2019年06月24日号

(2019年06月17日~2019年06月21日)

先週の為替相場

FOMCや中東情勢など受けてドル売り

 6月17日からの週は、FOMCや中東情勢などがドル売り円買いの材料となった。

 6月18日、19日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)は、事前予想通り政策金利を据え置いた。今月7日の米雇用統計の弱い結果や、12日の米消費者物価指数の冴えない結果を受けて、一時は利下げ期待が強まる場面も見られた。しかし、17日の週に入って過剰な期待が落ち着き、現状維持で事前見通しがほぼ一致していたこともあり、結果自体を受けての市場の反応は限定的。ブラート・セントルイス連銀総裁が利下げ主張に回った点はややドル売り材料に。

 注目された声明内容では、これまで見られた「辛抱強くいられる」との文言を削除した。当初は利上げを見送るために利用されていた文言だが、現状維持バイアスが強く、利下げ実施を縛るものとの認識が見られた。このこともあり、文言削除はドル売り材料となった。

 結果と同時に公表されたFOMCメンバーによる年末時点での政策金利水準見通し(ドットプロット)では、年内2回の利下げ見通しが7名、年内1回の利下げ見通しが1名と、前回3月時点で見られなかった年内利下げ見通しが半数近くに上った。市場が期待する年内3回の利下げを見込むメンバーがいないなど、若干期待外れの面も、ドル売り材料に。

 その後のパウエル議長の会見では、適切な政策対応を検討と、今後の利下げを示唆したと受け取れる表現があり、こちらもドル売り材料となった。

 イラン革命防衛隊(用語説明1)が20日、米無人偵察機グローバルホーク(用語説明2)を撃墜したと発表。領空侵犯に対応と説明も、米軍側は公海上空で撃墜されたとしており、両国間の緊張が高まり、ドル売り円買いに。

 米紙NYタイムズが、トランプ米大統領がイラン軍事施設への攻撃をいったん認めたが直前に取りやめたことを報道。米政府も同件を認めたことでリスク警戒の動きが広がった面も。ドル円は一時107円05銭近辺まで値を落としている。

 ユーロは18日のドラギECB総裁講演で、見通しが改善されなければ追加緩和が必要になるとの発言があり、一時売りが強まる展開に。ユーロドルは1.12の大台を割り込み、一時1.1180台まで。

 もっとも、週の後半にかけてユーロ買いの動きが優勢に。イラン情勢をにらんだドル売りにユーロ高ドル安の動きになったことや、21日のユーロ圏PMIの好結果を好感したユーロ買いなどが入った。

 英保守党党首選は第一回投票からリードしていたジョンソン前外相と、二位に入ったハント外相の一騎打ちが決まった。ジョンソン前外相のリードが大きいこと、保守党支持層の中でのジョンソン前外相の人気が高いことなどから、一般党員による選挙でもジョンソン氏が優勢。合意なき離脱リスクが高まったとみて、一時ポンド売りの場面が見られたが、対ドルで1.25台が維持されて値を戻したこともあり、週後半にかけてはポンド買いドル売りに。

今週の見通し

 米中首脳会談をにらむ展開。

 28日、29日にインテックス大阪で開催される20か国・地域首脳会合(G20サミット)。保護主義的な動きが広がる中で、貿易問題などでどのようなメッセージが出されるのかなど、サミット本番の議題にも注目が集まる。しかし、それ以上に注目されているのが、サミットの機会を利用して行われる米中首脳会談。

 昨年から続いていた米中通商交渉は、知的財産権問題などでの対立もあり、いったん停滞。追加関税の適用など貿易戦争の動きが強まっている。閣僚級協議の日程なども決まらず、両国の対立が目立っていたが、G20サミットで首脳会談が開かれることが決まり、前向きな動きが期待される流れに。

 一気の合意は難しいとみられるが、今後の協議再開と、ある程度の妥協点の提示などで、今後の交渉進展が期待されると、ドル買い円売りとなりそう。一方で対立が強まるような動きが見られると、ドル売り円買いに。

 107円を割り込むと、近くにあまり大きなサポート水準が見られない。1月3日に付けた104円台後半が視野に入ってくる。

 米国とイランの緊張もドル売り円買い材料。

 イラン革命防衛隊による無人偵察機グローバルホークを撃墜事件後、トランプ大統領はいったんイランへの攻撃を認めたが、のちに撤回した。米国側の人的被害がない中で、多数の人的被害が予想される攻撃に対する世界的な批判を考慮したとみられる。もっとも、米国側が主張するように公海上空での飛行に対してイラン革命防衛隊側が攻撃を加えたとすると、米国としてもある程度強硬な対応を取らざるを得ない。

 今後の情勢次第ではリスク警戒の円高が進行する可能性も。また、中東産原油の供給不安からのNY原油先物上昇によるカナダ買いなどの動きも予想される。

 本格的な軍事的衝突が見られると、104円台後半ではドル安円高が止まらない可能性も。102円台半ばをポイントに、大きく値を崩す可能性も。

 ドルカナダは2月に付けた1.3060台が視野に入ってくる。

 

用語の解説

イラン革命防衛隊 Islamic Revolutionary Guard Corps(IRGC)、イラン・イスラム革命でそれまでの帝政から共和国制に移行した際に、正規軍と旧帝政側との結びつきが警戒され、正規軍とは別に組織された軍組織。イラン国防省ではなく、革命防衛省が管轄し、正規軍とは別に陸海空軍、情報部、特殊部隊などの組織を有し、多数の民兵組織も抱えている。
グローバルホーク RQ-4GrobalHawk、ノースロップ・グラマン社が製造する無人偵察機。高高度を長時間飛行する偵察機で、攻撃能力などは持たない。今回撃墜されたのは、正確にはグローバルホークを基にした海上哨戒用機MQ-4Cトライトンとみられる。全幅35.42メートルの大型無人機。

今週の注目指標

NZ中銀政策金利
6月26日11:00
☆☆☆
 NZ中銀金融政策理事会の結果が26日に発表される。政策金利(OCR)は前回5月8日の会合で1.75%から1.50%へ0.25%引き下げたところということもあり、現状維持が見込まれている。もっとも今回利下げを見送ったとしても、早期の利下げ期待は強く、8月7日の会合では利下げに踏み切るという見方が一般的。11月にはもう一段の利下げを行うとの見方もある。今回の会合声明で8月会合での追加利下げに向けた示唆が見られるとNZドル売りに。NZドル円は70円割れが意識されるところ。
G20サミット
6月28日・29日
☆☆☆
 6月28日、29日に20か国・地域首脳会合(G20サミット)がインテックス大阪で開催される。議長国として安倍首相の会見が29日に予定されている。テーマは世界経済、貿易、開発、気候、女性のエンパワーメントなど多岐にわたる。G20加盟国だけでなくASEAN議長国タイ、AU議長国エジプトなど多数の国が招待されているほか、国連、IMF、世界銀行など主要な国際機関も招待されている。市場の注目は保護主義的な動きが広がる中で、G20としてどのようなメッセージを示すことが出来るか。米国の反発もあり、反保護主義的な声明を首脳宣言に盛り込むことは、前回のブエノスアイレスでのサミット同様に難しいとみられる。米国への配慮姿勢が強調されるとG20自体の存在意義にもつながるだけに、警戒感が広がる。この場合はドル売り材料に。ドル円が107円台の安値圏で頭を抑えられる材料にも。
米中首脳会談
6月28日・29日
☆☆☆
 6月28日、29日のG20の中で各国首脳は二国間ないし複数国間の首脳会談を予定している。日本もほとんどの国や機関との会談が見込まれている。市場が注目しているのは米中首脳会談。トランプ大統領はある程度長い時間を取って会談を予定していると発表しており、対立が目立つ米中通商交渉の前進に向けた動きが期待されるところ。いきなりの合意発表は難しいとみられるが、合意までのスケジュールに目途が立つような動きがあると、ドル買い円売りに。ドル円は108円台の回復も。

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