2019年07月29日号

(2019年07月22日~2019年07月26日)

先週の為替相場

FOMCでの大幅利下げ期待後退がドル買いに

 7月22日からの週は、若干ドル高が優勢な展開となった。

 30日、31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、2008年以来となる利下げ(用語説明1)がほぼ確定的。金利市場内で利下げを予想している割合は100%となっている。注目はその利下げ幅。パウエル議長の議会証言内容や、ウィリアムズNY連銀総裁のFRBは積極的に行動するべき発言(同連銀スポークスマンが今回のFOMCについての話ではないと否定)などを受けて、金利市場内では15日からの週の後半には、一気に0.50%の大幅利下げが実施されるという予想が出た。金利市場内でその予想の割合が50%近くになるなど、積極的な利下げ実施見通しが広がった。これらにより、ドル売りの材料となっていた。

 しかし、22日からの週に入って、じりじりと大幅利下げ期待が後退。0.25%の利下げで市場の見通しが収束した。積極利下げ期待からのドル売りに調整が入る格好となった。

 米第2四半期GDPが予想を超える好結果となり、ドル円は108円80銭台まで上値を伸ばす展開も、上値では売りが出る流れ。

 今月に入って、米国の主要経済指標は、雇用統計、消費者物価指数(CPI)、小売売上高に続いて、四半期GDPも好結果となったが、0.50%の大幅利下げが金利市場で20%ほど織り込まれる形で残っており、上値での買いにも慎重姿勢が見られた。

 25日のECB理事会は政策金利を据え置いた。独、仏などの景況感の悪化もあり、直前になって利下げ見通しが一部で広がった。しかし、大方の予想は据え置きとなっていたこともあり、据え置き自体での混乱は見られず。声明では追加緩和の姿勢を強く打ち出し、金利の階層化や新たな量的緩和(QE)の検討を指示などの表現が見られたことで、ユーロ売りに。注目のフォワードガイダンスは、少なくとも2020年上期まで現水準か「それ以下の」金利を維持すると、政策金利の当面据え置き姿勢から、利下げを排除しない姿勢に変更された。

 ユーロドルは一時1.11ちょうど近くまで下落。その後、ドラギ総裁の会見では景気後退の可能性を否定するなど、市場の見通しほど弱気姿勢を示さなかった。そのため一転して買い戻しが入り、1.1180台まで。高値からもすぐに戻して、その後は週末までもみ合い。

 6月から行われていた英保守党党首選挙は、決選投票の結果ジョンソン氏(用語説明2)が勝利、24日付で新首相に就任した。ジョンソン新首相は10月31日がブレグジット問題の期限であり、それまでにEUと合意出来なければ合意なき離脱も辞さない姿勢を改めて示した。

 もっともすでに織り込み済みということもあり波乱は見られず。

 今月に入って総裁が交代し、ウイサル新総裁の下で初の会合となったトルコ中銀は、予想を超える4.25%の大幅利下げを実施。瞬間リラ売りが入り、リラ円が18円90銭近辺から18円60銭近くまで下落する場面も、すぐに値を戻し、逆にトルコリラ高に。

今週の見通し

 FOMCでは、今回の結果だけでなく年内の追加利下げ期待も。

 30日、31日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)をにらむ展開が続いている。今回のFOMCで一気に0.50%の利下げを実施する可能性はそれほど高いものではない。しかし、金利市場で一定の割合で予想する関係者が残っている以上、無視することは難しい。発表まで上値を抑える材料となりそう。

 FOMC前は関係者発言が制限されており、発表まで新規材料に欠ける展開が続くこともあり、FOMCまではレンジ取引が基本となりそう。

 FOMCで0.50%の大幅利下げを実施した場合はドル売りが強まると予想される。8割がたが0.25%の利下げを織り込む格好となっているだけに、サプライズ感もあって、直近安値をトライに行く可能性が高い。声明やその後のパウエル議長による会見内容にもよるが、ドル円は中長期的に105円を意識するところまで値を落とす可能性も。

 大方の予想通り0.25%の利下げにとどまった場合は、声明と会見の内容がポイントとなる。年内追加利下げの可能性を示唆してくるような状況が見られると、0.25%の発表直後に買われたとしても、その後はドル売りが優勢となりそう。

 ドル円は107円台をトライする流れが期待されるところ。

 直近の経済指標動向自体は弱くないだけに、いったんの様子見が示されるようだと、ドルの買い戻しも。ドル円は109円手前の売りを崩しに行く可能性が高い。勢い次第では110円トライの流れも。

 

用語の解説

2008年以来の利下げ 米国は2006年ごろから表面化したサブプライムローン問題を受けて、金融大手BNPパリバ傘下のファンドが解約を凍結したという、パリバショックが2007年8月に起こった。パリバショックによる金融市場の混乱への対応もあり、2007年9月18日に0.50%の利下げを実施。2008年9月のリーマンショックを経て、2008年12月まで利下げサイクルが続いた。この時米国の政策金利は5.25%から事実上のゼロ金利である0.00%-0.25%まで低下している。
ジョンソン新首相 ボリス・ジョンソン(Alexander Boris de Pfeffel Johnson)。1964年米ニューヨーク市生まれ。父親は欧州議会議員のスタンレー・ジョンソン。オクスフォード大学を経てジャーナリストに。EU懐疑派のジャーナリストとして名をはせた後、2001年から下院議員。2008年から2016年5月までロンドン市長。2015年に下院議員選挙にも当選し、兼任。2016年の国民投票結果を受けて当時のキャメロン首相が辞任したことによる首相及び保守党党首選挙では、有力候補とされながら立候補せず。メイ首相の下で外務・英連邦大臣となったが、2018年7月に辞任した。

今週の注目指標

米中通商協議
7月30日
☆☆☆
 米中両国の主張の隔たりが大きく、中断していた米中通商閣僚級協議が、30日、31日に中国上海で再開される。先月のG20サミットにおける米中首脳会談の席において協議再開で合意したことを受けてのもの。もっとも、トランプ大統領が来年11月の大統領選まで中国は合意を先送りする可能性と発言するなど、両国間の溝は深く、協議進展はそれほど期待されていない。前向きな協議進展を印象付けてくるようだと、ドル買いが強まる可能性も。その場合、ドル円は109円をトライする流れがありそう。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
8月1日03:00
☆☆☆
 物価の鈍化傾向と、景気刺激のために、2008年12月以来となる利下げ実施が確実視されている。大方の予想は0.25%の利下げとなっているが、それなりの割合で0.50%の大幅利下げ実施が期待されている。どちらの結果になったとしても波乱含み。大方の予想通り0.25%の利下げとなった場合、年内追加利下げの可能性が示唆されるかどうかがポイントに。市場では9月のFOMCでの連続利下げを見込む動きがもっとも一般的。期待に反して利下げ継続に慎重姿勢が示されると一気のドル買いも。この場合110円の大台超えを意識も。
米雇用統計
8月2日21:30
☆☆☆
 前回6月分の雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を超える前月比+22.4万人を記録する力強いものとなった。製造業が+1.7万人と5か月ぶりの強い増加を示すなど、内訳も比較的力強いものとなっている。もっとも景気動向に敏感な小売業が5か月連続で雇用減となっている点は要注意。今回の予想は+16.9万人と前回に比べると鈍いものの、比較的しっかりした数字が見込まれている。前回強かった製造業や建設業に反動が出た場合、予想を下回る弱めの数字が出る可能性も。FOMC次第の面はあるが、15万人を割り込む増加にとどまるようだと、ドル売りが広がる可能性も。ドル円は107円台トライの動きもありそう。

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