2019年05月20日号

(2019年05月13日~2019年05月17日)

先週の為替相場

米中貿易戦争など警戒で円買い

 5月13日からの週は、米中関係への警戒感が広がり、ドル売り円買いの動きが見られたが、109円の大台を維持したことで週末にかけて反発の動きが広がった。

 10日に発動した米国の中国製品2000億ドル相当(リスト3)に対して、中国政府は13日に対抗関税の実施を発表。また、同日米国は対中制裁関税第4弾(リスト4)の発動方針を示したことで、米中貿易摩擦の激化が懸念された。

 15日にトランプ大統領が国家安全保障上のリスクをもたらす企業の通信機器を米企業が使用することを禁じる大統領令を発動。米商務省は米政府の許可なく米企業から部品などを購入することを禁じるエンティティ―リスト(用語説明1)にファーウェイ(華為技術)とその関連企業を正式に追加した。このことで警戒感がさらに強まった。

 ドル円は13日のリスト4発動方針などを受けたドル売り円買いに109円02銭近辺まで。その後109円台後半に戻した後、ファーウェイへの制裁措置を受けて109円10銭台まで値を落とした。だが、109円ちょうど手前の買いに支えられて再び買い戻しにという流れになった。

 17日の米ミシガン大学消費者信頼感指数は予想を大きく超えて、2004年以来15年ぶりの高水準となる102.4を記録、ドル買い円売りの動きにつながった。週末前のポジション調整もあり、ドル円は一時110円20銭近くまで上昇。

 欧州通貨は対ドル、対円ともにやや頭の重い展開に。ユーロは23日からの欧州議会選挙(用語説明2)を前にイタリアの財政問題への懸念が広がった。連立政権の一角「同盟」の書記長を務めるサルビーニ副首相が、EU財政規律に反しても必要な支出を行うと、反EUの姿勢を示したことなどが重石に。連立のもう一方五つ星運動の党首であるディマイオ副首相もEUの財政規律違反による制裁を恐れずと発言するなど、イタリア与党勢力の反EU姿勢が鮮明となっている。

ユーロドルは先週初めの1.1260台から1.11台へ下落する展開に。

 18日に総選挙を行った豪ドルも警戒感から売りが優勢に。各種の事前世論調査で最大野党労働党が軒並み僅差ながらリードを奪ったことで、政権交代の可能性が意識された。今年の財政収支黒字化が期待されるなど財政再建を進めてきた現政権への市場の信頼感が高い分、政権交代リスクが意識された豪ドル売りが優勢に。もっとも週末の選挙では与党が逆転勝利している。

今週の見通し

 米中関係の状況を注視、中東情勢緊迫化なども材料に。

 米中関係を注視する展開が続きそう。米商務省が中国の通信大手ファーウェイをエンティティリストに入れたことを受けて、グーグルがファーウェイのアンドロイド端末に向けたサービス停止を検討と報じられるなど、状況はかなり深刻化。

 来月末の大阪サミットでの開催が期待される米中首脳会談を前に、通商交渉の進展などが期待されるものの、閣僚級協議の再開日程などが具体化されておらず、市場の警戒感を誘っている。

 いったんは悪材料が一服したことで短期的なドル売り円買い圧力が後退も、要人発言などで市場の状況認識に変化があれば、再びドル安円高が進む可能性も。

 中東情勢緊迫化もドル安円高圧力に。イラクの首都バグダッドで米国大使館など諸外国の大使館などが並ぶグリーンゾーンでのロケット弾着弾が確認されており、かなり緊張した状況に。トランプ大統領はイランに対して開戦を望めばイランの正式な終わりを意味すると警告。サウジアラビアもイランに対して断固たる決意を示すと表明するなど、イラン情勢の緊迫化が進んでいる。

 米国とイランとの軍事的な衝突などが生じると一気のドル売り円買いも。

 ドル円はこうした状況がドル安円高圧力に。米景気自体は好調との思惑や、109円ちょうど近辺での買い意欲に対する安心感などから短期的な買い戻しが進む場面も、110円前後でのレンジ取引が基本か。流れによって109円を割り込むようだと、一気に108円台半ば割れも。

 ユーロは23日から始まる欧州議会選挙を前に警戒感が広がっている。各国で極右やEU懐疑派の勢力が強まっている。欧州議会はEUの行政機関である欧州委員会の委員長人事に対して大きな力を持っており、このまま反EU色が強い議会になると、秋の委員長人事で大波乱もとの懸念が見られる。1.10を割り込むような動きになる可能性も。

用語の解説

エンティティリスト 米商務省産業安全保障局(BIS)が輸出管理法に基づく輸出管理規則(EAR: Export Administration Regulations)によって実施する輸出規制の一つ。同リストに載った企業は、米国内の企業が米商務省からの輸出許可を得ない限り、米企業からの部品などに関して受け取ることが出来ないというもの。第3国を経由しての再輸出などに関しても規制対象となる。商務省が許可を出さないことで、事実上の取引禁止となる。
欧州議会選挙 欧州連合(EU)の立法機関である欧州議会の議員を決める選挙。欧州議会議員の任期は5年間で、1979年から5年ごとに選挙が行われている。総議員数は751名。EU加盟各国の人口に合わせて議席が配分されるが、人口の極端に少ないもしくは多い国に対する調整措置があり、最大でドイツの96議席、最小でエストニア、ルクセンブルク、キプロス、マルタの6議席となる。5月23日から26日までの期間に各国で選挙が実施される。比例代表制による普通選挙方式で議席が争われる。

今週の注目指標

米FOMC議事録
5月23日03:00
☆☆☆
 4月30日、5月1日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が現地時間22日に発表される。現状維持を決めた同会のFOMCでは、声明で物価認識が下方修正された。しかし、その後の記者会見で、パウエル議長がインフレの伸び悩みは一時的な要因が影響していると発言したことで、市場は早期利下げの可能性が低下したという見方が広がった。議事録でインフレ見通しや今後の利下げの可能性について、どのような議論が行われたのかなどが注目材料に。今後の利下げ期待が強まるような内容が見られるとドル売りに。ドル円は109円台にしっかりと値を落とす可能性も。
欧州議会選挙
5月23日~26日
☆☆☆
 欧州議会選挙が23日から26日にかけて行われる。各国とも与党の苦戦が目立っている。23日に選挙が実施される英国は保守党の大敗が見込まれている。とはいえEU残留派も苦戦しており、新しくできたブレグジット党が勝利の見込み。勝利動向次第ではブレグジットの動きが加速しポンド買いも。ポンドドルは1.29ちょうど近辺が目先のターゲット。26日に予定されているフランス、イタリア、ドイツでは極右・反EU勢力の勢いが強い。ポーランドなどでも反EU勢力の勢いが見られ、これらの党による議席数合計が各国の中道右派勢力の集まりである欧州人民党グループの議席数を上回ってくると、今秋に予定されている欧州委員長人事で大波乱が起きる可能性も。ユーロは売り圧力が強まりそうで、1.10割れも視野に。
ライトハイザーUSTR代表来日
5月24日
☆☆☆
 週末に国賓として来日するトランプ大統領に先立って、ライトハイザーUSTR(米国通商代表部)代表が24日に来日する。4月中旬に米ワシントンで行われた日米通商交渉初回会合で早期の合意を目指すことが確認された自動車、農産品、デジタル貿易などの分野での交渉が行われるとみられる。トランプ大統領が目指す早期の対日貿易赤字削減に向けてどのような要求が米国から出てくるのかなどが注目材料に。自動車の数量規制などの動きが強まると円高圧力となりそう。ドル円は109円ちょうど割れも視野に。

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