2019年05月13日号

(2019年05月06日~2019年05月10日)

先週の為替相場

ドル円は上値に重さ

 5月6日からの週は、米中関係への警戒感が広がる中、ドル安円高基調がやや優勢な展開となった。

 トランプ大統領が2000億ドル相当の中国製品(リスト3・用語説明1)に対する関税率を従来の10%から25%に引き上げる方針を示したことがドル売り円買いのきっかけとなった。1月時に実施する予定であった同施策は、米中通商協議の開始を決めた昨年12月の米中首脳会合で3月までの執行猶予が一旦決まった。3月に期限がきた際にも協議の前向きな進展を受けて期限を設けない執行猶予が実施されていたもの。しかし、中国で行われた米中通商協議の中で知的財産権保護などに関するこれまでの合意事項を中国側がいったん取り下げた。これを受けて、トランプ大統領が引き上げ実施を決めたもの。

 中国側は対抗措置実施について言及。米中通商協議の先行き不透明感も広がり、ドル売り円買いの動きに。

 ドル円は5月3日までの週の111円台での堅調な動きが一変し、週明け110円台でスタート。米株安などの動きが火曜日以降も続く中で110円割れ、さらには一時109円台半ば割れまで下げ幅を広げた。

 米中通商協議は、両国とも前向き姿勢を強調も、具体的な進展は見られず。次回の中国での協議再開を決定も、日程などは未定で、不透明感が広がっている。

 とはいえ、完全決裂などの最悪の事態が回避されたことで、週末のNY市場ではポジション調整のドル買い円売りが入り、一時110円台回復も。

 クロス円も軒並みの円高でユーロ円は124円台から122円台半ば割れ、ポンド円は145円台から142円台前半まで一時値を落としている。

 ユーロドルは1.11台から1.12台半ばまで上昇するなど、対ドルではしっかり。

 7日の豪中銀金融政策理事会は金利据え置きと利下げで見通しが分かれる中、据え置きが決定され、一時豪ドル買いに。先週初めに中国の景気鈍化懸念などに0.6960台を付けていた豪ドルドルは、0.70台半ば手前まで急騰する場面も。

 8日のNZ中銀金融政策理事会は、0.25%の利下げを実施。専門家予想は利下げが大勢も、金利市場での織り込みは据え置きが勝っていたこともあり、NZドルは発表直後に売りが出る流れ。対米ドルで0.6580近辺から0.6520台まで。もっともすぐに値を戻してもみ合いに。

今週の見通し

 ドル安円高のリスクを継続して意識。

 米中関係に対する警戒感が続く。6月の大阪サミット(用語説明2)での米中首脳会談の実現が見込まれている。そのため、協議完全決裂という最悪の事態は避けられる見通しだが、知的財産権保護などでの両国の溝はかなり深いとみられており、当面は警戒感が続く展開に。

 ドル円、クロス円は当面頭の重い展開か。一気に円高が進む勢いは今のところ見られず。ただ、上値追いには慎重な姿勢が見られる。

 ドル円は110円台が重くなる可能性。上値の重さが意識されると109円割れに向けた動きが強まりそう。

 109円をしっかり割り込むと、次のターゲットが難しい。今年の安値は年初のフラッシュクラッシュ的に売りが出た際の104円台だが、少し遠い印象。中期的には107円台半ばあたりが意識される展開に。

 中国の景気減速懸念が強まるようだと、豪ドル円など資源国通貨の対円での売りが、ドル円以上に懸念されるところ。

 先週の金融政策理事会では金利を据え置いた豪州だが、内需の減速、住宅市場の低迷などが深刻で、今後の利下げ見通しが継続していることもあり、売りが出やすい地合いに。

 16日の豪雇用統計次第の面もあるが、豪ドル円は76円割れが視野に。

用語の解説

リスト3 米通商法301条に基づく対中追加関税について、2018年7月に発動したリスト1(340億ドル相当・818品目)、同年8月23日に発動したリスト2(160億ドル相当・279品目)に次いで、同年9月24日に発動した2000億ドル相当、5745品目の関税対象リストのこと。当初の関税率は10%、2019年1月からは25%とすると規定されていたが、米中通商協議の開催を受けて、関税率引き上げが猶予されていた。
大阪サミット 6月28日、29日の二日間、大阪の国際見本市会場(インテックス大阪)において開催が予定されている世界20か国・地域(G20)による第14回金融・世界経済に関する首脳会合のこと。G20は各国が持ち回りで議長国となっており、今年は日本が議長国となっている。

今週の注目指標

米小売売上高(4月)
5月15日21:30
☆☆☆
 3日に発表された4月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想を大きく上回る雇用増を記録。失業率が予想外に低下し49年ぶりの低水準を記録するなど、好結果が目立ったが、平均時給は予想を下回るものとなった。個人消費に影響する賃金上昇が鈍く、米GDPの約7割を占める個人消費動向への懸念が一部で見られる。そうした中、米個人消費動向を売り上げという形で表す米小売売上高への注目度は高い。予想は前月比+0.2%と前回の+1.6%から一気の鈍化傾向。もっとも、変動の激しい自動車部門を除くと+0.7%と前回の+1.2%よりは鈍いもののまずまずの水準が見込まれている。予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、ドルを支える材料に、ドル円は110円台にしっかり乗せてくる展開も意識される。
豪雇用統計(4月)
5月16日10:30
☆☆☆
 景気鈍化懸念が強い豪州。もっとも雇用市場は堅調な状況を維持しており、先週の豪中銀金融政策理事会での金利据え置きの根拠の一つとなっている。今回の予想は雇用者数の伸びが+1.50万人と、前回の+2.57万人から鈍化見込みも、まずまずの水準。もっとも、前回は正規雇用の増加が+4.83万人と内訳もかなり強いものであった分、今回はやや弱まったとの印象を受ける可能性も。予想前後の結果にとどまれば影響は限定的も、予想を下回ったり、全体はまずまずでも前回の反動で正規雇用がマイナスになったりなどの結果が出てくると豪ドル売りが加速する可能性。豪ドル円は76円割れも。
豪連邦議会総選挙
5月19日
☆☆☆
 豪連邦議会の総選挙が行われる。上院の約半数、下院の全議席が対象となる。豪州の首相は下院で過半数を超える賛成を得たものという規定になっており、注目は下院の選挙。世論調査では与党保守連合が単純な支持率ではトップも、選挙に関係するTPP方式での調査では最大野党労働党が上回っており、政権交代の可能性が高まっている。(豪州の選挙は小選挙区ごとに過半数を取った候補が議席を得る。有権者は単純に投票するのではなく、順位を付けて投票する。まずは各票の第1位を集計。誰も過半数を取らなかった場合、得票数の最も少なかった候補者に投票した人から順番に、投票順位2位の人に票を割り振る。以降過半数を得る人が出るまで続ける)。政権交代が起きた場合、財政規律などへの警戒もあり豪ドル売りの動きとなりそう。豪ドル円は75円割れの可能性も。

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