2019年04月08日号
先週の為替相場
ドル円しっかりも値幅限定的
4月1日からの週は、リスク選好の動きがやや優勢となった。ドル円は110円台を付けていた前週末の流れから、週の初めに111円台にしっかりと乗せると、111円台後半まで上値を伸ばす展開となった。
3月31日に発表された中国製造業PMI(用語説明1)が2012年以来の大幅な上昇で、好悪判断の境となる50も超える展開となり、リスク選好ムードに。1日の民間調査会社財新による中国製造業PMIも予想を超える好結果となり、ドル円を支えた。また、1日夜には米ISM製造業景気指数が予想を超える好結果となり、米中の景況感改善がドル円を支える展開に。
3日から5日にかけて行われた米中閣僚級協議に対する期待感もドル円を押し上げた。英紙が同協議でのほとんどの問題で合意と報じたことに加え、米中の要人から前向きな協議進展が伝えられ、合意への期待感が広がった。
ドル円は111円台後半まで上昇して、5日の米雇用統計(3月)を迎えた。前回弱かった非農業部門雇用者数が予想を超える改善を見せたものの、平均時給が予想を下回ったことで、強弱入り混じる結果に。ドル円は111円台後半での振幅にとどまる展開となった。
ユーロドルはもみ合い。先週初めのドル高局面で1.1180台まで値を落としたものの、1.11台での売りには慎重な姿勢も見られ、その後1.12台半ば超えまで回復。欧州非製造業PMI確報値での上方修正や、独10年債利回りのプラス圏への回復などがユーロ買いを誘った。もっとも、頭の重い流れは続いており、その後は1.12台前半でのもみ合いに。
ポンドは不安定な振幅。メイ首相は最大野党労働党(用語説明2)のコービン党首との会談などを行い、超党派での事態打開を目指しているものの、議会でのEU離脱協定案可決に向けた流れは見えず。
4月12日に迫った離脱期限について6月30日までの延期を正式に要請する状況も、EU側は懐疑的な見方を続けており、先行き不透明感が強い。メイ首相が期限の延期を求める姿勢を示した2日の海外市場で買い戻しが入り、翌3日の夕方には1.32手前を付けた。しかし1.32超えを果たせず、その後は調整もあって売りが強まると、週末には1.30を割り込む場面も見られた。
豪ドルは2日の豪中銀金融政策会合後にいったん売りが強まった。政策金利の現状維持は事前見通し通り。声明では家計の弱さなどが指摘され、市場の年内利下げ期待が強まる格好で売りが出た。
翌日の豪小売売上高の好結果や、米中通商協議進展への期待感もあって、その後下げ分を戻してもみ合いに。
今週の見通し
基調はドル高円安も、上値トライにも慎重な動き。
ドル円は111円台でのもみ合いが中心となっている。米中通商協議の進展期待がドル円の支えとなっており、下がったところでは買いが出る流れ。もっとも112円手前の売りに頭を抑えられており、積極的なドル買いにも慎重な姿勢が見られる。
今週も基本的には111円台でのレンジ取引が続くとみられる。流れは依然として上方向。米中通商協議の進展への期待感がより強まるとドル買い円売りが進む可能性も。111円台前半での買い意欲が確認されるともみ合いの中、上値トライのタイミングを計る展開に。
112円をしっかり超えた場合のターゲットは112円80銭近辺か。
ブレグジット関連は10日の欧州首脳会合(EUサミット)待ち。
12日のEU離脱期限までに英国議会が協定案で合意する可能性は小さいが、12日の期限で合意なき離脱に向かうという観測も小さく、10日のEUサミットで何らかの延長案が決まるとみられる。メイ首相は6月30日までの延期を要請しているが、7月からの新しい欧州議会に向けて、5月23日から行われる欧州議員選挙をどう取り扱うのかなどの問題もあり、EU側がそのまま認めるかどうかは不透明。話し合いが難航し、時間切れでの合意なき離脱が決まった場合、一気にポンド売りとなる可能性が高いだけに、EUサミットまでは動きにくい展開。対ドルで1.30台を中心にした推移が見込まれる。
ユーロはECB理事会で利上げを急がない姿勢を示してくるとの観測が、頭を抑える展開に。ドラギ総裁は3月27日の講演で中銀預金金利がマイナス金利となっていることに関する金融機関への悪影響を緩和する姿勢を示した。今回の理事会でマイナス金利適用の段階化などの対応を進め、同時に現行の金利水準を長期にわたり維持する姿勢を示すとの観測が広がっている。現状の緩和姿勢維持はユーロの重石になるとみられ、1.12割れも意識される展開。短期のターゲットは1.1180。しっかりと割り込むと1.10台も。
用語の解説
中国製造業PMI | 中国のPMI(Purchasing Managers' Index:購買担当者景気指数)は、国による公的なものと民間企業調査によるものがある。公的なPMIは中国国家統計局と中国物流購入連合会が共同で調査したもの。民間調査のものは、中国のメディアグループ財新と英国の調査会社HISマークイットが調査したものとなる。ともに50が好悪判断の境目となる。財新のPMIのほうが、調査対象に中小企業が占める割合が高い。国家統計局による製造業PMIが調査対象月の月末。財新製造業PMIが翌月の月初に発表される。なお、非製造業PMIが国家統計局によるものが製造業PMIと同時に、財新によるものが財新製造業PMIの2営業日後に発表される。 |
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英労働党 | 英国の中道左派政党。現与党である保守党と長く二大政党制を形成しており、たびたび政権与党となっている。直近では1994年から2007年のブレア政権、2007年から2010年のブラウン政権で与党となっていた。現在のコービン党首は2015年から党首となっている。EU離脱に関しては関税同盟の維持を主張している。 |
今週の注目指標
ECB理事会政策金利発表 4月10日20:45 ☆☆☆ | ECB理事会の結果が10日に公表される。政策金利は現状維持が確定的。注目はドラギ総裁が直近の講演で示したマイナス金利の欧州金融機関への悪影響について、どのような具体策を示してくるか。欧州金融機関の負担軽減が示されることで、長期の現行政策維持が可能となるとの見方が広がっている。発表後のドラギ総裁の会見などでユーロ圏経済に対して慎重な見方が強調されるようだと、ユーロ売りの圧力が強まり、1.11台へ値を落とす可能性も。 |
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米消費者物価指数(CPI・3月) 4月10日21:30 ☆☆☆ | 3月の米消費者物価指数(CPI)が10日に発表される。米国の金融政策での指針となる物価統計はPCEデフレータであるが、CPIと動きが似通るため、発表の早いCPIに市場の注目が集まる傾向がある。特に昨年末から年初にかけての米連邦政府機関閉鎖の影響でPCEデフレータは発表がより遅くなっており、CPIの注目度が高まる傾向にある。前回は前年比・コア前年比がともに予想を下回る伸びとなった。今回は前年比の伸びが回復見込み、コア前年比が前回と同水準の伸びが期待されている。予想を下回る弱めの結果が出ると、CPIよりも水準が低く出るPCEデフレータでの2%前後の水準維持が難しいとの思惑が広がりドル売りが強まる可能性も。ドル円は110円台に値を落とす動きも。 |
臨時欧州首脳会合 4月10日 ☆☆☆ | 英国のEU離脱期限を4月12日に控え、10日に臨時欧州首脳会合(EUサミット)が開かれる。メイ英首相は6月30日までの期限延長をEUに要請している。EU側は10日のEUサミットまで期限の問題について言及しないとしている。5月23日から26日にかけて行われる欧州議会選挙の対応もあり、無条件での6月30日までの延期を認めるとは考えにくい。期限をより短く、もしくはより長く示してくるか、議会選挙前のEU協定の英議会での合意など、何らかの条件を付けてくるとみられる。合意なき離脱の可能性に関する懸念が広がるようだとポンド売りの動きに。ポンドドルは1.2900割れも意識されるところ。 |
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