2019年05月27日号

(2019年05月20日~2019年05月24日)

先週の為替相場

米中貿易戦争など警戒で円買い

 5月20日からの週は、前半リスク警戒が一服する動きも見られた。しかし、週の後半に向けて警戒感が意識され、ドル円はドル安円高が優勢な展開となった。

 109円台を維持して反発してきたこともあり、週の前半はドル買い円売りの動きが優勢に。18日の豪総選挙で与党保守連合が事前予想を覆して勝利した。政権維持が決まったことで豪ドル円の買いが入ったことなどもドル円の支えとなった。

 21日にはファーウェイに対する制裁措置を既存ネットワークや保守などに限って8月19日まで猶予するとの米商務省の発表があり、ドル買い円売りの動きに。ドル円は一時110円台半ば超えまで買いが入る場面が見られた。

 もっとも、その後トランプ政権が監視カメラ大手ハイクビジョン(用語説明1)を含む中国の監視関連会社最大5社に対してファーウェイと同様にエンティティリストに載せることを検討との報道があり、再びリスク警戒の動きに。

 22日にメイ政権をこれまで支えてきた英保守党のレッドソム院内総務(用語説明2)が辞任を発表。与党内からメイ首相の退陣論が強まったことなども、リスク警戒の動きにつながった。

 25日から28日にかけて令和初の国賓として訪日するトランプ大統領と安倍首相との会談を前に、警戒感からのドル買いポジションの調整も入っていたとみられる。

 週末にかけてドル安円高の動きが広がり、ドル円は109円台前半で週の取引を終えている。

 18日の豪総選挙で、野党労働党優勢との直前の複数の世論調査結果を覆して、与党保守連合が勝利したことで、豪ドルは週明けからしっかり。事前世論調査結果などをにらみ、17日NY市場において対米ドルで0.6860台まで値を落としていた豪ドルは、0.6930台まで買い戻される展開に。

 しかし、21日に公表された今月の豪中銀金融政策理事会議事録において、雇用が改善しなければ利下げが適切になるだろうと、早期の利下げの可能性を指摘。さらに同日行われたロウ豪中銀総裁講演で、6月の理事会で委員は利下げについて考えるだろうと、次回の理事会での利下げを示唆したことで豪ドル売りが広がった。豪ドルは17日に付けた直近安値圏まで値を落とす展開に。

 その後も安値圏もみ合いで23日にも0.6860台を付けるなど、何度か下値を試したが、下値支持水準を割り込まず、週末にかけてのドル売り基調に0.69台前半まで。

 ポンドは神経質な動きに。21日にメイ首相が自身のEU離脱協定案が議会を通過した場合は、これまで拒否してきた二度目の国民投票の是非を採決と発言し、一気にポンド買いの場面が見られた。もっとも、メイ首相案の議会通過の可能性が低いことから動きは限定的に。

 翌日にメイ首相の二度目の国民投票関連の姿勢を拒否する形で、これまでメイ政権を支えてきたレッドソム保守党院内総務が辞任。閣議にも参加する重要役職議員の辞任で、メイ首相の退陣論が一気に広がった。

 こうした状況を受けてポンドは軟調。ポンドドルは一時1.2605近辺まで下落。

 24日には実際にメイ首相は辞任を表明。もっともすでに織り込み済みで辞任発表後の反応は一息。

今週の見通し

 リスク警戒の動きが継続。ドル円は頭の重い展開となりそう。

 27日の日米首脳会談では具体的な合意事項についての話が出る可能性は低い。農業部門についてはある程度の譲歩が見込まれるが、すでにTPPで合意した水準(米国はTPPから離脱しているため合意事項が適用されない)までの譲歩は織り込み済み。

 自動車の数量規制、貿易赤字関連での為替条項などについての話が注目材料も、今回の決定は難しいとの見方。最終的にこれら事項が決まりそうとの印象が広がると、ドル売り円買いも。

 ドル円は108円台半ばがターゲットか。

 米中関係への警戒も継続。ファーウェイ関連で要人発言などが見られると、リスク警戒の動きにつながりそう。来月末のG20を前に米中関係の悪化が鮮明になると、ドル売り円買い。中期的に107円台を試すきっかけになる可能性。

 中国関連では1日の製造業PMIなども警戒材料。中国企業の景況感悪化が広がっているようだと、こちらもリスク警戒の円買いに。ドル円だけでなくクロス円の売りにもつながり豪ドル円は75円割れが視野に。

 その他通貨ではポンドへの警戒が継続。次期首相に複数候補が乱立状態。ブレグジット強硬派のボリス・ジョンソン元外相が一歩抜け出すような流れが見られるとポンド売り円買いに。ポンド円は137円台トライも。

用語の解説

ハイクビジョン 英名はHikvision、中国名は杭州海康威視数字技術。中国・杭州に本社を置く監視カメラの世界的大手。売上高は日本円で5000億円を超え(2016年度)、監視カメラ市場では世界シェア1位となっている。中央政府が直轄する中国電子技科集団(CETC)が株式の42%を保有している。
レッドソム院内総務 アンドレア・レッドソム(Andrea Leadsom)。保守党に所属する英下院議員。2010年初当選。2015年にエネルギー担当大臣。2016年の国民投票では、EU離脱派の主要メンバーとなった。国民投票後の英首相を決める党首選に出馬、第二回目の投票でメイ首相に次ぐ2位となるが、選挙戦から撤退してメイ首相を支える姿勢を明らかにした。第1次メイ政権で環境・食料・農村担当大臣、2017年からの第2次メイ政権で、閣議などにも参加する重要ポストである院内総務に就任した。

今週の注目指標

日米首脳会談
5月27日
☆☆☆
 5月25日に来日したトランプ大統領。安倍首相とのゴルフや大相撲観戦などを楽しみ、27日午前に日米首脳会談、午後に共同記者会見を行う予定。争点となっている自動車や農業については、合意自体を行わず、いったん先送りの形が見込まれている。ある程度の協議進展があるとみられ、共同会見での言動やツイッターでの発言などに要注意の展開に。自動車の総量規制などを強行する姿勢がみられるとドル売り円買いに。ドル円は107円台に値を落とす可能性を意識。
カナダ中銀金融政策理事会
5月29日23:00
☆☆
 カナダ中銀は先月、今年上半期の経済成長率が予想に届かない旨を発表。ボロズ総裁は前回理事会後の会見で、新たなネガティブな材料が出ると、利下げを実施する可能性について言及している。もっとも市場の大方の見方は金利据え置き。4月の加雇用統計が予想を大きく超える好結果を記録したことで利下げ期待が払しょくされた。声明などでも当面の据え置き見通しが示される見込み。年内据え置き期待が広がるとカナダ買いの動きに。カナダ円は82円台回復も。
中国製造業PMI
5月31日10:00
☆☆
米中関係への警戒感が広がる中で、中国製造業の景況感が気になるところ。前回は予想をやや下る数字となったが、2カ月連続で好悪判断の基準となる50.0を超える数字となった。今回の予想は49.9と50割れが見込まれている。米国向け輸出などへの懸念が広がり、中国国内での混乱が広がっているようだと、リスク警戒の円買いにつながりそう。ドル円は108円割れも視野に。

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