2019年01月15日号

(2019年01月07日~2019年01月11日)

先週の為替相場

ドル売り優勢に 

 1月7日からの週は、ドル安円安の流れとなった。

 1月4日に米経済学会(AEA・用語説明1)の年次総会で行われたパウエルFRB議長とイエレン前議長、バーナンキ元議長のパネルディスカッションにおいて、パウエル議長がFRBは「辛抱強く」なれると発言。利上げを当面見送る可能性を示唆したものと市場が受け止め、週の初めからドル売りが強まる展開となった。

 一方で、株式市場には買い材料としてとらえられたことで、米株を中心に世界的に株が堅調となり、リスク選好での円安も進行。ドル円はドル売りと円売りが相殺されて、値動きが抑えられた。

 7日から行われた米中次官級協議は、予定を延長して9日まで実施された。米製品の輸入拡大に向けた動きの進展が期待されるなど、一定の効果が見られ、さらに30日、31日に劉鶴副首相(用語説明2)の訪米による協議継続も決まるなど、前向きな動きが続いたことで、円売りの動きにつながった。

 もっともドル円は109円台で売りが出る流れ。高値圏でもみ合いとなったものの、頭が抑えられ、週の後半にかけては調整売りが強まる格好となった。

 9日のNY市場午後に発表された12月のFOMCの議事要旨では、追加利上げに慎重な姿勢が印象付けられ、ドル売りの動きに。

 さらに10日の仲値後にドル売りの動きが強まったことで、ドル円は107円台に値を落とす場面が見られた。

 ドル円を除くとドル売りの動きがかなり顕著となった。ユーロドルは3日に付けた1.1300近くの水準からの買い戻しの流れが続き、年初来高値を更新。

 頭を抑えていた1.15を超えたことでストップを巻き込んで上値をトライする展開に。

 ポンドはEU離脱協定の下院での採決を15日に控え、警戒感が出ていたものの、対ドルではドル安の勢いが勝り、堅調な動き。15日の採決は否決見通しが濃厚となっているものの、EU離脱期限の延長要請や、協定の修正要請などに期待する動きも見られ、ポンド買いドル売りの流れが続いた。1.28をしっかりと超えて上値を試す展開に。

今週の見通し

 米中の通商摩擦問題への警戒感が後退していることで、ドル円は基本的にしっかりの展開に。

 知的財産権問題での交渉が難航しているものの、米国産製品の輸入拡大交渉は順調に進んでいるとみられ、警戒感が後退している。

 豪ドル、NZドルなど、対中輸出の大きい国の通貨への買い材料ともなっており、ドル円、クロス円は堅調な地合いに。

 米国の利上げ期待に関しては、相当後退しており、年内据え置きどころか、利下げ期待も一定数出てくる状況に。こうした動きはドル売り材料となるが、ドル円に関しては、利上げ期待後退による米株の押し上げ効果が円売りにつながっており、下値が限定的に。

 米連邦政府機関閉鎖に関しては長期化する見込みが広がっており、反応が難しい。米経済に対する悪影響もあり、ドル売り材料ではあるが、すでに織り込んだ後だけに、新たな材料が出てこないと反応が難しい。

 ドル円はリスク警戒による上値の重さは継続も、基本的にはレンジ取引か。108円台での推移を中心とした展開が見込まれる。勢いは上方向がやや強いとみられ、109円台乗せを再び狙う展開に。ドル円を除くドル安の流れが収まると、109円の大台超えは十分あり得そう。

 15日の英下院のEU離脱採決に関しては、警戒感が継続も、否決見通しがかなり織り込まれており、結果そのものよりもどの程度の票差での否決となるかに注目が集まっている。ある程度僅差での否決となると、修正案での今後の可決見込みが広がり、ポンド買いにつながる可能性も。

 もし可決された場合は一気のポンド買い。否決でも僅差となるとポンド買いの動きに。

用語の解説

米経済学会 米経済学会(The American Economic Association:AEA)。米国の経済学分野でもっとも古く、もっとも権威のある学会。歴代の会長はノーベル賞受賞者をはじめとする世界的な経済学者が並んでいる。2019年の会長はバーナンキ元FRB議長。イエレン前議長が次期会長に指名されているなど、FRBとの関係も深く、年次総会にはFRB議長が参加するケースが多い。
劉鶴副首相 昨年3月から中国の副首相にあたる国務院副総理を務める中国の政治家。ハーバード大学で修士号を取得するなど、国際派で知られる。中国国家発展改革委員会時代から習近平国家主席の経済政策のブレーンとして知られていた。2017年に中国共産党の幹部である党中央政治局委員に選出されている。

今週の注目指標

英下院によるEU離脱協定採決
1月15日
☆☆☆
 昨年11月にメイ首相がEU首脳と合意したEU離脱協定の下院での採決が15日に行われる。当初は昨年12月に採決予定となっていたが、可決の見込みがないことから延期されたもの。閣外協力しているDUPが反対姿勢を崩しておらず、保守党だけでは過半数に届かないことから、可決の可能性は相当低い。もっとも与党内での反対勢力の一部が賛成に回る可能性があり、当初見込まれていた大敗から僅差での否定に変わる可能性はある。その場合は、今後の修正案などでの再採決で可決される可能性が出てくることからポンド買いに。ポンドドルは1.30を目指す可能性。野党労働党は基本的に反対見込みとなっているが、支持母体である英国の労働組合は協定案に肯定的なだけに、切り崩しが水面下で進んでいた場合、サプライズでの可決も。可能性は低いがその場合一気のポンド買いが見込まれる。
英消費者物価指数
1月16日18:30
☆☆
 EU離脱期限を3月末に控え、当面は様子見ムードが続くとみられる英金融政策。これまでのポンド安で輸入物価の上昇が強まり、インフレ圧力が継続すると、先行き不透明感が広がる中での物価高という厳しい状況になり、英中銀は対応を迫られる形となる。インフレターゲットの対象である消費者物価指数(CPI)前年比の予想は+2.1%と前回の+2.3%から鈍化見込み。予想前後の数字が出てくると安心感が広がりそう。予想に反して前回並みもしくはそれ以上の数字が出るようだと、一気のポンド買いも。ポンドドルは1.30超えに。
ウィリアムズNY連銀総裁講演
1月18日23:05
☆☆☆
 パウエルFRB議長による「辛抱強くなれる」発言以降、今年のFRBの利上げ期待が後退している。そうした中、FRBの金融政策の実務を担当するNY連銀のウィリアムズ総裁が18日にニュージャージー州銀行協会のフォーラムで講演を行う。米経済の見通しの金融政策という市場に密接にかかわるテーマでの講演で、質疑応答時間もあることから、市場の注目を集めている。パウエル議長に続いてFRB内で注目度の高いウィリアムズ総裁が利上げに慎重姿勢を示すと、ドル売りの動きが広がる可能性。ドル円は107円台を試すとみられる。

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