2019年03月04日号
先週の為替相場
ドル円は一時112円台へ
2月25日からの週は、週の後半にかけてドル高円安基調が加速し、ドル円が今年に入って初めて112円台を付けるなど、上昇が目立つ展開となった。
前半はそれまで続いた110円台後半を中心とした推移が続いた。週の半ばにはインドとパキスタンの軍事的衝突の影響でリスク回避の円高の動きが広がり、110円台前半を付ける場面も見られた。しかし、下がったところではドル買いが出る流れになった。
米中通商協議の進展期待などがドル円を支える格好でもみ合いが続くと、週の後半にかけて円安が進行。米債利回りの上昇や、英国のEU離脱協議に関する英国内での合意への期待感によるポンド円の上昇などが支えに。
28日に発表された米第4四半期GDPの好結果がきっかけとなり111円台へしっかりと上昇すると、週末にかけてはドル高円安の動きが鮮明となった。
3月中に米中通商協議について両国首脳が合意文書に署名する方向で調整などの報道がドル買い円売りの流れを支えた。
米債利回りの上昇傾向などもドルの支えとなる中、米ISM製造業景気指数の2016年11月以来の弱い結果など、ドル売り材料が出る場面でも押し目は限定的なものにとどまり、地合いの強さが意識される展開。1日のNY市場で112円台を一時付ける動きとなった。
ポンドは堅調な動きを見せた。3月28日のEU離脱期限について、3月12日までに英議会で合意が出来なかった場合に、期限延長に動くとの方針が示されていることで、リスク警戒の動きが後退。そうした中、強硬派の議員の中から柔軟な姿勢が見え始めたことで、状況によっては3月中に合意。もし合意出来なくても、延長の目途とみられる6月末までには合意との見通しが広がっており、ポンド買いの流れに。ポンドドルは先週初めの1.30台半ばから1.33台半ばへ。ポンド円は144円台から148円台まで上昇する展開となっている。
今週の見通し
ドル円の上昇基調に期待感。
ドル円は112円台を付けるなど、しっかりの展開となっている。
週末に報じられたトランプ大統領による「強いドル(用語説明1)は望ましいが、強すぎるドルは望ましくない」との発言に対しても、ドル売りの動きは限定的なものにとどまっており、ドル高基調が優勢に。
これまでの110円台を中心としたレンジが上にしっかりと切り上がったところで、さらなるドル買いには慎重な姿勢も見られる。しかし、下がったところではすぐに買いが入る流れとなっており、地合いはまだ上方向。
8日の米雇用統計(2月分)は、前回1月分の非農業部門雇用者数が強かった分、落ち着いた数字が見込まれているが、米労働市場の堅調な状況は維持するとみられており、ドル高基調に寄与しそう。
市場の注目は米中通商協議の進展にかかっているが、5日から中国で全国人民代表大会(全人代・用語説明2)が開催されることもあり、どこまで話が進むかは微妙なところ。全人代で米中関係についての言及や、焦点となっている知的財産保護強化や技術移転の問題に関連する外商投資法案の採決が見込まれていることもあり、要人発言には要注目。基本的には前向きな進展をアピールしてくるとみられ、ドル高円安の材料になりそう。
ドル円は112円台の売りをこなしながら上値をトライする展開に。中長期的なターゲットは114円台半ば。その手前113円近辺を付けることが出来るかどうかが今週のターゲットか。
今週は豪州、南ア、カナダなどの政策金利発表が予定されているが、いずれも現状維持の見込み。声明などに注目が集まり、当該通貨の変動材料として意識されるが、ドル円などへの波及は限定的か。
用語の解説
強いドル | 1995年のクリントン政権で当時のルービン財務長官が最初に提唱したといわれる考え方。強いドルは米経済の成長を反映しているものという考え方の下で、海外からの資金流入や、米国内の購買力向上などをもたらす強いドルが米国の国益であるという姿勢。米国の伝統的な考え方となっており、その後の政権でも同姿勢は継続されているが、トランプ大統領は交易条件としてドル高が行き過ぎると不利ということもあり、強すぎるドルに対して牽制を何度か行っている。 |
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全人代 | 全国人民代表大会。中国の憲法上、国家の最高権力機関及び立法機関として位置づけられている大会。国家主席や、国務院、国家中央軍事委員会、最高人民法院などの構成員は全人代によって選出されることとなっている。5年を1期として実施され、現在は2018年3月から始まった第13期にあたっている。毎年1回3月を目途に行われる。 |
今週の注目指標
全人代開幕 3月5日 ☆☆☆ | 中国の全国人民代表会議が5日から15日までの11日間の日程で北京の人民大会堂で実施される。開幕日である5日には李克強首相が1年間の政策方針を示す政治活動報告を実施する。注目は今年の経済成長率目標。昨年掲げられた目標は6.5%前後となっており、実際の6.6%成長と合致。とはいえ、水準的には28年ぶりの低水準となっており、景気のてこ入れ策などを含めて、どのような姿勢が示されるかが注目されるところ。成長率目標の水準としては6%台前半もしくは、6.0%から6.5%などのようにある程度幅を持たせたものとなる可能性が指摘されている。なお、最終日である15日には、習近平国家主席による挨拶のほか、知的財産保護強化や強制的な技術移転の禁止などを盛り込んだ外商投資法案の採決が行われる予定。経済成長率見通しが慎重なものとなった場合、豪ドルなどの売り材料に。豪ドル円は79円をしっかり割り込む動きも。 |
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ECB理事会 3月7日21:45 ☆☆☆ | ECB理事会の結果発表が7日に行われる。政策金利は現状維持の見通しで一致している。注目は新たなTLTRO(貸出条件付き長期資金供給オペ)に関する内容。2月下旬に公表された1月のECB理事会議事要旨で、スタッフにTLTROの分析を指示したことが示されたほか、クーレECB専務理事など複数の関係者から同施策に関する言及があった。今回の理事会での実施決定には至らない場合でも、理事会後のドラギ総裁の会見などで今後の実施可能性についての言及が見られると、ユーロ売りにつながる可能性。ユーロドルは1.13割れも。 |
米雇用統計 3月8日22:30 ☆☆☆ | 2月の米雇用統計が発表される。前回、事前予想の前月比+16.5万人をはるかに上回る同+30.4万人を記録した非農業部門雇用者数は、今回+18.5万人と比較的落ち着いた数字が見込まれている。とはいえ、強かった前回の数字との比較でこの伸びが見込まれている形で、予想通りの数字でも米雇用市場の堅調さへの印象は継続か。失業率は前回の4.0%から3.9%に改善見込み、平均時給は前回の前月比+0.1%から同+0.3%に強まる見込みと、全体的に強めの数字が見込まれている。予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、ドル買いに対する買い安心感につながり、ドル円は113円に向けた動きを強める可能性も。 |
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