2019年01月07日号
先週の為替相場
取引が薄い中でフラッシュクラッシュ
12月31日の週は、米株安を受けてのリスク警戒感が強まる中で、3日朝にドル円が短時間での暴落、いわゆるフラッシュクラッシュ(用語説明1)を起こすなど、波乱の展開が見られた。
昨年末から、米中の通商摩擦問題や、国境の壁をめぐるトランプ米大統領と民主党との対立からの連邦政府機関一部閉鎖(用語説明2)を受けて、リスク警戒の動きが広がり、株安ドル安円高の動きが広がる展開となった。
東京市場が年末で休場となった12月31日に節目とみられた110円を割り込むと、年明けも売りが継続。
米アップルが中国での販売不振などを背景に売り上げ見通しを下方修正させたことをきっかけに、3日の早朝にドル円が一気に崩れる展開。NY市場が引けた後、東京が不在の上に、香港・シンガポールなどアジアで取引の多い市場が本格的に開く前という取引量が1日の中でも極端に少ない時間帯にドル売りが強まったことで、109円近辺から一気に値を崩したドル円は、一時105円を割り込むところまで売り込まれた。
その後の戻りで108円ちょうど近辺が重くなった後、週末にかけてのポジション調整に、米雇用統計の好結果が加わり、108円台半ば超えまで買い戻しが強まる場面が見られたが、フラッシュクラッシュ前の水準を戻しきれずもみ合いとなった。
米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想をはるかに上回る好結果。平均時給も予想を超えるなど、かなり強めの数字となった。その後、パウエルFRB議長が利上げ路線の柔軟な見直しに言及するなどしたことがドル売りを誘ったが、108円台を維持しての推移となるなど、しっかり感が出てきている。
米中の通商摩擦問題に関して、7日、8日に北京で次官級協議を開催することが、4日に報じられ、リスク警戒後退に寄与。中国人民銀行による預金準備率引き下げなども含め、中国関連での警戒感は一服している。
今週の見通し
リスク警戒後退の流れがどこまで続くのかがポイントとなりそう。
米雇用統計が強めに出たことで、米景気の底堅さへの期待感が広がり、ドル買い円売りの流れに。金利先物市場動向からの金利見通しは、利上げ確率の見通しが年内ゼロ%まで下がっていたが、今回の雇用統計を受けて6月時点で6.9%まで上昇。5割を超えていた年内利下げの確率も27.9%まで下がるなど、一気に見通しが変化しており、影響の大きさを感じさせる展開に。
先週いったん下に崩れたこともあって、ドル買いに慎重な姿勢が見られること、東京勢が基本不在の12月31日に110円を割り込み、下を試したことで実需などの売り遅れが意識されることなどから、上がったところではドル売りが出る流れが当面続きそうだが、基調はそれでも上方向か。
注目は11日の米消費者物価指数(CPI)。エネルギー価格の下落もあって総合は前年比+1.9%と前回の+2.2%から大きく低下し、節目の+2.0%も割り込む見込みとなっているが、食品・エネルギーを除くコアの数字は前回と同様に前年比+2.2%としっかりの見通し。
予想を超えて物価上昇が見られるようだと、先週の米雇用統計の結果と合わせ、米FRBの利上げ姿勢継続の追い風となる可能性があり、ドル買いにつながりそう。
米中次官級協議にも期待が広がっている。今月スイスで行われるダボス会議に出席予定のトランプ大統領が王岐山国家副主席と会談を行う見通しもあり、両国の通商交渉が前向きに進む可能性が出てきている。こうした状況はドル買い円売りの大きな材料となるだけに、報道などに注意したいところ。
昨年末から一部閉鎖が続く連邦政府機関の再開への動きが広がると、こちらもドル買いに。
ドル円は先週の大幅安が意識されているだけに、108円台を中心に頭の重い展開が見込まれるものの、流れ次第では109円―110円の上値抵抗水準を超えていく流れも。
用語の解説
フラッシュクラッシュ | ごく短時間に相場が急激な下落を見せること。こうした展開は昔からごくたまに見受けられるが、フラッシュクラッシュという用語で最初に言及されたのは2010年5月6日にダウ平均がわずか数分で1000ドル近く下落したケース。相場の流動性を超える大量の取引が何らかの理由で発生するとこうした状況を起こす。システムによる自動売買が一般化したことで、現水準から何%下落したらポジションを切るなどのプログラムにより、市場に買い注文がない中で、売り注文が止まらず値を崩すなどの原因が指摘されている。 |
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連邦政府機関の一部閉鎖 | 米国の予算は、社会保障、メディケアなどの義務的経費を除いた裁量的経費について、12の歳出委員会によって立案された歳出予算法という法律をそれぞれ可決することで成立する。本予算・暫定予算が成立せず、予算不足となった場合は、合衆国法典31編1341条の規定により、緊急のものを除き米連邦政府は業務を停止しなければいけないと定められている。米国の2019会計年度(2018年10月から2019年9月)の予算については、国防、労働・厚生・教育・その他関係機関、軍事建設・退役軍人・その他関係機関の3小委員会の予算はすでに成立済みとなっているが、その他の予算は未成立となっており、それら省庁では緊急のものを除き政府機関が閉鎖されている。 |
今週の注目指標
米中次官級協議 1月7日・8日 ☆☆☆ | 米通商代表部(USTR)のゲリッシュ次席代表が北京を訪れ、中国の劉鶴副首相らと次官級協議を行う。先日の米中首脳会談で合意した各事案について、具体的な実行策などを協議するとみられている。3月初めの合意期限に向けて、実務面での合意が進むと、米中通商摩擦問題の解決に向けた期待が広がり、ドル買いが強まると期待されている。ドル円は109円超えに向けて買いが強まる可能性も。 |
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FOMC議事録 1月10日04:00 ☆☆☆ | トランプ大統領の反対を受けながら全会一致で利上げを決定した先月の米FOMC(連邦公開市場委員会)の議事要旨が発表される。FOMCでは参加メンバーによる利上げ見通しの下方修正なども示されており、メンバーの中で慎重な姿勢がどこまで広がっているのかなどが注目されるところ。今後の利上げについて、FOMCで示された今年二回という見通しよりも慎重な印象が広がっている。市場が見越す年内利上げを見送る見通しが強まるようだと、ドル売りにつながる可能性も。ドル円は107円台を試す展開に。 |
米消費者物価指数(12月) 1月11日22:30 ☆☆☆ | 先週末の米雇用統計の好結果を受けて、米景気の底堅さが印象付けられた。米FRBの二大責務のうち、雇用動向は依然として力強いことが判明。今後の政策金利の行方は、物価動向が握っているという状況がより鮮明となった。米国の金融政策における基準物価はPCEデフレータであって消費者物価指数ではないが、水準は違うものの上下の動きはほぼ似通るため、市場は発表の早い消費者物価指数を重要視する傾向がある。エネルギー価格の下落もあって総合では前年比+1.9%と11月の+2.2%から鈍化見込み。予想通りの場合は織り込み済みも、予想を超える鈍化を示した場合や、11月と同水準の伸びが期待されている食品・エネルギーを除くコアの伸びが鈍化した場合は、ドル売りが強まる可能性も。水準次第だが、ドル円は107円を割り込む大きなドル売り円買いにつながる可能性。 |
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