2019年03月25日号

(2019年03月18日~2019年03月22日)

先週の為替相場

FOMC受けてドル安に

 3月18日からの週、ドル円は週の後半にかけて大きく値を崩した。

 注目された米連邦公開市場委員会(FOMC)までは111円台半ば前後での揉み合いが続いた。

 事前の見通し通り政策金利の据え置きを決めたFOMCでは、年内終了が示されると見られたバランスシートの調整終了について、5月からの減額と、9月末での終了が示されるより緩和的な対応となった。

 政策金利の見通しについては、年内据え置きの見通しが11名のメンバーによって示され、利上げ期待が後退。経済成長の見通しの引き下げや、声明での景気の現状認識の下方修正も示されるなど、相当に慎重なものとなった。

 この動きを受けてドル円は一気に110円台へ。

 その後も米債利回りの低下が止まらずドル売りが続く中で、週末には欧州や米国のPMI(購買担当者景気指数)が予想を下回るものとなり、リスク警戒からの円買いが強まる格好でドル円は節目の110円を割り込み、109円70銭台まで値を落とす場面が見られた。

 米債利回りはベンチマークとなる10年債利回りが節目の2.50%を割り込み、週末には2.416%と約1年2カ月ぶりの低水準を記録。2007年以来となる3カ月物との逆イールド(用語説明1)が発生した。

 EU離脱問題が大詰めを迎えるポンドは不安定な展開に。メイ首相は21日開催の欧州サミットに対して、3月29日となっているEU離脱期限を6月30日まで延期するように要請。EU側は拒否したこともあり、ポンドは一時1.3000に迫る動きに。

 もっとも、英国の合意なきEU離脱はEU側にとっても大きなリスク。時間切れをさけるために3月25日からの週での英下院議会での合意を条件に5月22日までの延期を認めるとともに、合意できない場合でも4月12日までの延期を認めることを決定し、合意なき離脱懸念が先送りされる格好に。

 ポンドはこうした動きを受けて1.32台を回復する展開となっている。

今週の見通し

 リスク警戒感が強い展開が続きそう。

 ドル円は節目の110円で動きを止められず、下方向の意識が強い展開に。

 世界的な景気減速の懸念が強く、米長期債に投資資金が集まるいわゆる質への逃避が目立つ状況。3カ月物金利と10年国債利回りの逆イールドが前回起きたのはサブプライムショック(用語説明2)渦中の2007年。金融危機が広がる中で、さらなる混乱が見込まれた時期であった(実際にそのあと2008年のリーマンショックにつながっている)。同様の混乱が起きるかどうかは定かではないが、逆イールドは将来の景気減速感が広がる局面で起きる現象だけに、警戒感が強まりそう。

 ドル円は108円近辺が意識される展開か。

 110円台半ばをしっかりと回復すると一服感が出るが、112円手前には売りが入ってきているとみられ、ドル円は頭の重い展開が続きそう。

 ポンドの不安定さも警戒要因。米金融大手ゴールドマンサックスが合意なき離脱リスクの拡大についてレポートしているように、英国内で意見がまとまらない状況が長引き、結局時間切れでの合意なき離脱という可能性が否定できないだけに、要注意の状況となりそう。

 ポンドドルの1.3000を次にしっかりと割り込むと、下方向に大きく崩れる可能性も。ターゲットは1.2800。ポンド円のターゲットは141円。ポンド円が崩れる中で、ドル円も下方向への圧力に。

用語の解説

逆イールド 短期と長期の金利を比べた場合、満期までの債券価格の不確実性の分だけ、長期にリスクプレミアムが乗ることもあり、長期の金利の方が高いことが一般的。期間ごとの利回りを表した曲線であるイールドカーブでみると、右肩上がりの曲線となる。しかし、将来的な景気鈍化が見込まれ、利下げ見通しが強い場合、長期の金利の方が短期の金利よりも低いことがありうる。この状況を逆イールドと呼ぶ。
サブプライムショック 米国の住宅ローンの借り手の内、優良顧客(プライム層)よりも下位にあるサブプライム層に向けた住宅ローンであるサブプライムローンの返済が全般に滞り、同ローンを証券化したMBSなどの市場が崩壊。これらの証券を保有していた金融機関や投資ファンドなどに大きな影響が出る事態が生じた。これにより世界的な金融収縮が起こり、有力投資銀行であったリーマンブラザーズの破綻(リーマンショック)を巻き起こす元となった。

今週の注目指標

米貿易収支
3月27日21:30
☆☆
 1月の米貿易収支が発表される。米中の貿易戦争をはじめ、通商問題を各国と抱える米国。貿易赤字削減を公約としているトランプ大統領であるが、現状では赤字が拡大する格好となっている。2018年の米国の貿易赤字は12年ぶりに過去最大を更新。前回12月の貿易赤字も同月としては過去最大となった。1990年代は為替市場に大きな影響を与えた貿易統計であるが、近年は注目度が下がっている。しかしここにきて通商問題が世界的な重要な材料となる中で、注目度が高まっている。12月からは改善するとみられている米貿易赤字が、前回以上の赤字額を示すようだと、ドル売りが強まる可能性も。ドル円は108円台に向けた動きに。
ウィリアムズNY連銀総裁 講演
3月29日02:15
☆☆☆
 今週は米国のFRB関係者の発言が多数予定されている。特に28日はクォールズ副議長、クラリダ副議長、ボウマン理事、ウィリアムズNY連銀総裁などが講演予定。3月のFOMCで年内の据え置き見通しが示されたほか、市場が期待した以上のバランスシートの調整の早期終了姿勢を示すなど、緩和的な姿勢を強めているFRB。各要人がどのような姿勢でこうした状況の変化を表現するのかなどが注目される。特にバランスシート調整の実務の責任者でもあるウィリアムズNY連銀総裁(FOMC副委員長)の発言には要注目。慎重姿勢が強調されるようだと、年内の利下げ期待が広がり、ドル売りにつながる可能性も。この場合ドル円は108円をターゲットとしそう。
米中閣僚級協議
3月28日・29日
☆☆☆
 米国のライトハイザーUSTR代表とムニューシン財務長官が中国を訪問し、28日、29日に劉鶴副首相らと米中通商協議閣僚級会談を行う。さらに4月初めに劉鶴副首相が訪米し交渉を続ける見通し。米中の通商協議に関しては、知的財産権の問題や、合意内容の履行の確認についての問題などで両国の間で溝があるとみられ、合意への期待は強いものの、まだ至っていない。4月中ともいわれる米中首脳会談での調印に向けた調整がどこまで進むのかが注目されるところに。合意が近いという印象を与えるとドル買いに。ドル円は110円台にしっかりと戻す展開に。

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