっていたが、先月パウエルFRB議長が現状の水準は中立水準レンジを「わずかに下回る」と発言したことで、今後の積極的な利上げ継続の期待が一気に後退した。

 金利市場動向からは来年の利上げは1回もしくは無しという見通しが広がる状況となっており、前回のFOMCメンバーの予想とはかなりの乖離がある。今回市場見通しに近づく形で見通しが下方修正されると、ドル売りの動きが広がりそう。

 下方修正度合いにもよるが、目先の短期サポートとなっている113円を割り込んで売りが強まる可能性がありそう。

用語の解説

メイ首相与党保守党不信任決議 英国の与党保守党は、党首であるメイ首相の、党首としての不信任決議(信任投票)を12日に実施した。保守党の規定により、保守党所属の下院議員の15%以上(今回の場合48名以上)の署名が集まることで、党首としての信任投票を実施することが出来る。今回のEU離脱協定案が閣議決定した後、信任投票を求める声が強まり、12日に管轄である1922委員会のブレイディ委員長に規定人数分の署名が届けられた。結果は200対117で信任多数。保守党の規定により今後1年間は信任投票を実施することは出来ない。
プロジェクション 年8回開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)のうち、半分の4回で示されるFOMCメンバー全員による経済予想。今後数年における年末時点での景気動向(GDP成長率)、雇用状況(失業率)、物価動向(PCE及びPCEコアデフレータ)、政策金利水準について、予想が示される。各項目について、最大値、最小値、中央値、平均値が示されるほか、政策金利水準については、各メンバーの見通しをドットの形でグラフに表すドットプロットが示され、どの水準の予想が何名いるのかが分かるようになっている(個々の予想がどのメンバーのものであるのかは示されない)。

今週の注目指標

独Ifo景況感指数(12月)
12月18日18:00
☆☆
 12月の独Ifo景況感指数が18日に公表される。ドイツでもっとも注目される指標の一つである同指標は、このところ3か月連続で悪化しており、今回の予想も小幅ながら前回を下回ると見込まれている。予想通り弱めの数字が出てくると、米国との通商摩擦問題などによりドイツ国内の景況感が悪化している印象が強まる。ある程度は想定済みも、予想を大きく下回り基準値である100を割り込むと、警戒感が加速してユーロ売りが広がる可能性。ユーロドルは1.12割れを意識する展開も。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
12月20日04:00
☆☆☆
 18日、19日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。以前から利上げが見込まれていることに加え、今後の金利見通しが変更されるとの思惑もあり、注目を集めている。
元々、来年以降も漸進的な利上げが続くとみられていた米FRBであるが、パウエルFRB議長発言や、トランプ大統領による、今回のFOMCで利上げを実施することは「馬鹿げている」発言などにみられる圧力もあって、来年以降の利上げ見通しが後退している。もっとも、FRBは独立性を強く意識している組織だけに、大統領の圧力が逆に作用して、前回並みの金利見通しを示す可能性も。この場合、ドル買いが強まり、ドル円は114円台を試す可能性も。
米暫定予算期限
12月21日
☆☆☆
 米政府の2019年会計年度(2018年10月から2019年9月)の全体の予算はまだ確定しておらず、一部歳出法案と、調整が進んでいない分野についての12月7日までの暫定予算が9月に成立している状態。21日で暫定予算が底を突く形となり、この日までに予算合意が進まない場合、一部連邦政府機関が閉鎖される可能性がある。メキシコとの国境の壁建設に伴う予算など、合意が難しい項目が残っており、政府機関閉鎖の可能性は十分にある。この場合ドル売り材料となり、ドル円は112円台へ値を落とす可能性。

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