2019年03月11日号

(2019年03月04日~2019年03月08日)

先週の為替相場

ドル円は週前半の112円台から、週後半に値を落とす

 3月4日からの週は、週前半の112円台を付けるドル高円安の動きから、110円台までの調整が入るなど、週の後半にかけてドル安円高の動きが見られる展開になった。

 その前の週の後半、2月末から3月1日にかけてドル高円安基調が加速し、ドル円が今年に入って初めて112円台を付ける動きを受けて、週明け4日は高値圏でのスタート。米中通商協議の合意期待などがドルを支える展開が続いた。

 5日の米ISM非製造業景気指数の予想以上の好結果などもあり、ドル円は一時112円15銭近辺と高値を更新する展開が見られた。

 もっとも112円台からのドル買いには慎重な姿勢が見られ、その後はいったんもみ合いが続く展開。その後、週の後半にかけてリスク警戒感などからドル安円高の動きが強まる格好となった。

 ECB理事会での成長率見通しの大幅な引き下げが世界的な景気鈍化懸念に結びついたことや、金曜日の米雇用統計での非農業部門雇用者数の予想をはるかに下回る弱い伸びなどがドル売りを誘い、一時110円80銭近辺までになった。

 110円台では買いが入ったこともあり、111円台を回復して週の取引を終えている。

 欧州通貨は全般に軟調。

 ユーロはECB理事会での成長見通し引き下げが重石となった。ECBは今年の成長率を従来の1.7%から1.1%に大きく下方修正。注目されたTLTRO(用語説明1)については9月からの実施を発表した。理事会後のドラギ総裁会見ではユーロ圏経済を取り巻くリスクは依然として成長を下振れさせる方向と、慎重姿勢を強調し、ユーロ売りに。

 ユーロドルは1.13前後でのもみ合いから一気に1.11台後半へ。その後の買い戻しも1.12台前半までと頭の重い展開となった。

 英国のEU離脱交渉が難航したことでポンドが売られる場面も見られた。12日にEU離脱協定の英下院での二度目の本採決を控えているが、具体的な修正合意に至らず。合意なき離脱を避ける方向も、期限の延長を求めたとしても状況の改善が見込めないという見通しもあり、ポンドは売りが強まった。

 ポンドドルは週前半の1.32台半ばから1.30割れまで値を落とす展開に。週後半の円高進行もあり、ポンド円は週前半の148円近辺から144円台前半まで値を落としている。

今週の見通し

 英国のEU離脱問題や米中通商交渉の状況などへの警戒感が、リスク警戒を誘い、ドル円の上値を抑える展開も、下がったところではドル買いの動きも。

 英国のEU離脱問題は、3月29日の期限を前に大きな山場を迎えている。12日火曜日に英下院でのEU離脱協定に関する二度目の本採決。否決された場合、13日に合意なき離脱の是非をめぐる採決、否決された場合14日にEUに対して離脱期限の延長を求める採決と、重要な採決予定が並んでいる。

 EU離脱問題で焦点となった北アイルランドのバックストップ機能についてEUとの意見がまとまっておらず、今回の採決は1月に圧倒的多数で否決された協定案と同様のものとなる見込み。一方でフランスなどが延長要求に対して反対の姿勢を示すなど、期限延長交渉がうまくいかない可能性もあり、難しい局面に。

 最悪の展開といわれた合意なき離脱がなし崩しに決まる可能性も否定できず、ポンドは売り圧力を浴びている。

 離脱期限の延長の是非などは21日、22日のEUサミットが舞台となるために今週のうちに大きく崩れる可能性は低いが、ポンド売りからのポンド円の下げがドル円などにも重石となる可能性がある。

 米中の通商協議についても、ここにきてやや警戒感が出ている。全国人民代表会議(全人代)が開催中で中国側の動きが目立っていないものの、交渉の進展が停滞している様子。週末には米メディアが習近平国家主席の訪米がキャンセルと報じるなど、3月中の合意に対する懸念が広がる中で、ドル円の頭を抑えている。

 具体的な動きは15日の全人代閉幕後とみられることから、こちらも積極的なドル売りにつながる可能性は低いが、ドル円の頭を抑える可能性もある。

 11日の米予算教書(用語説明2)での国境の壁予算の要求を受けて、大統領と議会との対立姿勢が印象づけられることも、ドル円の重石か。

 ドル円は111円台前半での推移を中心に、110円台後半を試す場面もありそう。

 もっとも先週末の米雇用統計後の売りからすぐに戻したように、110円台では買い意欲が継続中。今週も110円台での買いがしっかり入り、下値安定感が出てくると、再び上をトライする場面も。

用語の解説

TLTRO Targeted Longer Term Refinancing Operation。貸出上限付き長期資金供給オペのこと。ECBが実施するユーロ圏の銀行に対する超低金利の資金供給。企業への融資などを行う場合に超低金利でのECBからの資金借り入れが可能になるというもので、前回2016年から17年にかけて行われたTLTROでは中銀預金金利である-0.4%で4年間の借り入れが可能となった。
 今年6月に前回のTLTROの第一弾(前回は2016年6月、9月、12月、2017年3月に実施)分の資金の返済期限が1年を割り込み、バーゼル規制下での長期資金としての組み入れ比率が低下するため、第3弾の実施が見込まれていた。
米予算教書 米国の大統領が議会に提出する三大教書の一つ。一般教書と違い大統領自身が議会に出席することはなく書簡のみの提出。来年度(今回の場合2019年10月から始まる2020年会計年度)の予算について、大統領の要求を議会に示すもの。米国では予算は法律として議会に決定権がある。議会に出席できない大統領はこの予算教書で議会に対して自身の要求を説明する形となる。

今週の注目指標

米予算教書
3月11日
☆☆☆
 トランプ大統領は2020年会計年度の予算教書を11日に提出する。2019年度予算でも紛糾した国境の壁に関する予算について、86億ドル(約9600億円)の追加予算を求めるとみられている。国防費については拡大見込みも、非国防費は平均で5%の削減を提案。下院で多数派を占める民主党との対立が不可避の状況となっている。10月の予算成立期限までには時間があるものの、大統領と議会の対立構造が強まると、ドル売りの材料となる。111円台前半でドル円の頭を抑える材料となる可能性。
米消費者物価指数(CPI・2月)
3月12日21:30
☆☆☆
 先週末の米雇用統計での非農業部門雇用者数が相当な弱さとなった後を受けて、FRBのもう一つの責務である物価の安定についての状況も注目を集めそう。米国のインフレターゲットの対象はPCEデフレータであってCPIではないが、ただでさえCPIよりも発表の遅いPCEデフレータが、昨年末から年始にかけての連邦政府機関の一部閉鎖の影響で商務省の機能が一時まひしていたことで発表がさらに遅れており、すでに予算を確保していた労働省の管轄でスケジュール通り発表されているCPIの重要度が増している。
 予想は総合、コアの前年比がともに前回と同水準。予想通りの数字が出てくると相場への影響は限定的か。予想を下回る数字が出た場合、雇用統計の弱さと合わせてドル売りの材料に。ドル円が110円台をトライするきっかけとなる可能性もある。
英下院でのEU離脱協定二回目の本採決
3月12日
☆☆☆
 英国のEU離脱協定に関する英下院での二度目の本採決が12日に行われる。1月の採決で圧倒的多数での否決となった主要因であるアイルランドと英領北アイルランドの国境を巡るバックストップ機能について、前回の採決からのEUとの交渉で、EU側からの譲歩を全く引き出せておらず、前回採決された協定案とほぼ同内容での再採決となる見込み。否決の可能性が高く、その場合13日に合意なき離脱を認めるかどうかの採決が実施され、それも否決されると14日にEUに対して期限の延長を求めるかどうかの採決が実施される。期限の延長要求は可決されそうだが、EU側が認めるかどうかは別問題。認めた場合でも課徴金の追加などのペナルティが課される可能性があるほか、最大6月までといわれる延長期間での合意ができるのかも微妙で、合意なき離脱の可能性が高まってきている。合意なき離脱は大きなポンド売り材料となるだけに、ポンドは頭の重い展開になる。こうした場合、ポンド円は140円割れを意識する可能性もある。

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