2019年08月05日号

(2019年07月29日~2019年08月02日)

先週の為替相場

ドル買いから一気のドル売りへ

 7月29日からの週は大きな動きを見せる週となった。

 ドル円は109円台の回復から106円台への下落へという動きが見られた。

 30日、31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、約10年半ぶりの利下げが事前に織り込まれていた。これをにらみ、FOMCの結果発表までは108円台半ばから後半にかけてのレンジを中心とした推移が続いた。

 FOMCでは大方の予想通り0.25%の利下げが実施された。一部で0.50%の大幅利下げ見通しが残っていた。これに加え、パウエルFRB議長がFOMC後の会見で「利下げサイクルの始まりではない、予防的な措置による利下げ、トレンドの中での調整」などの発言が見られた。今後の追加利下げ期待が後退したこともあり、ドル高の動きに。会見の中で、「利下げが一回とは言っていない」など、利下げ打ち止め感を抑えるような発言も見られた。しかし、全体的に市場が期待していたほどハト派的では無いとの思惑が、ドル買いを誘った

 ドル円は会見後に109円ちょうど近辺を付けた後、ユーロドルでのドル高進行などもあり、109円30銭台まで上昇。

 その後は少しもみ合いとなり108円台後半に値を戻したところで、トランプ大統領が対中関税第4弾を9月1日から賦課する方針を示し、一気に雰囲気が変化。

 ドル円は107円台前半まで下落。FOMC前の1.1160台から1.1020台までユーロ売りドル高が進んでいたユーロドルは1.11手前まで上昇。

 金曜日の海外市場では、週末を前にさらにドル安が進む展開となり、ドル円は106円台半ばに。ユーロドルは1.11台を回復。

 クロス円は米中通商摩擦悪化を懸念した円買いもあり、ユーロ円が121円ちょうど前後の振幅から118円台まで大きく値を落とすなど、外貨売り円買いの動きが広がった。

今週の見通し

 ポイント割り込み、ドル安円高リスク強まる

 米中通商摩擦問題の激化は、世界経済にとって大きな損失。リスク警戒の動きが当面続きそう。

 109円台までいったん持ち上げてからの売り。FOMC後はさらなるドル高進行への期待感も見られただけに、ある程度ポジションが整理されており、動きの割には過熱感が見られないことも、もう一段のドル売りに。

 先週報じられたトヨタ自動車の想定為替レート(用語説明1)は期初想定の110円から4円調整されて106円に。ここからさらにドル安円高が進行すると、多くの輸出企業で社内レートからのさらなる乖離が意識されるところ。戻ったところでは実需筋などからもドル売り円買いが出そう。

 米中通商摩擦問題が意識される中で、対中輸出が自国経済に与える影響が大きい豪州やNZ(用語説明2)といったオセアニアの通貨も売りが優勢に。

 今週は豪中銀、NZ中銀ともに金融政策理事会が見込まれている。6月、7月と連続利下げを行った豪中銀は今回据え置きが濃厚。5月の利下げの後、一度見送って今回を迎えるNZ中銀は利下げ実施が見込まれている。豪中銀も9月の追加利下げ期待が広がっており、豪ドル、NZドルは金利面でも頭の重い展開か。

 ユーロは景況感の悪化が気になるところ。ポンドは合意なき離脱リスクへの警戒感が続いており、こちらも頭の重い展開に。

 ドル円、クロス円ともに下方向を意識する展開となりそう。ドル円のターゲットは1月3日に付けた104円80銭台。逆に107円50銭台を回復するような流れになると、下方向へのトライの勢いが一服か。

 

用語の解説

想定為替レート 輸出入を行う企業が、業績見通しや事業計画を策定する際に前提とする為替レートのこと。直近の相場水準や、今後の為替レート見通しなどを元に期初に策定されるが、相場の大きな変化などによって、期中に業績見通しの変化などを伴って変更されることがある。
対中輸出が自国経済に与える影響が大きい豪州やNZ 豪州・NZともに国別でみた輸出先第一位が中国(豪州は2017/18年会計年度、NZは2017年)。豪州は全輸出の30%以上が中国向けで、輸出先第二位の日本の倍以上、輸入も中国からが18%で二位の米国以下と差が大きく、貿易総額で見て約四分の一が対中国となっている。NZは全輸出の23%が中国向け、輸入も中国からが19%でトップ。なお、豪州は鉄鉱石、石炭などの鉱物資源が中心、NZは酪農製品が中心と、主要輸出品目構成は大きく異なる。

今週の注目指標

豪中銀政策金利
8月6日13:30
☆☆☆
 6月、7月と連続で利下げを行い、豪州にとっての史上最低金利を更新した豪中銀。今回は直近の利下げの影響を見極めるであろうとの思惑から、現行の1.00%での据え置きが見込まれている。今後の追加利下げの可能性が中銀声明やロウ中銀総裁発言などで示されていることもあり、先月時点ではそれなりの割合で3会合連続利下げもあるのではとの思惑が見られた。しかし、先月末に発表された豪第2四半期消費者物価指数が予想を上回ったことで、利下げ期待が後退し、据え置き見通しが9割を超える状況となっている。注目は声明内容で、9月以降の追加利下げ実施に積極的な姿勢が見られると、豪ドル売りの材料となりそう。豪ドル円は70円割れも視野に。
NZ中銀政策金利
8月7日11:00
☆☆☆
 5月8日に豪中銀に先駆けて利下げに踏み切ったNZ中銀。6月は金利の据え置きを選択したが、今回は現行の1.50%から1.25%への追加利下げが見込まれている(なお、豪中銀は1月を除く毎月会合が行われるが、NZは米国、日本、欧州などと同じ年8回ペースで、1月がお休みのため年7回の会合実施)。金利を据え置いた6月の会合の声明で追加利下げについて5月時点よりも前向きな姿勢が示されたことが背景にある。利下げ自体は織り込み済みで、市場の注目は声明内容。年内更なる利下げが示唆されるようだとNZドル売りが広がる可能性。NZ円は2012年以来となる68円割れを試す可能性も。
中国消費者物価指数
8月9日10:30
☆☆
 7月の中国消費者物価指数(CPI)及び生産者物価指数(PPI)が9日に発表される。米中通商問題が世界経済を左右する大きな材料として意識される中、中国の経済動向への注目度が高まっている。予想はCPIが6月と同水準の前年比+2.7%、PPIが6月から0.1%ポイント低い前年比-0.1%が見込まれている。予想を下回り、物価の鈍化傾向が印象付けられると、中国景気の低迷懸念が広がり、人民元売りからのドル円の下げなど、リスク警戒の動きにつながる可能性も。ドル円は105円割れを試すきっかけとなる可能性。

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