2019年02月18日号

(2019年02月11日~2019年02月15日)

先週の為替相場

ドル高円安期待もレンジ取引中心に 

 2月11日からの週は、ドル高が優勢な展開となったが、週末にかけて調整が入った。

 ドル円は週明け11日の海外市場で節目と見られた110円ちょうど近辺をしっかりと上に抜ける展開に。

 その後もドル高円安の流れが続き、14日には111円台に乗せる動きを見せた。

 しかし、14日の米小売売上高が予想を大きく下回る大幅な前月比減少を記録した。これにより、それまでのドル買いに対する調整が強まる展開に。さらに同日のNY市場夕方に、トランプ大統領は超党派議会で合意した予算案に署名したうえで、非常事態宣言(用語説明1)を実施と報じられたことなども重石となった。

 ユーロドルは振幅。ドル高の流れの中で週前半に1.12台半ばトライも、米中通商交渉の進展を期待したクロス円の買いに、ユーロ円が大きく買われたこともあり、1.1340台まで回復する展開に。ユーロ円は124円台前半から125円台半ば超えまで買い進まれた。

 もっとも、こうした買いは続かず、ドル円が111円台に乗せるなどドル全面高基調が強まった14日には、週前半の安値を割り込んで1.12台半ば割れまで。その後も振幅を交えながら、15日には1.1230台まで値を落とす場面が見られた。

 ポンドはやや軟調地合いも、週末にかけて買い戻しが入った。

 週明け11日に発表された英第4四半期GDPや鉱工業生産が予想を下回る数字となり、ポンドは週前半から軟調地合いに。

 その後はポンドドルで買い戻しが入る場面も見られたが、英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる状況が冴えないこともあって、総じて頭の重い展開に。

 英議会はメイ首相の離脱修正案を否決。法的な拘束力の無い採決であったが、この否決によってEUとの再交渉の中で、交渉後の協定案が英議会を通らないとの懸念につながるという思惑から、ポンドの売り材料に。

 もっとも週末を前に15日の市場ではポンドの買い戻しが優勢に。英小売売上高の力強い数字を受けてポンド買いに、ドル高調整でのドル売りが加わり、ポンドドルは1.29ちょうど手前まで。

 その他目立ったのはNZドルの動き。政策金利の据え置きを事前の見通しどおり発表した13日のNZ中銀金融政策理事会は、利上げの時期についての見通しを2021年第1四半期まで先送り。19年、20年の金利据え置き見通しを示した。市場では先日の豪中銀同様に利下げの可能性を示すとの期待が広がっていたこともあり、一気にNZドル買いに。対米ドルで0.67台前半から0.68台半ばを付けた。その後は振幅も週末にかけて高値を更新。

今週の見通し

 ドル高円安基調の継続が期待される。

 ドル円は110円台でのレンジ取引を中心に、再び111円台への上昇をうかがう展開が見込まれる。

 最大の注目材料である米中通商協議について、先週の北京での協議後に両国が公式声明を出さなかったことで、警戒感が出ているが、その後の関係者筋報道などから前向きな進展が期待されている。今週、米国で同じメンバーによる協議再開が見込まれており、3月1日の期限に向けて前向きな動きが期待されるところ。

 少なくとも3月1日の期限終了後すぐに米国が対中製品の関税率を引き上げるなどの状況に陥る可能性は低いとみられており、市場の警戒感が後退している。これはドル高円安の材料となる。

 先週末に発表されたトランプ大統領の国境の壁建設に伴う非常事態宣言については、市場の反応は限定的。実体経済への影響の判断が難しく、様子見。民主党が主導する下院司法委員会で憲法および法定上の問題を提起しており、今後の動向を見極める方向に。

 ドル円は110円台でのレンジ取引を中心としつつ、上値を試す展開か。ターゲットは111円台半ば。

 その他注目材料としては、経営危機が報じられている南ア国営電力会社エスコム(用語説明2)をめぐる状況。テコ入れを発表している南ア政府は、20日の南ア予算案発表時に支援の詳細を明らかにする予定。財政赤字問題が深刻な南ア政府が、日本円にして3兆円以上の負債を抱える同社をどこまで支援できるのか。中途半端な対応で市場に失望感が生じると南アランド売りも。

用語の解説

非常事態宣言 米国の予算は議会によって決められることが米憲法で規定されており、大統領といえど自由に予算を執行することは出来ない。しかし、1976年に成立した国家非常事態法により、大統領は非常事態宣言を行うことによって、議会採決を経ずに国家予算の使途を決めることが出来る。議会は非常事態宣言を不承認とする権限を有しているが、大統領は拒否権の発動で、非常事態宣言の不承認を無効化することが可能となる。米国の法律上、非常事態が何を指すのかが定義されていないため、宣言に際しては大統領の裁量が大きくなっている。非常事態の宣言自体は珍しいものではなく、2000年代以降では2001年の同時多発テロ直後や、2009年の豚インフルエンザの流行などに際して実施されている。トランプ政権下でも昨年11月のニカラグアでの反政府デモ弾圧に際して、関係者の米国内での資産を凍結するために実施するなど、3件の非常事態宣言を実施している。ただ、予算問題に絡んでの宣言実施は異例。
エスコム ESKOM、南アフリカの国営電力会社。南アの電力の9割以上を供給している。前身となる電力供給委員会が1923年に設立され、2002年に現在のエスコムとなった。南ア国内で多くの産出がある石炭での火力発電を中心としている。ズマ前大統領による電気料金の低価格路線をうけて、経営が悪化。設備投資資金を確保できなかったこともあり、ここ数年大規模な停電を繰り返し、南ア経済のリスク要因となっている。今月11日に発電機7基が停止するなど、状況が深刻化している。

今週の注目指標

南ア予算演説 2月20日21:00
☆☆☆
 南アフリカのムボウェニ財務相が20日に予算演説を行う。南ア政府はリーマンショック以降財政赤字拡大が続いており、赤字削減が求められているが、昨年の中期経済見通しでは赤字見通しが下方修正されるなど、事態は厳しい。今回の予算演説で赤字縮小への動きを示せるかどうかが重要視されている。また、今回に予算演説では、今月7日に行われたラマポーザ大統領の施政方針演説で示された、国営電力会社エスコムの事業3分割化(発電、送電、配電)を含む政府支援の詳細が示される見込み。同社の経営再建が難航すると、南アの産業全体の懸念につながりランド売りが広がる可能性。展開次第ではランド円が今月の安値である7円75銭近辺を割りこむ展開も。
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録
2月21日04:00
☆☆☆
 1月29日、30日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が公表される。このFOMCではそれまでの声明で見られた「段階的な追加利上げが正当化される」との文言を削除。年内の利上げについて「忍耐強くある」との姿勢を示した。これにより12月のFOMCでのドットプロットで示された年内2回の追加利上げ見通しが後退。年内据え置きもしくは利下げとの見通しが広がった。また、バランスシートの正常化について別枠で声明を用意し、正常化の詳細を修正する用意があると示すなど、今後の緩和姿勢強化を示唆した。こうした姿勢の変化がどのような議論の下で生じたのかなどが注目ポイント。年内利下げ期待が広がるようだと、ドル売りが強まる可能性。ドル円は110円割れも意識される。
米中通商協議
☆☆☆
 2月14日、15日に北京で行われた米中通商協議。米国からはライトハイザーUSTR代表、ムニューシン財務長官が出席、中国側からは劉鶴副首相を代表とする閣僚級での協議となった。協議終了後、両国とも公式コメントを出さず、協議の難航が懸念されたが、今週ワシントンに同じメンバーが集まり協議を再開することが報じられた。週末にライトハイザー代表らから協議の進展について説明を受けたトランプ大統領は、前向きなコメントを行っており、今週の協議の進展が期待されている。具体的な日時はまだ発表されていない。両国間での合意ができないまでも、3月1日の期限延長が決まり、3月2日以降の米国による対中関税を引き上げが回避されるとドル買いに。ドル円は111円台にしっかりと乗せる可能性もある。

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