2019年08月19日号

(2019年08月12日~2019年08月16日)

先週の為替相場

リスク警戒一服も、積極的な動きは手控えられる

 8月12日からの週は、週初にドル安円高が進行も、一気に値を戻す場面が見られるなど、一方向の動きにはならなかった。

 週初はドル安円高が進行。山の日及びお盆の週ということで東京勢が不在となる中、12日の海外市場で米中関係の悪化懸念などを受けたドル安円高が強まり、ドル円は一時105円05銭まで。9日にトランプ大統領が今すぐ中国と合意する用意はない、9月の協議が延期されても構わないなどの発言を行ったことが重石となった形。

 13日も同様にドル安円高の動きが優勢となり、105円10銭近辺を付けるなどの動きが見られたが、トランプ大統領が9月1日からスタートする対中追加関税第4弾について、パソコン、携帯電話、玩具、衣料などの分野について、12月15日までの発動延期を発表したことで一気にドル買い円売りに。ドル円は107円手前まで買いが強まる展開に。

 その後106円台でのもみ合いを経て、14日の米債券市場で米2年債と10年債の利回りが逆転する逆イールド(用語説明1)が発生したことなどを嫌気してドル売りが強まり、105円65銭近辺まで値を落とす展開に。

 翌15日の東京市場での時間外取引でも逆イールドが見られ頭の重い展開が続いたが、同日のロンドン朝に大口の買い注文をきっかけに一気に106円70銭台まで上昇する場面が見られるなど、不安定な展開に。この上昇分はすぐに解消され、その後は106円台前半を中心としたもみ合いに。

 ユーロは週後半にかけて売りが強まる展開となった。週半ばまでユーロドルが1.12を挟んでのレンジ取引となるなど、比較的しっかりの動き。しかし、ドイツ第2四半期GDPのマイナス成長や、ユーロ圏鉱工業生産の弱い指標に頭の重い動きとなった。すると、15日にレーン・フィンランド中銀総裁が9月のECB理事会でインパクトのある景気刺激策を出す必要があると、米紙WSJに語ったことで、追加緩和期待が広がり、一気にユーロ売りに。ユーロドルは1.1060台まで値を落とした。

 その後独紙が独政府は景気後退時には財政赤字を拡大して景気を支える用意と報じたことなどで、少し買い戻しが入ったが、戻りは鈍い。

 豪ドルは振幅が目立つ展開に。週初は0.6750割れの場面も、米国が対中追加関税第4弾について一部製品の延期を決めたことで、一気に0.68台まで上昇するなど、豪ドル買いの動きに。米中関係の前進が、対中輸出が大きい豪経済にとってプラスとの思惑が広がった。

 その後0.6730台まで値を落とすなど上昇の動きが続かず。15日の豪雇用統計では、雇用者数が予想を大きく上回った上に、内訳をみると正規雇用が大きく伸びる力強い結果となっており、豪ドルは対ドルで0.67台後半での推移に。週末にかけても堅調な動きとなったが、0.68台まで戻せずにもみ合っている。

今週の見通し

 ジャクソンホール会議(用語説明2)をにらむ展開となりそう。

 夏の世界的な一大イベントであるジャクソンホール会議が22日から24日にかけて米ワイオミング州ジャクソンホールで開催される。

 歴代のFRB議長やECB総裁などが金融政策方針の大きな変更を伝える機会として利用してきた同会議。パウエル議長の講演が23日に予定されており、注目を集めている。

 7月のFOMCで10年半ぶりの利下げに踏み切った米国。声明や議長会見では、利下げサイクルの始まりではなく、貿易問題などを受けた先行き不透明感に対応した予防的措置であると強調された。

 もっとも、7月のFOMCの後、米政府による中国製品への追加関税第4弾の決定、中国に対する為替操作国認定などを受けて、米中問題への警戒感がより強まっている。その中で、市場では次回9月のFOMCでの追加利下げを完全に織り込む動きが広がっている。また、一気に0.50%の大幅利下げを行うのではとの思惑や、9月の後も、年内もう一度の利下げを行うのではとの思惑などが広がっている。これまでのFRBの姿勢からの大きな変更が意識される状況となっているだけに、パウエル議長の講演内容次第で流れが大きく変わる可能性も。

 トランプ大統領は米中交渉の前向きな進展をツイートなどで強調しており、ドル円の下値はしっかり。ジャクソンホールをにらみながら基調は上方向か。107円手前の売りを崩せるかどうかがポイントに。

 ただ、週末にかけて流れが大きく変わる可能性を考えると、基本的にはレンジ取引か。105円台半ばから107円にかけてのレンジを基本に、講演内容次第では104円台へ。

 欧州通貨も対ドルでのもみ合いが続きそう。先週は欧州通貨売りの場面で、ユーロドルの1.10、ポンドドルの1.20という節目を割り込み切れず値を戻している。下値トライに一服感が出ており、レンジ取引が中心か。

 ユーロに関しては9月のECB理事会での追加緩和期待がより高まると下方向のトライも。1.10を割り込むと一気に1.08台ぐらいまで値を落とす動きもありそう。

 ポンドは夏休み期間でブレグジッドがらみの新規材料が出にくい分、動きが限定的に。ユーロが値を落とすと連れ安もありそう。1.20近辺が大きなポイント。

用語の解説

逆イールド イールドカーブ(利回り曲線)は、通常、満期までの残存期間が長くなるほど金利が高くなる。逆イールドとは通常のイールドカーブとは逆に短期の金利が長期の金利を上回っている状態。先行き不透明感の拡大などが逆イールドの要因で、景気が後退する前兆といわれている。米国で2年債と10年債の利回りが逆転したのはリーマンショック前の2007年以来約12年ぶり。
ジャクソンホール会議 カンザスシティ連銀が主催し毎年8月の後半に実施している経済シンポジウム。米国有数のリゾート地であるワイオミング州ジャクソンホールに、主要国の中央銀行幹部や著名な経済学者などを招いて実施される。参加者及びプログラムは開催初日の朝まで公式には明らかにされない。だが、FRB議長はFRB側の規定で講演予定を事前に告知しているため、同会議に出席し講演する場合、日程が分かる。これまで2010年と2012年に当時のバーナンキFRB議長が量的緩和第2弾と第3弾の実施見通しを示したり、2014年にドラギECB総裁が資産購入プログラム(QE)導入を示唆したりと、各国の中央銀行総裁が金融政策の大きな変更を説明する機会として利用していることから、市場の注目を集めている。

今週の注目指標

米FOMC議事録
8月22日03:00
☆☆☆
 先月30日、31日に開催された米FOMC(連邦公開市場委員会)の議事要旨が公表される。10年半ぶりの利下げに踏み切った前回のFOMCであるが、市場では一部で0.50%の大幅利下げを期待していたほか、声明などで今後の利下げへの姿勢が強く打ち出されなかったことで、少し失望感も出ていた。また、2名のメンバーが据え置きに投票しており、全会一致での利下げとはならなかった。こうした状況がどのような話し合いの下で起きたのか。今後の利下げの可能性への言及も含め、議事録に注目が集まるところ。9月の追加利下げを後押しする内容となるとドル売りに。ドル円は105円台にしっかりと値を落としそう。
独製造業PMI(8月)
8月22日16:30
☆☆☆
 8月のドイツのPMI(購買担当者景気指数)の速報値が22日に公表される。前回の製造業PMI速報値は43.1(その後確報値で43.2に修正)と予想を大きく下回り、7年ぶりの低水準を記録した。世界的な通商問題のリスクが製造業に対する圧力につながっているとの懸念が広がった。ユーロ圏経済をけん引するドイツ経済の先行き不透明感拡大はユーロの重石。今回は43.0とさらに弱い数字が見込まれており、予想通りもしくはそれ以下の数字が出てくると、ユーロ売りの動きが加速しそう。ユーロドルが1.10の節目を割り込むきっかけとなる可能性も。
パウエル議長講演
8月23日23:00
☆☆☆
 パウエル議長がジャクソンホール会議二日目23日に講演を行う。初日はウェルカムディナーを兼ねて会議を主催するカンザスシティ連銀の総裁によるオープニングの挨拶などが通常のプログラムとなっており、パウエル議長講演が事実上の基調講演となる。今回のジャクソンホールのテーマは金融政策の役割。今後の金融政策運営についての話が出るとみられている。どこまで利下げに前向きな姿勢が示されるかがポイントで、7月のFOMCでは否定した利下げサイクル入りの印象が強まるようだと、ドル売りが広がる可能性。ドル円は105円割れの動きも。

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