2019年03月18日号

(2019年03月11日~2019年03月15日)

先週の為替相場

EU離脱を巡りポンド大荒れ

 3月11日からの週、ドル円は週の半ばまで111円台前半の狭いレンジでの推移が続いた後、111円台後半に若干ドル高円安が進む展開となった。

 中国の全国人民代表大会(全人代)が15日まで行われる中で、米中通商交渉に関する進展が目立たず、進展期待で下値はしっかりも、上値をトライするだけの勢いが出なかった。

 ボーイング737Max(用語説明1)がわずか5ヵ月で二度目の墜落事故を起こし、各国で運行停止措置などが進む中で、同社の株安からダウが大きく下げるなどの場面も見られたが、影響は限定的に。

 もっともリスク選好での株高が進む場面でもドル高円安の動きは目立っておらず。ドル円の値動きは限定的なものにとどまった。

 3月8日の米雇用統計での非農業部門雇用者数のかなり弱い数字を受けてドル売り円買いが入った局面でも110円台後半ではドル買い円売りが入るなど、下がったところでのドル買い意欲が継続。下値しっかり感が出ているものの、上値をさらに追うだけの勢いにかけるという展開に。

 週の後半にかけては英国のEU離脱に関する議会での連日の採決が一服したこともあり、リスク選好でのドル買い円売りが広がったが、111円90銭近辺までと、大台超えを果たせていない。

 ポンドは大荒れの展開となった。12日に行われたEU離脱協定に関する2度目の本採決は、149票差という大差で否決。1月の採決での230票差という歴史的な差での否決に比べると差が縮まったものの、合意への動きが見えにくい結果となった。

 先月末ごろから今回の採決を前にした警戒感にポンド売りが進み、週明け11日午前には1.2960近辺まで値を落とす場面が見られた。ポンド円も143円70銭台まで値を落としていた。

 その後、採決前日の11日夜(日本時間12日早朝)になって、法的拘束力のある形での修正案でメイ首相とユンケル欧州委員長が合意と報じられ、いったんは一気のポンド高に。対ドルで1.3290近く、対円で147円70銭台までの大幅な上昇を見せる動きに。

 しかし、修正案を確認したコックス英法務長官(用語説明2)が英国の法的リスクが残ることは変わらずと示したことで、一転してのポンド売りに。結局、上記記載通り大差での否決となり売りが広がる展開となった。

 翌日13日には、合意なきEU離脱を拒否するかどうかの採決が実施された。こちらは49票差で拒否することを可決。票差がかなり縮まっているように、合意なき離脱の可能性が残っていたこともあり、決定後はポンドの買い戻しに。ポンドドルは先月末からの下落分をすべて解消しての1.3380近辺まで。ポンド円も同様に148円80銭台までの大きな上昇に。

 14日にはEUに対して離脱期限の延期を求めるかどうかの採決が行われ、延期を求めることが決定。こちらは想定内ということで影響は限定的。

 この採決の中で、メイ首相は20日までに3度目の本採決を行うと発言。合意出来た場合には21日、22日の欧州首脳会合(EUサミット)で6月までの延期を要請、合意できなかった場合はより長期の延期を要請する姿勢を示した。ただ、この場合EUサミットで延期が認められるかどうかが不透明で、状況によっては29日で時間切れとなっての合意なき離脱という可能性も否定できない状況となっている。

今週の見通し

 19日、20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、先月のパウエルFRB議長による議会証言の中で、早期に発表する見通しが示された米FRBのバランスシートの正常化の早期終了について言及があると見込まれている。

 当初はリーマンショック前の水準である対GDP比6%前後までの調整継続が予定されていたが、直近の世界経済の減速懸念などもあり、年内で終了し、対GDP比で16%-17%前後のバランスシートを維持する形で、量的緩和効果を残す方針が期待されている。

 また、今回のFOMCで示されるドットプロットに対して注目が集まっている。注目が集まっている内容は、年8回のFOMCのうち、3月、6月、9月、12月と4回のFOMCで示される参加メンバーによる経済成長・雇用・物価・金利水準などの見通しを示すプロジェクションマテリアルの中において、各人の年末時点での政策金利水準の見通しをドットで示し、全体の予想だけでなく、その水準に何名の予想があるのかなどを示したドットプロットである。前回12月の時点では年内2回の利上げが中央値となっていたが、その後年内金利据え置きの見通しが一般的となり、金利市場などでは年内利下げの見通しが広がる中で、どのように修正されているのかが注目される。利下げ見通しを示すメンバーが多いようだと、一気のドル売りもありそう。

 バランスシートの早期終了、ドットプロットの下方修正ともにドル売り材料となる可能性が高く、ドル円は110円台を試す可能性も。ただ、ある程度は予想の範囲内だけに、110円割れまでは難しいか。

用語の解説

ボーイング737Max 米ボーイング社の小型ジェット旅客機737シリーズの第4世代(最新鋭)旅客機。2016年1月に初飛行、2017年5月に運用開始。エアバスのA320Neoが対抗機となる。2017年までに74機が納入され、4000機以上の受注を獲得している。2018年10月29日にライオンエア610便が墜落。それから5ヵ月経たない2019年3月10日にエチオペア航空302便が墜落した。この二件の事故を受けて、3月11日に中国、インドネシア、モンゴルが、12日にはシンガポール、豪州などが運航停止を命令。同日EUも運航停止を発表したこともあり、当初は運航停止措置を取らないとしていた米国も大統領令で飛行禁止を命じ、3月14日にカナダへ着陸した便を最後に全機が運用を停止している。
コックス法務長官 2005年から英国の下院議員を務める政治家。保守党に所属。法廷弁護士(バリスタ―)でもあり、英国の国会議員の中では法律の専門家として活躍している(英国では法廷弁護士(バリスタ―)と事務弁護士(ソリシター)で職務が分かれている)。文化大臣に転じたライト氏の後任として2018年7月から法務長官となっている。なお、法務長官は閣僚ではないが、閣議には参加する(法務関係の閣僚は大法官)。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
3月21日03:00
☆☆☆
 19日、20日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。政策金利は現状維持の見込み。前回調整の修正についてオープンと声明で示したバランスシートの調整については、年内の縮小終了が発表されると見込まれている。FOMC参加メンバーによる金利見通しは前回の年内2回の利上げ観測から、年内据え置きまで下方修正される見込み。経済成長見通しなども引き下げられる可能性も。先行きの慎重な姿勢が目立つようだとドル売りにつながるとみられる。ドル円は110円台への下落が意識される展開に。
豪雇用統計(3月)
3月21日09:30
☆☆☆
 2月の豪雇用統計が21日に発表される。前回雇用者数は+3.91万人と力強い増加を示し、目先の利下げ期待が後退する結果となった。もっとも、来月の豪中銀金融政策理事会での利下げを見越す専門家が一部いるように、市場での利下げ期待は根強い。今回の結果次第では今年後半の利下げを織り込む動きが進む可能性がある。この場合、豪ドルは大きく売られると見込まれる。対米ドルで0.70割れを意識する展開に。
EUサミット
3月21日・22日
☆☆☆
 EUの主要意思決定機関。EU加盟28カ国の首脳(英国が外れるため27カ国)とトゥスクEU大統領、EUの行政機関である欧州委員会のユンケル委員長が出席する。英国のEU離脱期限の延期について、このサミットで協議を行う予定となっている。全会一致が原則であり、一国でも反対票を投じた場合、延期は認められないことになる。メイ首相はEUサミット前日の20日までにEUと合意し、3月12日にいったん否決されたEU離脱協定の修正案について、再度採決して合意を目指す意向を示している。
 20日までに英議会での合意が出来ず、EUサミットで期限の延期が認められない場合、3月29日までの合意は現実的でないことから、時間切れでの合意なき離脱のリスクが一気に高まり、ポンドは値を崩す可能性。対ドルで1.30割れも意識される。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。