2019年07月22日号
先週の為替相場
月末のFOMCを意識する展開続く
7月15日からの週は、週の半ばまでは、ドル円が108円30銭台を付けるなど比較的しっかりとした動きとなり、ドル買い円売りが優勢な展開となった。
16日に発表された米小売売上高(6月)の数字が予想を超えるものとなり、個人消費の堅調さが意識されたことで、今月末のFOMCで一気に0.50%の引き下げを行うとの見通しが後退した。
パウエル議長が16日の講演で、先日の議会証言同様に不確実性が高まりFRBは適切に行動と発言したものの、直後の影響は限定的に。
しかし、17日の海外市場でドル高が一服。米住宅指標の弱さから米債利回りが低下し、ドル売りに。
さらに17日NY株式市場引け後に発表された米ネットフリックスの決算が弱く、株価が大幅に下落したことを契機として、世界的な株安が進み、リスク警戒からの円買いに。
さらにウィリアムズNY連銀総裁(用語説明1)が18日の講演で「経済が極度の不安に陥った場合は、FRBは積極的に行動するべき」と発言し、月末のFOMCでの大幅利下げへの期待感が広がる形でドル売りとなり、ドル円は107円20銭台を付けた。
もっとも同発言についてはNY連銀のスポークスマンが学術的な話の中で出たもので、月末のFOMCでの話ではないと否定。ドル円は買い戻しが入る展開に。
長期化懸念が広がる米中貿易摩擦問題に関して、ムニューシン財務長官・ライトハイザーUSTR代表が中国との電話協議を再開させたこともドルの買い戻し材料となり、107円台後半に値を戻して週の取引を終えている。
その他目立ったのはポンドの振幅。週初1.2570台を付けていたポンドドルは、週の半ばに1.2380台まで下落。2017年4月以来の安値圏を付けた。その後1.2550超えまで回復と、大きな往って来いに。
英保守党党首選が佳境に入る中、ジョンソン元外相、ハント外相の両候補が、メディアでの討論会で、共にバックストップ(用語説明2)について、期限付きであっても認められないと、拒否姿勢を示した。EU側としても重要視している項目だけに、10月末の合意期限までに合意できない可能性が高まり、合意なき離脱懸念からのポンド売りに。
EU側のバルニエ首席担当官が国境問題で再考の余地ありなどの発言を行ったことや、11月から欧州委員長となるフォンデアライエンドイツ国防相が10月31日以降の期限延長を支持する姿勢を示したことなどからか今脅しが入り、下げ分をほぼ戻す展開に。
今週の見通し
FOMCをにらみやや不安定も、レンジ内での取引か。
30日、31日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げについて、0.25%がほとんどで一部0.50%の大幅利下げという状況であったが、ウィリアムズNY連銀総裁の18日の発言後に、CMEFedWatchでのFF金利先物動向からみた0.50%の利下げの確率が50%近くまで上昇するなど、一気の利下げへの期待感が広がっている。
米重要指標は今月軒並み強めのものとなったが、28日に発表される米第2四半期GDPは第1四半期の前期比年率3.1%から、1.8%に大きく鈍化する見込みとなっており、指標面でも大幅利下げ期待を後押しする状況も意識されている。
FOMC本番までは突っ込んだ売りを避けたいという思惑が入ることや、20日からFOMC関係者はブラックアウト期間に入り、発言が出てこないことなどから、基本的にはレンジ取引が見込まれるが、下方向を攻める可能性は十分ありそう。
ドル円は106円台をトライする可能性を意識。
ユーロドルやポンドドルなどでもドル売りが優勢となる可能性が高いが、ECB理事会を控えてユーロ買いには慎重姿勢も。こちらも基本的にはレンジ取引に。ECB理事会で今後の追加緩和実施に向けた動きが出てくるようだとユーロ売りも。ユーロドルは1.10台へ値を落とす可能性も。
ポンドは23日の保守党党首選挙で、下馬評通りジョンソン元外相が党首(自動的に次期首相)に選出されるかが最初のポイント。これまで下げてきたこともあり、事前予想通りだった場合にどこまで追加売りが入るかは微妙も、頭を抑える材料とはなりそうで、ポンドドルは1.26近辺が重くなる展開も。
用語の解説
NY連銀総裁 | 米国の中央銀行制度である連邦準備制度は、連邦準備理事会の下で、全米を12の地区に分けて、各地区連銀がその地域の市中銀行の監督など中央銀行としての業務を行っている。このうち第2地区を管轄するNY連邦準備銀行は、公開市場操作など米国全体の金融政策の実務を担う特別な地区連銀となっている。そのため、他の地区連銀総裁が持ち回りでFOMCでの議決権を持つのに対して、NY連銀総裁は常に議決権を持ち、FOMCの副委員長(委員長はFRB議長が兼任、FRB副議長はFOMCでは一メンバー)を担当する要職となっている。 |
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バックストップ | 1998年のベルファスト合意により、英領北アイルランドとアイルランドの国境での国境管理が廃止された。ブレグジット後はアイルランドが所属するEUと英国で関税・規制体系が異なることになるため、国境管理が必要になる。EUは北アイルランドをEUの関税同盟と単一市場の体系内に留める形での安全策を提案。これがバックストップである。この場合実質上の国境線が北アイルランドとグレートブリテン島(英国本土)との間にひかれる形となるため、与党に閣外協力するDUP(民主統一党)が強く反発。保守党議員も多くが反発する形となっている。 |
今週の注目指標
英保守党党首選挙結果判明 7月23日 ☆☆☆ | メイ首相の辞任を受けた英与党保守党の党首選挙は、複数名の候補から議員投票でジョンソン元外相とハント外相の二名が選ばれ、一般党員による郵送での選挙が実施されている。23日には結果が判明する見込み。選出された方が自動的に英国の次期首相となる。党員内での支持率調査ではジョンソン氏が圧倒的に優勢。10月31日時点で合意出来ていなくてもEUから離脱との方針を示しているジョンソン氏が勝利した場合、ポンド売りの動きに。ポンドドルは1.24台を意識。ハント氏が勝利した場合は一転してポンド買いに。1.27近辺がターゲットか。 |
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ECB理事会 7月25日20:45 ☆☆☆ | 25日にECB理事会が開催され、日本時間20時45分に結果発表、21時半からドラギ総裁の会見が予定されている。ドラギ総裁は6月のECB年次フォーラムで追加刺激策の必要性に言及するなど、ここにきて緩和姿勢を強めている。フォワードガイダンスを重視するECBが今回いきなりの緩和に踏み切る可能性は低いものの、次回以降での緩和に向けて、ガイダンスを調整してくる可能性は十分にある。9月の理事会での緩和実施見通しが強まるようだとユーロ売りに。ユーロドルは1.11台が視野に。 |
米第2四半期GDP速報値 7月26日21:30 ☆☆☆ | FOMCを前の最後の重要指標。第1四半期は前期比年率+3.1%と強めの結果となっていたが、内訳をみると、在庫投資の拡大と輸出の拡大が寄与したものとなっている。在庫、純輸出(輸出―輸入)、政府投資を除いたGDPの伸び率は+1.3%と2013年第2四半期以来の低水準にとどまるなど、内需の弱さが印象的であった。在庫は景気の拡大局面、減速局面いずれの局面でも増加するが、第1四半期の場合、内需の弱さからくる積み上げの可能性が高い。輸出の拡大は貿易摩擦を懸念した先倒しでの輸出が影響した可能性がある。こうした状況から、第2四半期のGDPは厳しい数字が見込まれており、事前予想は+1.8%となっている。トランプ政権が掲げる+3.0%にかなり遠い数字であり、市場の利下げ期待を強める結果となりそう。予想もしくはそれ以下の数字が出てくると、ドル売りが強まるとみられる。ドル円は106円台を意識する場面も。 |
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