2019年06月10日号

(2019年06月03日~2019年06月07日)

先週の為替相場

リスク警戒継続も振幅激しい

 6月3日からの週は、5月30日(日本時間31日朝)にトランプ大統領が不法移民問題での対応への不満からメキシコからの全輸入品に対する関税をかける方針を発表してからのリスク警戒が継続。31日NY市場で108円台前半まで値を落としたドル円は、107円80銭台を何度もトライするなど、ドル安円高基調が継続する展開となった。もっとも、ポイントである107円80銭を割り込み切れずに買い戻しが入るなど、不安定な展開に。

 米国とメキシコの協議は当初難航も、週の後半には米政府が先送りを検討と報じられた。これによりリスク警戒感が後退も、先送り決定は週末まで持ち越されており、先週のうちは頭を抑える材料となった。

 注目された4日のパウエル議長講演では、「景気拡大の維持で当局は適切に行動する。貿易動向による影響を米金融当局は注意深く観察する」との発言があった。「適切に行動する」の部分で早期利下げ期待が広がる格好となった」。

 ブラード・セントルイス連銀総裁やクラリダFRB副議長(用語説明1)などからの早期利下げに前向きな発言もあり、ドル円は108円を何度か割り込む動きに。

 もっとも107円80銭台のサポートがしっかりで、108円台に戻される動きとなった。

 その後の振幅を経て108円台半ば超えで迎えた米雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想をはるかに下回る前月比7.5万人増にとどまった上に、平均時給も予想を下回り、一気にドル売りに。もっともドル円は107円80銭台でまたも下値を支えられ、108円20銭近辺に戻して週の取引を終えた。

 ユーロは6日のECB理事会において、それまでの「少なくとも年内いっぱいは金利を据え置き」とのフォワードガイダンスが、「2020年上期」に先送りされた。数か月前であれば緩和姿勢延長と捉えられる措置だった。しかし、利下げや量的緩和再開などの緩和期待が広がる中では、利下げ期待後退と市場にとらえられ、ユーロ買いの動きに。ドラギ総裁が会見の中で経済指標は悪くないと発言したことなどもユーロの支え。ユーロドルは7日の米雇用統計後のドル売りを受けてのユーロ高ドル安もあり、週初めの1.11台から1.13台半ば手前まで上値を伸ばしている。

 4日の豪中銀金融政策理事会は、事前見通し通り0.25%の利下げを実施し、豪州の政策金利(OCR・用語説明2)は同国にとっての史上最低金利水準を更新し1.25%となった。追加利下げへの強い姿勢が見られず、発表後は豪ドル買いの場面も、対米ドルでの0.70超えの豪ドル買いに慎重な姿勢が見られ、米雇用統計まで0.69台後半でもみ合いに。米雇用統計後の豪ドル買いドル売りに0.70台をしっかり付ける動きに。

今週の見通し

 リスク材料は一つクリアも、警戒感が継続。

 先月末にトランプ大統領がメキシコからの全輸入品に対する関税賦課方針を打ち出してからの混乱は、無期限先送りという形でいったん終息した。関税賦課が実現していた場合、メキシコで部品生産を行い、米国で組み立てるなどの工程を持つ日本企業などにも大きなダメージとなるなど、2国間だけでなく、世界中に大きな影響が出ていただけに、同問題がクリアされたことは大きなリスク軽減材料である。

 もっとも、7日の米雇用統計の弱い結果を受けたドル売りもあり、積極的なドル買いにも慎重姿勢か。来週のFOMCでの利下げ見通しについては、金利市場動向から割り出した確率が一時の25%を超えるなど、期待感が広がった状態から17%程度まで低下してきており、据え置き見通しが大勢である。ただ、7月のFOMCでの利下げ見通しについては80%近くとなっており、利下げが濃厚。9月のFOMCでの連続利下げを見込む動きも約60%に上っており、相当利下げ期待が強い。

 こうした状況でドル買いを積極的に進めるのは厳しい。

 先週のECB理事会でのフォワードガイダンスで来年上期までの金利据え置き姿勢が示されたことで、ユーロとの金利差縮小期待からのユーロ買いドル売りの動きも、ドル円の重石に。

 ドル円は108円台でのレンジを中心に、ポイントとなる107円80銭割れを意識する展開となりそう。107円80銭を割り込むと、次のポイントの見極めが難しい。夏に向けて105円近辺を意識する展開となる可能性もある。

 クロス円も下方向のリスクが意識されるが、ドル売り先行となる可能性もあり、ドル円ほどきれいに下がらない可能性も。

用語の解説

クラリダ副議長 リチャード・H・クラリダ(Richard H. Clarida)、2018年9月からFRBの金融政策担当副議長(副議長は2名おり、もう一人のクォールズ氏は金融規制担当)。米財務省で財務次官補を務めた後、コロンビア大学の経済学部学部長などを経て、大手資産運用会社PIMCOでグローバル戦略アドバイザー及びマネージングディレクターを副議長就任まで務めていた。
OCR オフィシャル・キャッシュ・レート(official cash rate)。豪中銀(RBA)とNZ中銀(RBNZ)が政策金利として採用している金利。両中央銀行がそれぞれの国の市中銀行に対して資金供給する際の翌日物金利。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI・5月)
6月12日21:30
☆☆☆
 米FOMCでの早期利下げ期待が急速に高まる中で、大きなカギを握る金利動向への注目度が高まっている。米国の政策金利で参考にしている指標はPCEデフレータでありCPIではない。しかし、指標こそ違え、動きの傾向はほぼ同じことから、発表のより早いCPIが注目される傾向がある。予想は前年比+1.9%と4月の+2.0%から鈍化見込み。振幅の激しい生鮮食品とエネルギーを除いたコアは4月と同じ前年比+2.1%が見込まれている。PCEに比べて高く出る(4月のPCEは+1.5%、同コアは+1.6%)CPIが2%を割り込む状況は、インフレターゲットまでの遠さが意識されドルの売り材料に。予想を下回る弱さを示した場合にはより注意が必要か。ドル円は107円80銭割れも視野に。
英保守党党首選
6月13日
☆☆
 メイ首相(保守党党首)の辞任を受けて、新首相となる保守党の党首選挙が今週からスタートする。6月10日に立候補者が締め切られ13日に第1回の議員投票が行われる。候補者が2名に絞られるまで投票が実施され、7月の保守党党員選挙を経て、新党首がきまる。ボリス・ジョンソン前外相ら離脱強硬派が党員の支持を今のところ集めている。強硬派の勢いがかなり強いようだと、市場は警戒感を強める可能性。ポンドドルは1.2650をターゲットに値を落とす可能性。
米小売売上高(5月)
6月14日21:30
☆☆☆
 米雇用統計の弱さもあり、米景気の鈍化懸念が広がる中、米国の家計消費動向を示す米小売売上高が発表される。前回4月分は予想を大きく下回る-0.2%とマイナス圏を記録した。月ごとのブレが大きい自動車及び同部品を除いたコア部分でも+0.1%と弱めの数字。幅広い分野で売り上げが下がっており、消費の鈍さを意識させる結果となった。今回の予想は前月比+0.6%、同コア+0.5%と少し戻してくるという見方に。予想前後であれば影響は限定的も、貿易摩擦などによる景況感悪化から個人の財布のひもが固く、予想外に弱めの数字が出てくると、ドル売りに。前回同様にマイナス圏の数字が出ると、107円80銭割れのきっかけにもなりそう。

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