2019年07月16日号

(2019年07月08日~2019年07月12日)

先週の為替相場

月末のFOMCにらみ振幅

 7月8日からの週は、今月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)をにらんでドル買い、ドル売りが交錯する展開となった。

 FOMCで少なくとも0.25%の利下げを行うという見通しについては、金利先物市場動向からみた織り込みが100%に到達するなど、ほぼ確実視されている。しかし、一部で見られる一気に0.50%の大幅利下げを行うという見通しが強まったり、弱まったりする中で、ドルの上下動が見られた。

 週半ばまで、5日の米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を大きく超える好結果となったことを受けたドル買いが広がった。雇用統計前まで30%前後、一時は40%超えまで見られた一気に0.50%の利下げを行うとの見通しは、雇用統計での好結果を受けて5%以下にまで落ち込む動きを見せ、ほぼ無いのではという見方が広がった。雇用統計後に108円台後半を付けたドル円は、週初の調整で108円30銭割れを付けた後は、一転してドル買いが広がり、108円99銭までと、109円に迫る動きを見せた。

 ユーロドルが1.12割れを付けるなど、ドルは全面高の動きに。

 しかし、10日に下院金融サービス委員会で行われたパウエルFRB議長による議会証言において、景気の不透明感が指摘され、利下げを示唆する発言があり、状況が一変。市場の利下げ期待を後退させた雇用統計についても、見方のバランスを変化させるものではないと示したことで、0.50%の利下げ期待が再び30%を超える展開に。ドル円が107円80銭台、ユーロドルが1.1280近辺と、一転してのドル安に。

 ところが11日に発表された6月の米消費者物価指数(CPI)食品・エネルギーを除くコア(用語説明1)前年比が予想に反して5月から上昇したことで、再び大幅利下げ期待が後退。0.50%の利下げ見通しが20%程度となる中で、ドル円が108円台半ば超えを付けるなど、ドル買いの動きとなった。

 もっとも、この動きも週末まで持たず。利下げ幅はともかく月末のFOMCでの利下げ実施自体はほぼ確実視される中で、ドル買いに慎重姿勢。週前半のドル買い局面で109円を付けきれなかったこともあり、週末を前にポジション調整に対する意識が強まった面も。

 ドル円は107円80銭近辺と週の安値を割り込み、安値圏で週の取引を終えている。

今週の見通し

 ドル買いに慎重姿勢。

 30日、31日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げについてはほぼ確定的。一気に0.50%の大幅利下げを行うのではとの思惑については、今月に入って雇用統計や物価統計、議会証言などの各種材料の結果に一喜一憂しながら見通しが揺れている。CME通貨先物市場動向からみた0.50%の利下げ確率は3割程度。FF金利先も動向からの0.50%利下げ確率は25%程度。16日の米小売売上高や、地区連銀総裁などFOMC関係者による発言などを受けて、この見通しがどれだけ変化するのかがポイントとなりそう。

 20日からはFOMC前に関係者の発言が制限されるブラックアウト期間になるため、今週中にある程度の市場のコンセンサスが生じるとみられる。昨年12月までの利上げ路線から、半年ほど据え置きが続き、その後一気に0.50%の引き下げを行わなければいけないほど米景気が弱いとは見えないだけに、0.50%の引き下げが大勢になる可能性は低い。もっとも期待を完全に払しょくさせるだけの強い材料が出る可能性も低いため、上値でのドル買いには慎重な展開が続くか。

 先週のドル買い局面で109円を付けきれなかったことも大きい。実需筋(用語説明2)などからの見切り売りが出るようだと、ドル安円高圧力が強まる可能性も。

 ドル円は107円台後半から108円台前半にかけてのレンジ取引を中心に、107円ちょうどトライの可能性を意識する展開に。

 ユーロドルやポンドドルでもドル安が進んでいるが、25日のECB理事会で、今後の緩和実施に向けたフォワードガイダンスの変更や、総裁会見での緩和示唆が見られるのではとの期待もあり、ユーロドルの上値での買いには慎重姿勢も。

 ユーロドルは1.12台でのレンジ取引を中心に1.13台トライの場面も、上値は限定的か。

 

用語の解説

消費者物価指数(CPI)食品・エネルギーを除くコア 米労働省労働統計局(BLS)が、都市部の消費者が購入する商品やサービスの価格の変化を調査して指数化したもの。変動が激しい上に、景気動向とは関係のない理由で変動しがちな食品とエネルギーの価格を除いたコア部分の指数も同時に発表される。米国のインフレターゲットの対象は個人消費支出(PCE)デフレータであり、日本を含め多くの国でインフレターゲットの対象とされているCPIではない。しかし、発表時期が対象月の翌月15日前後と、対象月の翌月末もしくは翌々月初めとなるPCEデフレータに比べて2週間程度早く、変化の傾向が似ているため、市場の注目度は物価関連指標の中で最も高い。なお水準については、一般的にPCEデフレータよりも高めに出る。
実需筋 為替変動による収益獲得を狙う投機筋とは違い、輸出入や資本取引に伴う為替取引を行う輸出入企業や機関投資家のこと。取引額だけを比べると投機筋の取引が圧倒的だが、こうした取引は売買によるポジション作成の後、損益確定のために短期間に反対売買が行われて決済されることから、ある程度の期間で見た場合、相場への影響が相殺され限定的なものとなる。一方実需筋の取引は、例えば輸出業者が海外で販売した商品の代金を日本に戻す場合の外貨売り円買いなど、一方的な取引で完結したり、外債や外株の購入などに伴う外貨買いのようにかなりの長期にわたって保持される取引がほとんどとなっているため、相場へ与える影響力はそれなりに大きい。

今週の注目指標

米小売売上高(6月)
7月16日21:30
☆☆☆
 米GDPの約7割を占める個人消費動向を示す小売売上高。前回は総合、自動車を除くコアがともに前月比+0.5%とまずまずの数字。自動車、電気製品などの耐久消費財や、スポーツ・書籍・趣味用品などが強く、個人の消費動向が堅調な印象を与えた。今回は+0.2%とやや弱めの予想。自動車を除くコアは+0.1%の予想になっている。ガソリン価格が6月に大きく低下しており、ガソリンスタンド売上の減少が見込まれる部分でかなり説明できるが、自動車・ガソリンを除いた部分も、5月の前月比+0.5%から+0.3%に鈍化が見込まれている。予想程度の鈍化にとどまれば、影響は限定的も、総合がマイナスになるような大きな鈍化が見られると、7月末のFOMCでの0.50%の大幅利下げ見通しにつながる形でドル売りも。ドル円は107円台を試す展開に。
豪雇用統計(6月)
7月18日10:30
☆☆☆
 今月2日の利下げで当面の利下げ凍結が見込まれている豪州。数か月の観察後、再び利下げサイクルに入るかどうかは、豪景気動向、特に雇用情勢などが重要なカギを握っている。豪雇用者数は直近3回連続で予想を上回っているものの、内訳をみると正規雇用が二カ月連続で弱く、非正規雇用の拡大で全体が持ち上がっている状況。失業率も2カ月続けて予想よりも高く(弱く)、やや厳しい状況となっている。今回の予想は雇用者数が+0.9万人、失業率が直近2回と同じ5.2%と冴えない数字が見込まれている。予想前後の数字は織り込まれていると思われるが、予想以上に弱めに出た場合は早期に利下げ再開への思惑につながり豪ドル売りが入る可能性。豪ドルは対ドルで0.68台を意識する展開も。
南ア中銀金融政策理事会
7月18日
☆☆☆
 昨年11月に約3年ぶりの利上げを実施した南ア中銀であるが、今年に入って中国の景気減速懸念や、電力不足による生産の制限などから景気鈍化傾向が強まっており、南ア第1四半期GDPは前期比年率-3.2%と3四半期ぶりにマイナスとなっただけでなく、その低下率は10年ぶりの大きさという厳しいものとなった。この状況を受けて今月の理事会での利下げが見込まれている。もっとも消費者物価指数が高め推移となっていることもあり、据え置き予想も一部で見られ、利下げ、据え置きどちらでも相場に影響が出そう。利下げの場合、ランド円は7円50銭がターゲットとして意識されるところ。なお、理事会終了後の発表となり、時刻は確定していないが、日本時間午後10時過ぎの発表となるケースが多い。

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