2019年06月17日号

(2019年06月10日~2019年06月14日)

先週の為替相場

リスク警戒継続も振幅激しい

 6月10日からの週は、ドル円が108円台でのレンジ取引に終始するなど、やや膠着状態の展開になった。米中通商問題は目立った新規材料が出ず、やや手詰まり感。香港での大規模デモを受けてリスク警戒での円買いが入ったものの、108円台前半のドル買いを崩すほどの勢いは見られなかった。ホルムズ海峡沖でのタンカー2隻への攻撃を受けた地政学的リスクの拡大などもドル円、クロス円の重石となったが、影響は限定的なものにとどまっている。

 週明けは、従来10日から予定されていたメキシコからの全輸入品に対する関税の賦課について、無期限の先送りが決定した。これにより、ややドル高円安の動きに。7日の米雇用統計の弱めの結果を受けて107円80銭台を付けた後、108円20銭近辺まで戻して7日金曜日のNY市場での取引を終えていたが、同決定を受けて108円台半ばまでドル高円安が進んで週の取引がスタート。その後108円70銭台まで上値を伸ばす展開となった。

 もっとも108円台後半での積極的なドル買いには慎重姿勢も。12日に発表された米消費者物価指数が弱めに出た。これにより、18日、19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げに踏み切るのではないかとの思惑が一部で広がったことなどもあり、ドル安円高が進行した。翌日の豪雇用統計後の豪ドル円の売りもあり、ドル円は108円10銭台まで。

 もっとも下げ一巡後は108円台半ばを回復。14日の米小売売上高が強めに出たこともあり、週末にかけてはしっかりの展開に。

 ユーロは、先週前半はしっかりとなったが、その後は対ドル、対円で値を落とす展開に。ECB要人から今後の追加緩和の可能性についての言及が見られたこと、ドイツのロシアからのパイプライン計画(ノルドストリーム2・用語説明1)について、米国が批判していることなどが重石となった。週末には米小売売上高の好結果によるドル買いもあり、ユーロドルは1.1200を試す展開に。

 ポンドは注目の保守党党首選第一回投票で、ボリス・ジョンソン前外相が大差をつけて一位に。もっとも、穏健派の候補もそれなりの票を獲得している。今後候補者がまとまる中でそれなりの対抗馬となりそうなことや、ジョンソン前外相が合意なき離脱が目標ではないと、これまでの強硬姿勢をやや弱めていることなどから、ポンド売りの動きは限定的。

今週の見通し

 FOMCをにらむ展開。

 一時30%前後まで上昇を見せた金利先物市場動向からみた今週のFOMCで利下げを行う確率は、先週末の米小売売上高の好結果もあり、16%台まで落ちてきている。

 もっとも、完全に無視できる割合ではなく、ある程度の警戒感が見られる状況。

 FOMCまでは上下ともに積極的な動きを取りにくい。108円台でのレンジ取引が中心となりそう。

 FOMCで大勢の予想通り金利を据え置いた場合は、声明、議長会見、FOMCメンバーによる見通し(用語説明2)がポイントになる。声明と会見は今後の早期利下げをどこまで示唆してくるのかがポイントに。

 7月もしくは9月での利下げを強く意識させる展開になると、今回が現状維持となった場合でもドル買いの動きは限定的に。また、複数回の利下げの可能性を意識させた場合も、上値を抑えてくる展開になる。

 ドル円は108円台での取引を中心に107円台トライの流れも。

 FOMCメンバーによる見通しでは、通商問題などを受けて経済成長見通しがどこまで引き下げられているか、前回3月の見通しでは一人もいなかった利下げ見通しがどこまで増えているか、複数回の利下げをどの程度のメンバーが見越しているかなどがポイントに。

 複数回の利下げを見込むメンバーがかなりの数に上る場合は、ドル売り材料となりそう。この場合、ドル円は107円を割り込むような動きまで意識される。

 声明、会見が従来の姿勢を維持し、利下げを否定まではしないものの、将来についての示唆を避けてくるようだと、いったん大きくドル買いが入る可能性。ドル円は109円台を回復し、110円を意識する展開に。

 今回利下げに踏み切った場合は、一気のドル売りに。今回の状況で利下げに踏み切ると9月のFOMCなどでの追加利下げの可能性がかなり高まることもあり、大きな動きに。ドル円は106円をターゲットに。もう一段下げてくるようだと、104円台後半が視野に。

 その他の材料としては月末のG20サミットをにらんだ米中通商問題の進展など。米中首脳会談の実施が示され、トランプ大統領による前向きなコメントが出てくるようだとドル買いに。ドル円は109円台が視野に。

用語の解説

ノルドストリーム2 ロシアからバルト海の海底を経由してドイツを結ぶパイプライン。2005年に第一弾の計画がスタートし、2010年に着工、2011年から稼働を開始している。全長は1222KMに及び、地下を通す形でのパイプラインとしては世界最長となる。第2弾は2019年中の完工を目指して作業が進んでおり、今年4月には51%を出資するロシアの国営エネルギー会社ガスプロムが、全体の40%分のパイプライン敷設が完了したと発表している。
FOMCメンバーによる経済見通し 年8回あるFOMCのうち、3月、6月、9月、12月に開催されるFOMCにおいて発表されるFOMC参加メンバー全員による経済見通し(プロジェクションマテリアル)。年末時点でのGDP成長率、失業率、PCEデフレータ、政策金利水準の見通しが、今年を含め直近3年分と、長期の見通しとして示される。地区連銀総裁については、投票権を持つメンバーだけでなく、すべての地区連銀総裁の見通しが含まれる。

今週の注目指標

英保守党党首選
6月18日
☆☆☆
 辞任したメイ首相の後任となる英与党保守党の党首選挙の第2回投票が18日に行われる。先週の第1回投票ではジョンソン前外相が大差をつけて一位となった。もっとも前回選挙で必要得票数を得られなかった3名の候補、その後党首選からの離脱を発表した1名の候補に向かっていた票が誰に向かうのかで状況が変化するかもしれない。次回の投票に進む最低必要投票数を引き上げる形で、20日まで投票を続け、20日には2名の候補が決定する見込み。二名の候補については、議員投票ではなく保守党党員による一般投票にかけられ、来月21日の週に次期党首が決定する。ジョンソン前外相が大きなリードを保つようだと、ポンドにとっては売り材料に。ポンドドルは1.25割れが意識される。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
6月20日03:00
☆☆☆
 米連邦公開市場委員会(FOMC)が18日、19日に開催され、日本時間20日午前3時に結果が公表される。直近の米雇用統計の弱い結果や、物価の低迷から、今回の利下げを見込む動きが一時は金利先物市場で3割程度見られた。しかし、ここにきてそうした見通しは落ち着いており、金利据え置きが濃厚。声明でポイントとなるのが、前回までの声明で見られた「辛抱強くなれる」との文言が残るかどうか。文言が残った場合、金利据え置きが予想以上に続く可能性が意識され、7月の利下げ期待が一気に後退する形でドル買いが入るとみられる。ドル円は110円を付ける可能性。
EU首脳会議
6月20日・21日
☆☆☆
 6月20日、21日に欧州連合(EU)の本部があるベルギー・ブリュッセルでEU首脳会議が開催される。今回の会議では今秋に任期を迎えるEU各機関のトップ人事が決定する見込み。注目は欧州委員長、EU大統領、ECB総裁。特に現在ユンケル氏が務める欧州委員長はEUの行政トップであり、政治的にかなりの力を持つ重要職。ドイツは自国出身のウェーバー欧州議員を推しているが、フランスなどからは反対意見も見られ、紛糾が予想されている。その他有力候補は、ティメルマンス欧州委員会第1副委員長(元オランダ外相)、バルニエEU離脱首席交渉官(フランス)など。欧州委員長、EU大統領などの決定後にECB総裁人事が決まるとみられ、今回の会議で決めきれず、30日に臨時会議を開くか、来月のEU財務相会合に決定をゆだねる可能性も。ECB総裁の有力候補にはバイトマン独連銀総裁の名前が挙がっている。タカ派で知られる同氏がECB総裁に就いた場合、将来の緩和期待が後退し、ユーロ買いにつながる可能性も。ユーロドルは1.13超えをトライする可能性。

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