2019年07月08日号

(2019年07月01日~2019年07月05日)

先週の為替相場

週半ばにドル安円高も、値を戻す

 7月1日からの週は、週初のドル高、週半ばのドル安、週末のドル高と、方向感が入り混じる展開となった。

 週初は、6月29日に行われた米中首脳会談での米中貿易戦争休戦の動きを好感したドル高円安が優勢に。米中通商協議の再開、米国による第4弾追加関税の先送り、華為技術(ファーウェイ)への制裁緩和などが示されたことで、両国関係の改善期待が広がり、リスク警戒感後退でのドル高円安に。107円後半で引けた前々週末の終値から、一気に108円台に上昇して週の取引が始まり、108円50銭台まで上値を伸ばす展開に。

 その後も高値圏でもみ合いとなったが、108円50銭台からの買いが限定的で、上値の重さが印象的になったところで、米10年債利回りが2%を割り込む動きを見せたことで、短期筋の見切り売りが広がり、107円台に下落。週半ばにかけて米10年債利回りが1.95%を一時割り込むなど、米債利回りの低下が続く中で、ドル円は107円50銭台に。

 その後は4日が米国市場休場(独立記念日)となったこともあり、107円台後半での推移が続いていたが、米雇用統計(6月)を受けて一気にドル買いが広がった。

 非農業部門雇用者数(NFP)が予想を大きく上回る好結果に。前回5月分の結果の弱さが、米国の利下げ期待に大きく寄与していたことに加え、先行指標であるADP雇用者数が弱かった。そのため、予想外の強めの数字に市場はドル買いでしっかりと反応。ドル円は108円60銭台と、週初の高値を更新する動きが見られ、その後の調整も限定的で108円台半ばで週の取引を終えている。

 ユーロドル、ポンドドルは全般に軟調。ユーロドルは米中関係改善期待での週初のドル高に、1.13台後半から1.12台後半に値を落とすと、その後の米債利回り低下によるドル安局面でも戻りが鈍く、頭の重い展開に。2日のEU首脳会合でラガルドIMF専務理事(用語説明1)が次期ECB総裁に指名され、ドラギ総裁の緩和路線継続見通しが広がったことなどもユーロの頭を抑えた。その後5日の米雇用統計後のドル買いに1.1207近辺まで値を落とす展開に。

今週の見通し

 過剰な利下げ期待後退も、ドル安の流れは継続か。

 5日の米雇用統計の好結果を受けて、市場の米政策金利見通しに若干の変化が生じている。金利先物市場動向からの7月の利下げ期待自体は依然として100%と、利下げを織り込んでいるが、雇用統計前に20%以上の割合で見られた一気に0.50%の大幅利下げを行うとの見方が後退。9月のFOMCでの連続利下げ期待も若干後退している。

 こうした動きがドルの買い戻しを誘っている。ただ、あくまでこれまで進んできたドル安の調整という面が大きく、雇用統計後のドル円の高値も先週初めの高値を若干更新したところまでにとどまっている。

 調整の動きが一服した後に、どこまでドル買いが続くのかが焦点に。最大のポイントは今回の雇用統計で過剰な期待が後退した米国の利下げの行方。

 今週は10日、11日に旧ハンフリー・ホーキンス法(用語説明2)に基づいたパウエル議長の半期議会証言が予定されているほか、10日NY市場午後には前回FOMCの議事録が公表される。今後のFRBの姿勢を確認するにあたって、議会証言という公的な場でのパウエル議長がどこまで緩和姿勢を示すかが注目されるところ。

 6月の議事録ではFOMCの結果と同時に発表される参加メンバーによる金利見通し(ドットプロット)において、複数回の利下げを主張したメンバーが半数近くに上ったことなどが、どのように議論に関係していたのかなどが注目されるところに。

 年内複数回の利下げ期待が再び強まる展開が見られると、いったん調整が入った分、値を落としやすい。107円台へあっさりと値を落とすようだと、107円台半ばを割り込む動きも期待されるところ。

 ユーロドルはユーロ安ドル高基調が継続か。ECB次期総裁にラガルドIMF専務理事が指名された件については、有力候補の一人であったドイツ連銀のバイトマン総裁に比べると、現行の緩和姿勢維持が見込まれるということもあり、ユーロの頭を抑える材料に。1.13手前が重くなるようだと、下方向のリスクが意識される展開に。

 米欧の通商問題への懸念もユーロの頭を抑える材料に。

 さらに、イランのウラン濃縮上限超え着手を受けた中東情勢緊迫化も、今回は欧州の対応が要因の一つとなっているだけに、ユーロ円などでのユーロ売りからユーロドルにも重石か。

 ユーロドルは5月23日の安値1.1107近辺がターゲット。

 

用語の解説

ラガルドIMF専務理事 クリスティーヌ・マドレーヌ・オデット・ラガルド(Christine Madeleine Odette Lagarde)。フランスの政治家・弁護士。シカゴに本部を置く国際法律事務所ベーカー&マッケンジーのパリ事務所を経て、シカゴ本部に移り、1999年から同事務所チェアマン。その後、2005年にヴィルパン内閣での農業・漁業相を経て、2007年からフィヨン内閣の下でフランス及びG8初の女性財務相に就任。2011年に女性初のIMF専務理事(IMFのトップ)に就任した。
旧ハンフリー・ホーキンス法 1978年に成立した完全雇用均衡成長法のこと。同法律での規定により、FRBは年に二度、金融政策報告書(通称ハンフリー・ホーキンス報告書)を議会に対して提出することが義務付けられ、FRB議長はその報告書を基に上下両院で証言を行うこととなっている。同法自体はすでに失効しているが、その後も報告書の提出と議会証言は慣例として継続している。国会での答弁を数多く行う日銀総裁と違い、FRB議長が議会で答弁する機会は基本的にこの議会証言に限られているだけに、注目度の高いイベントとなっている。なお、通常は2月と7月に実施され、2月に先に実施したほうが、7月は後に回る。今年は2月26日に上院、27日に下院で議会証言が行われたため、7月は下院で先に議会証言が行われる。

今週の注目指標

半期議会証言
7月10日・11日
☆☆☆
 旧ハンフリー・ホーキンス法に基づくFRB議長の半期議会証言が、10日に下院金融サービス委員会、11日に上院銀行委員会で行われる。同じ報告書を基に行われるため、先に行われる下院での証言がより注目される。トランプ政権がパウエル議長に対して度々利下げを要求する中、大統領自体は議会に出席できないとはいえ、共和党議員からは利下げに向けた厳しい追及が行われることが予想され、その答弁次第ではドル売りが一気に強まるとみられる。米雇用統計後のドル高基調が反転し107円台に値を戻すきっかけになる可能性も。
米FOMC議事録
7月11日3:00
☆☆☆
 前回6月18日、19日に開催されたFOMCの議事要旨が発表される。同回のFOMCでの声明ではそれまで見られた「辛抱強くなれる」との文言が削除され、今後については「景気拡大維持のために適切に行動」と、今後の利下げの可能性を示唆する表現が見られた。また、結果と同時に発表されたFOMCメンバーによる政策金利見通しでは、3月時点での年内据え置き見通しが圧倒的という状況から、半数近くが年二回の利下げを見込む格好に変化した。こうした動きがどのような議論の下で生じたのか、利下げに向けてどこまで強い姿勢が見られたのかなどが注目材料に。7月の利下げに加え、9月以降年内複数回利下げに向けた姿勢が印象的になると、ドル売りが広がる可能性。ドル円は先週の安値107円50銭台を割り込む可能性も。
米消費者物価指数(CPI・6月)
7月11日21:30
☆☆☆
 FRBに課せられた二大責務は雇用の最大化と物価の安定。今月のFOMCでの利下げ期待が広がる中で、雇用と並んで重要なポイントとなる物価動向について、11日に米消費者物価指数(CPI)が発表される。米国のインフレターゲットの対象はCPIではなくPCE(個人消費支出)デフレータであるが、水準は違うものの、変化の傾向は似通るため、発表がPCEよりもかなり早いCPIに注目が集まる(ちなみに6月分のPCEデフレータはFOMC初日の30日に発表予定)。前回5月分は総合・コアともに前年比が予想及び4月分の数字を下回ったCPI。物価上昇圧力の後退が利下げ期待を支える結果となった。今回の予想は前年比が+1.6%と前回の+1.8%から0.2%ポイントの下げとなっている。コアは前回と同じ+2.0%予想。総合が予想通りでもコアが予想を下回った場合や、総合が予想以上に鈍化した場合は、ドル売りの勢いが強まる可能性。ドル円は107円台に値を落とす動きも。

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