2019年05月07日号

(2019年04月29日~2019年05月03日)

先週の為替相場

ドル円は上値に重さ

 4月29日からの週は、ドル円がやや頭の重い展開となった。4月26日に発表された米第1四半期GDPが予想を大きく上回る好結果となったもののドル高が進まず、上値の重さが印象的となった。

 イタリア債の格付け据え置き報道や、一部で警戒感のあったスペイン総選挙(用語説明1)が無難な結果に終わったことなどを好感したユーロ買いドル売りの動きが、ドル全般の頭を抑えた面もあった。

 注目された4月30日、5月1日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、市場の予想通りの金利据え置き。注目された声明ではインフレ表現が若干下方修正され、直後のドル売りを誘ったが、その後のパウエルFRB議長による記者会見で、インフレの伸び悩みは一時的な要因が影響との発言があり、ドルの買い戻しに。

 FOMC結果発表後のドル売り局面で111円を割り込まなかったことも下支え材料となり、週後半まで111円台半ば前後でのもみあいが続いた。

 3日の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想をしっかりと上回る好結果。失業率も予想外に低下し、49年ぶりの低水準を記録した。これらの数字を受けていったんドル買いが入ったものの、111円70銭近辺まで。平均時給が予想を下回り、個人消費の拡大に懸念が出たことなどが重石となり、その後は111円ちょうどに向けて値を落とす展開で週の取引を終えている。

 ユーロは週半ばまでの堅調地合いから、週後半にかけて売りが強まる展開に。

 S&Pが26日の取引終了後に発表したイタリアのソブリン債格付けは、BBB格を維持。見通しもネガティブで据え置いた。一部で格下げ見通しが出ており、ドイツ債との利回り格差が2か月ぶりの高水準となっていただけに、据え置き発表を受けてユーロ全体のリスク警戒感が後退した。

 極右勢力の台頭などが懸念された28日のスペイン総選挙で、サンチェス首相率いる与党社会労働党が第1党を確保するなど無難な結果に終わったことも、週明けのユーロに対する警戒感後退につながった。

 こうした状況を受けてユーロドルは1.11台半ばから1.12台半ば超えまでの上昇を見せた。

 しかし、米FOMCでのパウエル議長会見後のドルの買い戻し基調もあり、その後はユーロ売りが優勢に。

 2日の英地方選挙(用語説明2)での与党保守党の大敗、最大野党労働党の苦戦などを受けたポンド売りの動きも、欧州通貨全般の重石となりユーロ売りに。

今週の見通し

 ドル安円高のリスクを意識。

 今週予定されている米中閣僚級協議を前に、警戒感が広がる展開となっている。

 トランプ政権は10日から2000億ドル相当の中国製品に対する関税率を従来の10%から25%に引き上げる方針を発表。従来1月に実施される方針となっていたものについて、米中協議進展を受けて実施が猶予されていたもの。協議が長期化していることや、ここにきてこれまで合意していた事項について中国が再交渉に入る姿勢を見せたことなどを受けて、米国側が牽制を強めたもの。

 協議自体が中止される可能性も含め、これまで前向きに進んでいたとみられた米中交渉が厳しい形で新たなステージに向かっている。米中貿易戦争の激化は世界経済にとっても大きなリスクであり、ドル円、クロス円の重石となりそう。

 ドル円は110円の大台を維持できるのかが大きなポイントに。世界的なリスク警戒感の高まりが円全面高の動きを誘うと、大台を割り込むリスクも。

 クロス円、特に豪ドル円やNZドル円はドル円以上に下値トライのリスク。対中貿易が経済に重要な位置を占める資源国通貨の売り圧力はかなり強まるとみられる。豪ドル円は直近の安値を割り込んできており、ターゲットが見えにくい。年初に円高が一気に進んだ際の安値72円台はまだ遠く、いったんは76円近辺がターゲットとなりそう。

用語の解説

スペイン総選挙 少数与党ということもあって2019年度予算が議会を通らなかったサンチェス・スペイン首相が、今年2月に上下院を解散。4月28日に総選挙が行われた。議会決定で優先度のある下院の結果が注目されていた。与党社会労働党は改選前の85議席から123議席に勢力を伸ばした。もっとも左派系政党すべてを含めても過半数に届かず、カタルーニャ独立党など従来対立していた勢力にも協力を呼びかける可能性がある。躍進が懸念されていた極右政党ボックスは議席数こそ予想を下回る24議席だったが、下院に初進出した。
英地方選挙 2日に英国のうちイングランドと北アイルランドで統一地方選挙が行われた。メイ首相率いる与党保守党は改選前の4896議席から1334議席減と1995年の地方選以来の規模での大敗を喫した。二大政党のもう一方、最大野党である労働党も2105議席から82議席減と苦戦。一方親EUで離脱反対姿勢を示す自由民主党が703議席増となるなど、EU残留派の議席が拡大しており、メイ政権にとっては大きなプレッシャーとなっている。

今週の注目指標

豪中銀政策金利
5月7日13:30
☆☆☆
 豪中銀金融政策理事会が7日に開かれ、日本時間13時半に結果が発表される。豪中銀は2016年8月から同国にとって史上最低水準である現行の1.50%で政策金利を維持している。今年に入っても豪中銀自体は当面の据え置き姿勢を示していたが、市場は年後半での利下げを見越す動きに。さらに先月24日に発表された豪第1四半期消費者物価指数(CPI)が予想を大きく下回る弱い数字となり、一気に早期の利下げ期待が拡大。金利市場での今回の理事会での利下げ織り込み度合いはCPI発表前まで10%程度であったが、CPI後に一気に50%を超えている。
NZ中銀政策金利
5月8日11:00
☆☆☆
 NZ中銀金融政策理事会が8日に開かれ、日本時間11時に政策金利が発表される。リーマンショック前は8.25%という高金利で、高金利通貨の代表格の一つであったNZドル。NZの政策金利は、その後の振幅を経て2016年11月から同国にとって史上最低水準である現行の1.75%で維持されてきた。しかし、前回の理事会でオア総裁は次の中銀の行動は利下げとなる可能性が高いと、この後の金利引き下げを示唆。さらに先月17日に発表されたNZの第1四半期消費者物価指数(CPI)が予想に反して前回と同じ+0.1%という低い伸びにとどまり、早期の利下げ期待が一気に強まる格好となった。
米中閣僚級貿易協議
5月8日
☆☆☆
 先月30日から北京で開かれた米中閣僚級貿易協議が、8日から米ワシントンで再開される予定になっている。もっとも、トランプ米大統領が、同協議の開催を受けて実施猶予を続けてきた対中製品2000億ドル相当に対する関税引き上げ措置を10日から実施する方針を示したことで、協議の実施自体がやや危ぶまれる状況に。当初の期限を過ぎて協議が長期化していたとはいえ、両国から前向きな進展が報じられていただけに、状況の変化が市場の警戒を誘っている。現状では開催する見込みだが、急きょ協議が中止になる可能性も含め、情勢のリスク警戒を誘うようだとドル売り円買いにつながる。ドル円は110円割れも意識されるところに。

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