2019年04月01日号
先週の為替相場
一時ドル売りも、その後しっかり
3月25日からの週、週の初めはドル売りが強まる場面が見られたが、その後堅調な動きを見せた。
週の始まりはドル安円高でスタート。前週の欧州PMI(用語説明1)の弱さなどが世界的なリスク警戒の動きにつながり、米長期債に資金が集まる中で、米債が逆イールドとなったことなどがドル売り円買いを誘った。直近安値を割り込んで109円71銭と2月前半以来の安値を付ける展開に。
しかし、そこからはドル買い円売りの動きが優勢となった。独Ifo景況感指数の好結果を受けて欧州経済の鈍化懸念が後退。世界的な株安の動きが一服したことで、ドル買い円売りに。
110円60銭台までいったん買い戻されたドル円は、米10年債利回りが2017年12月以来の低水準である2.338%まで落とすなどの動きを見せる局面でも、110円台を維持し、下値しっかり感が強まった。
米債利回りの低下が一服する中で、ドル円はしっかり。週の後半にかけて米株が堅調な動きを見せたことも、リスク選好での円売りを誘った。週末には111円手前まで買い戻しが入る展開に。
ポンドは不安定な展開に。週の半ばまではメイ英首相がEU離脱協定合意後の辞任を表明するなど、合意に向けた覚悟を見せる中でポンド買いの動きが見られ、週初の1.1350台から1.3260台まで上昇。しかし29日のEU離脱協定採決を前に、警戒感が広がり、ポンド売りに。採決では三度の否決となり、ポンド売りが加速、1.2970台まで下落という流れに。
その他目立ったのはNZドルの売り。27日のNZ中銀金融政策理事会は事前見通し通り政策金利を据え置き。声明では次の動きが利下げの可能性が高いと、これまでの当面据え置きが続いた後利上げという見通しからの転換が見られた。対ドルで0.69近辺での推移から0.6770台まで下落。その後の買い戻しも0.6820台までと限定的なものにとどまっている。
今週の見通し
上値期待が強い展開に。
英国のEU離脱問題に対する懸念が広がっているものの、10日の臨時EUサミット、12日の離脱期限を前にやや手詰まり感。
変わって市場が注目しているのが米中通商摩擦問題。先週の中国での劉鶴中国副首相とライトハイザー米USTR代表、ムニューシン米財務長官らによる米中閣僚級協議に関して、米中双方が前向きに進展したことを報じており、今週の米国での同協議に対する期待感が広がっている。
先週後半110円台を維持したことで下値安心感が広がっていることも大きい。ドル円は111円台後半をターゲットに上値を試す展開となりそう。
今週末の米雇用統計で堅調な数字が見込まれていることも、ドル円を支える材料となりそう。前回は非農業部門雇用者数がわずか2万人の伸びにとどまり、市場を驚かせた同指標。もっとも内訳をみると、建設部門の雇用減少や、レジャーや小売部門での雇用の不振が主要因とみられ、1月末から2月にかけて米国北部を襲った寒波の影響などが考えられるだけに、今回一気に改善するという可能性が高そう。
期待通りの改善を示すと、ドル買い円売り基調がさらに強まる可能性も。
ポンドは不安定な展開が続くか。一部ではEU離脱協定の4度目の採決に踏み切る可能性が意識されているが、過半数の確保は難しいと見られ、4月10日の臨時EUサミット(用語説明2)まで神経質な展開が続きそう。ポンドドルは1.3000をしっかりと割り込んで値を落とす可能性も。
用語の解説
欧州PMI | PMIとはPurchasing Managers' Indexの略。日本語では購買担当者景気指数と呼ぶ。企業の購買担当役員などを対象とした民間のアンケート調査をもとに指標を発表する。米国におけるISM景気指数と同様の指標。欧州でのPMIは民間調査会社MARKITが調査を担当し、発表する。 |
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臨時EUサミット | 英下院が3月29日に行われたEU離脱案を三度否決したことを受けて、欧州連合のトゥスク大統領が4月10日に同問題に関する臨時の欧州首脳会合(EUサミット)の開催を決めたもの。4月12日に迫るEU離脱期限を前に、再延期の可能性などを探るものとなる。 |
今週の注目指標
豪中銀政策金利 4月2日12:30 ☆☆ | 豪中銀の金融政策理事会が開催され、2日に政策金利が発表される。民間部門の信用ひっ迫や都市部の不動産価格の下落などの懸念材料もあり、市場では豪州が年内に利下げに踏み切るという見方が一般的。2月にはロウ豪中銀総裁がインフレの停滞や失業率の悪化が見られると利下げが適切になる可能性と、もう一段の緩和の可能性を示す場面も見られた。もっとも前回の中銀声明でも中立姿勢が維持されており、明らかなハト派姿勢を示すことはなかった。先週NZ中銀金融政策理事会での声明で、今後の利下げの可能性が示されるなど、NZ中銀がハト派姿勢を示してきた中で、豪中銀の声明での姿勢が注目される。ハト派姿勢が見られるようだと豪ドル売りに。豪ドル円は77円台半ばがターゲットとなる。 |
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米中閣僚級通商協議 4月3日 ☆☆☆ | 先週北京で行われた米中閣僚級通商協議は、今週ワシントンで再開される。劉鶴副首相は3日に訪米の見込み。先週の協議は建設的なものとなったと報じられているが、具体的な内容は伝わっていない。トランプ大統領は偉大な取引でなければ合意しないと発言するなど、時間にこだわらない姿勢を示しており、今回の協議で両国が合意に至る可能性は高くない。ただ、今後に向けた前向きな姿勢を強調し、共同声明などを出すことが出来るようだと、リスク警戒感の後退からドル高円安を誘いそう。ドル円は111円台半ば超えから112円に向けた動きが期待されるところ。 |
米雇用統計 4月5日21:30 ☆☆☆ | 先月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想を大きく下回る前月比わずか2万人増にとどまり、堅調維持が見込まれていた米雇用市場に対する警戒感を誘った。もっとも、同指標は月毎のブレが大きい指標であり、今回堅調な伸びを示してくるようだと、懸念は後退しそう。米経済を支える雇用状況の健全さが確認されると、ドル買いの動きにつながると期待される。事前予想は前月比+17.5万人とまずまずの水準。予想前後の数字が出てくると、ドル円のサポート材料に。予想を超えて20万人の大台を超えるような数字が出てくると、前回弱かったことによる懸念を払しょくし、112円に向けた動きを強める可能性も。 |
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