2019年07月01日号

(2019年06月24日~2019年06月28日)

先週の為替相場

G20サミットにらむ展開に

 6月24日からの週は、28日、29日と開催された20か国・地域首脳会合(G20サミット)をにらむ展開となった。特に29日に行われた米中首脳会談への期待感が広がる展開が見られた。

 週前半はリスク警戒が強い展開となり、ドル円は一時106円78銭と1月3日以来の安値を付ける展開となった。トランプ大統領による日米安保破棄の可能性への言及や、米国によるイランへの制裁と、イランの反発を受けた中東情勢緊迫化懸念などが、ドル売り円買いの動きを誘った。当初はドル全面安の動きも、リスク警戒の円買いによるユーロ円の売りや、独債利回り低下によるユーロの売りなどがユーロドルの頭を抑える場面も見られ、行き過ぎたドル安進行には慎重な姿勢も見られた。

 利益確定の買い戻しなどにその後ドル円は107円台を回復。その後、コンファレンスボード消費者信頼感指数の弱さなどに106円台を付ける場面も、G20サミットを前に突っ込んだドル売りに警戒感が入ったこともあり、週前半の安値を割り込まず。

 6月のFOMCでただ一人利下げに投票するなど、現在のFOMCメンバーの中で、ハト派(用語説明1)の代表格とみられているブラード・セントルイス連銀総裁が、7月のFOMCでの0.5%利下げの見通しは行き過ぎと発言したことなどがドルの買い戻しを誘い、その後ドル円は比較的しっかり。

 ムニューシン財務長官が米中首脳会談での合意を期待などの発言もあり、29日の米中首脳会談期待がドルを支える格好に。さらに27日の香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(用語説明2)が米中貿易戦争一時休戦を報じたことで108円台を回復する展開に。

 その後はイベント待ちで調整の動きが強まり、週末にかけて様子見ムードが強い展開に。ドル円は107円80銭前後で週の取引を終えた。

 注目の米中首脳会談では貿易戦争の休戦で合意。米国による追加関税第4弾の実施先送り、米中通商交渉の再開、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)への制裁緩和などで合意し、ドル買い円売りに。

 26日のNZ中銀金融政策理事会は事前予想通り金利を据え置き。声明で今後利下げが必要になる可能性について言及したこともあり、瞬間NZドル売りもすぐに切り返すと、その後は買いが優勢となった。米国の早期利下げ期待が、今回据え置きを選択したNZドルとの金利差縮小期待につながった格好。

 週前半に1.14台を付けたユーロドルは、その後1.13台後半を中心とした推移。G20サミットを前に、1.14台から買い上げる勢いは見られず。

今週の見通し

 リスク選好の動きを期待。

 世界中の懸案事項である米中の通商問題について、両国の前向きな姿勢が見られたことで、リスク警戒感の後退が期待される展開に。

 5月に交渉が決裂して以降、米中関係は厳しい対立が意識されていたこともあり、今回の米中首脳会談は予想以上に前向きな進展とみられている。

 通商問題の解決に向けた具体的なスケジュールなどが決まっておらず、過度な期待は禁物も、目先はドル買い円売りの動きに。

 ドル円は109円近辺が大きなポイント。

 4月後半の112円台からの5月半ばにかけての下げ局面が109円02銭まで、その後いったん110円台後半まで戻して、5月末の下げが109円10銭台までと、二度下値進行を止めた109円ちょうど近辺。6月に入って下抜けしてからの戻りは6月11日の108円80銭までと、109円手前の売りに頭を抑えられている。

 リスク警戒感の後退による円安に加え、貿易問題一服による米早期利下げ期待の後退などを受けたドル買いもあり、今後109円台を回復する可能性は十分にあるが、いったんは頭を抑えてくる可能性も。

 同水準をしっかり超えると110円超えが視野に入ってくる。ターゲットは110円60銭から80銭にかけての水準。

 クロス円も基本的にしっかり。ユーロ円は124円台回復が期待されるところ。

 豪ドルは2日の豪中銀金融政策理事会次第。利下げ期待が高いものの、据え置き期待もそれなりに残っており、どちらになっても相場に大きな影響が出そう。

 

用語の解説

ハト派 本来は政治用語で穏健派・慎重派をハト派、強硬派をタカ派と呼ぶが、金融政策の世界では、その決定に際して、景気動向を重視し、金融緩和に積極的な姿勢を示す当局者をハト派、物価統制を重視し、金融引き締めに積極的な姿勢を示す当局者をタカ派と呼んでいる。現在のFOMCではブラード・セントルイス連銀総裁や、今年の投票権を持っていないがカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁などがハト派として知られている。一方ジョージ・カンザスシティ連銀総裁などがタカ派の代表格。
サウスチャイナ・モーニング・ポスト 香港の英字日刊紙、中国語では南華早報。香港が英領であった1903年に創刊された歴史ある英字紙。一時世界的メディアグループであるニューズコーポレーションの傘下にあった。2015年からアリババグループの傘下にある。

今週の注目指標

ISM製造業景況感指数(6月)
7月01日23:00
☆☆☆
 米供給管理協会(ISM)による企業へのアンケート調査を基にした指標。類似の指標に製造業PMIがある。前回5月分の同指標は事前予想を割り込み、2016年10月以来の52.1を記録。今回の事前予想は51.0。予想通りだとすると三カ月連続での鈍化となる。予想前後でもややドル売り材料だが、それ以上に悪化する可能性も。先週金曜日に発表された6月のシカゴ購買部協会景気指数は、前回、事前予想を大きく下回り、景況判断の境となる50も下回る49.7を記録した。ISM製造業も同様に予想をさらに下回り、2016年9月以来の50割れを記録するとドル売りが一気に強まる可能性も。ドル円は米中首脳会談後のドル買い円売りムードが反転し、107円台を付ける可能性。
豪中銀政策金利
7月2日13:30
☆☆☆
 豪中銀(RBA)金融政策理事会は、前回6月4日に続いて、今回の理事会でも利下げを選択する可能性が指摘されている。前回約3年ぶりの利下げに踏み切り、政策金利であるOCRは豪州として史上最低水準を更新する1.25%となっている。同回の議事要旨において、さらなる緩和が適切になる可能性が大きいと示している。このほか、ロウ豪中銀総裁も前回の利下げだけでは経済成長の回復に不十分という姿勢を示しており、年内の追加緩和が既定路線となっている。もっとも、今回連続利下げに踏み切るかどうかには異論もある。金利市場での利下げの織り込みは約80%、専門家による見通しは約65%が利下げを見越しており、利下げが大勢という状況だが、据え置き見通しも無視できない水準で残っている。結果が据え置きとなり、声明で利下げの可能性を示しつつも、時期の言及がなければ豪ドル買いの動きも。豪ドル円は77円台の回復も期待されるところ。
米雇用統計
7月5日21:30
☆☆☆
 今月のFOMCでの利下げ期待が広がる中で、ポイントの一つとなる米雇用統計の発表が5日に控えている。前回は非農業部門雇用者数が予想の前月比+17.5万人を大きく下回る+7.5万にとどまり、平均時給も予想を下回ったことで、これまで堅調な動きを見せていた米雇用市場への警戒感につながった。比較的景気動向に敏感な小売業が4カ月連続で雇用の減少を記録するなど、内訳も厳しいものとなっており、今回の数字が気になるところに。非農業部門雇用者数の予想は+16.0万人と回復が期待されている。もっとも前回の弱さを考えると、水準的にはやや物足りないところ。この予想をさらに下回り、15万人以下の増加にとどまるようだと、今月のFOMCでの利下げ期待が強まり、ドル売りが加速する可能性。ドル円は先週の安値106円78銭を意識する展開も。

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