2019年08月13日号

(2019年08月05日~2019年08月09日)

先週の為替相場

米中関係にらみ神経質な展開

 8月5日からの週は米中関係への警戒感が相場を左右する展開となった。

 前週にトランプ大統領が対中追加関税第4弾を9月1日から賦課する方針を示した。これにより米中関係が神経質になる中、週明けからドル人民元が節目の7.0000をしっかり超えるドル高元安となり、警戒感が広がる展開に。ドル円は105円台へ下落。クロス円も軒並みの下落となった。

 米中関係の悪化を受けて次回9月の米FOMCで一気に0.50%の大幅利下げを行うのではとの思惑が広がったこともドル売りを誘い、ユーロドル、ポンドドルなどでドル売りに。

 さらに5日のNY市場夕方に米政府が中国を為替操作国(用語説明1)認定したことでリスク警戒の動きが加速。ドル円は105円台半ばまで売りが進む展開に。

 しかし6日の中国人民銀行による対ドル基準値設定(用語説明2)が7.0000を割り込む、実勢水準よりもかなり元高の水準に決定したことで、元安進行への警戒感が後退。これまでのドル安、円高、株安の急速な進行に対する警戒感もあり、一時500ドル超の下げとなっていた米ダウ平均先物時間外取引がプラス圏に浮上するなど、株の買い戻しが強まる中で、ドル高円安の動きに。ドル円は東京午前に105円台半ばから107円台を回復するところまで買いが入り、106円台前半に値を落とすなど、振幅の激しい展開となった。

 106円台前半でのもみ合いを経て、7日のNY市場で再び105円台半ばを付ける動きに。米中関係のリスク警戒感が続く中で、ドル売りが広がる展開となった。米株の下落などもドル売りに。

 その後106円台を回復も、106円30銭前後が重くなり、頭の重い展開に。106円ちょうど前後での推移が続いた後、週末金曜日のNY市場の時間帯に、トランプ大統領が9月に予定されている米中閣僚級通商協議について、会合しなくても構わないなどと発言。これにより、安値を更新して105円台前半まで値を落とす展開となった。

 その他、動きが目立ったのはNZドル。7日のNZ中銀金融政策理事会で、予想外の0.50%の利下げを実施し、NZドルが急落した。短期金利市場動向からの金利見通し・エコノミストなど専門家による予想はともに0.25%の利下げがほとんど。専門家予想では一部で据え置き見通しもあるような状況からの0.50%の利下げということで、かなりのサプライズに。また、同時に発表された声明でさらなる追加緩和の可能性を示唆、今後についても慎重な表現が目立つなど、かなり弱気な姿勢が見られ、NZドル売りに。

 NZドルは対米ドルで0.6550近辺から一気に0.6370台まで。その後少し戻したが、0.64台半ばが重くなるなど頭の重い展開が続いた。

今週の見通し

 米中関係へのリスク警戒強まる展開が続く。

 米中の通商問題への警戒感が、ドル安円高の圧力につながる展開が続きそう。対中関税第4弾賦課を9月1日に控え、状況が一変する可能性は低く、要人発言などを警戒しつつ、ドル円の下値を探る展開か。

 1月3日のフラッシュクラッシュ的な円高局面での安値は104円80銭台となっており、同水準をしっかり抜けると、次のポイントが見えない。もう一段の大きなドル安円高進行も。

 急速な下げに実需筋なども売り切れておらず、戻ったところでは売りが出る流れか。106円台半ばからが重くなる可能性が高そう。

 ドル円は104円台トライのタイミングを計る展開。状況次第では104円割れが視野に入る大きなドル安円高進行も。

 対中輸出が自国経済の中で重要な位置を占めている豪州やNZといったオセアニア通貨や、南アランドなどの一部新興国通貨は、ドル円以上に対円で値を落とす可能性も。豪ドル円は70円割れが意識されるところ。

 ユーロやポンドは対ドルでは買いが優勢。もっとも、イタリアの政局、英国の合意なきEU離脱に向けた動きなどが、対ドルでの欧州通貨の重石となっており、対円では頭の重い展開となりそう。ユーロ円は目先117円台半ば割れで売りが加速する展開か。

用語の解説

為替操作国 米財務省が年に二回、米連邦議会に対して提出している為替政策報告書に基づいて、輸出競争力を高めるために自国通貨を不当に安く誘導していると米議会が判断した国。認定は94年7月以来約25年ぶり。その後も通貨安誘導が是正されていないと判断された場合、米政府系金融海外民間投資公社(OPIC)による新規融資禁止や、米政府調達からの排除などの制裁措置を受けることになる。
対ドル基準値設定 中国国内取引向けの人民元市場(オンショア人民元)は、中央銀行である中国人民銀行が主要24通貨に対する基準値を毎朝9時15分に発表し、その日の取引はその基準値から上下2%の枠内に抑えられるように管理されている。取引の多い対ドルの基準値が特に注目されている。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI・7月)
8月13日21:30
☆☆☆
 米中通商問題の深刻化による先行き不透明感の拡大もあり、次回9月の米FOMCでは、連続利下げの期待が広がるだけでなく、一気に0.50%の大幅利下げに踏み切るのではとの思惑が広がっている。大幅利下げに向けた鍵の一つが物価情勢。前回6月のCPIは変動の激しい食品・エネルギーを除くコアの前年比が、予想を上回る+2.1%の好結果となった。内訳を確認すると、居住費、中古車、被服、家具など幅広い分野での上昇が見られ、物価全般の堅調さが印象付けられる結果であった。今回は前回並みの水準が見込まれているが、先週末に発表された生産者物価指数(PPI)がやや弱めに出ており、CPIも同様に弱めに出てくる可能性も。この場合、大幅利下げ期待を後押しする形でドル売りが広がる可能性。ドル円が105円を割り込むきっかけになる可能性も。
豪雇用統計
8月15日10:30
☆☆☆
 今月6日の金融政策理事会では3会合ぶりに政策金利を据え置いた豪中銀。声明では労働市場の動向を注視という文言が見られ、持続的成長を支えるために必要ならば政策調整を行うと、状況によっては追加緩和を実施する可能性を示した。7日のNZ中銀金融政策理事会で一気に0.50%の利下げが実施され、NZと政策金利水準が並んだこともあり、利下げへのハードルが低くなっていると見られる中、9月の理事会で利下げが行われるかどうかのカギを握る雇用統計に注目が集まる。前回は雇用者数がわずか500人増にとどまったが、内訳をみると正規雇用が2.11万人増と力強いものとなっており、好数字との印象を与えた。今回の予想は1.4万人増と雇用全体の回復が見込まれており、予想前後の数字が出て、内訳も正規雇用中心であれば、利下げ期待がやや落ち着きそう。この場合豪ドル買いの動きが入る可能性がある。対米ドルで0.68超えの動きも。
米小売売上高(7月)
8月15日21:30
☆☆☆
 先月26日に発表された米第2四半期GDP(速報値)は、前期比年率+2.1%。第1四半期の+3.1%からは鈍化も、市場予想の+1.8%を上回る強い数字となった。その大きな要因となったのが前期比年率+4.3%の力強い伸びを見せた個人消費。米GDPの約7割を占める同部門の堅調な動きが米景気を支える材料となっている。今年後半も同様の流れが見られるかどうか、個人消費動向を表す小売売上高に注目が集まるところ。前回は総合、変動の激しい自動車を除くコア共に事前予想を上回る好結果。今回は7月の新車販売が苦戦していたこともあり、総合は若干鈍化見込みも、コアは前回と同水準の+0.4%と堅調な伸びを維持する見込み。予想通りもしくはそれ以上の強い数字が出ると、9月のFOMCで一気に0.50%の大幅利下げ実施はハードルが高いとの思惑でドル買いが強まる可能性も。ドル円は106円台半ばを超える動きも。

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