2019年08月26日号

(2019年08月19日~2019年08月23日)

先週の為替相場

週末一気にドル安円高へ

 8月19日からの週は、注目された金曜日のジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長講演まで106円台での取引が続いた。それまでの安値は106円10銭台、高値は106円60銭台にとどまっており、目立った方向感に欠ける展開が続いた。

 20日にファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)に対する輸出禁止措置などの対応について、国家安全保障上の問題であるとの姿勢をボンペオ国務長官が改めて示した。この際に、106円10銭台を付けるなど、米中関係に依然として神経質なところが見られた。しかし、大台を割り込むような動きにはつながらず。

 毎年8月の後半に行われるカンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が22日から24日にかけて開催された。23日現地時間朝(日本時間23日午後11時)にパウエル議長が基調講演を行った。金融政策の課題というテーマに沿った基調講演ということで、今後の米FOMCの姿勢が明らかになるとの期待感から、それまでは積極的な取引を手控えたいという思惑が広がった面も。

 21日公表のFOMC議事録は、声明時点と同様に、10年半ぶりの利下げについて、利下げサイクルの始まりではなく、あくまで長い流れの中での調整という姿勢が示された。9月の追加利下げ期待を大きく後退させるほどのものではなかった。しかし、一気に0.50%の大幅利下げすることへの期待感が後退。ドル円を支える材料となった。

 最大の注目材料であったジャクソンホール会議でのパウエル議長講演は、追加利下げの示唆があった。このことで、若干ドル売り円買いで反応。もっとも講演直後は株高の動きもあり、反応は限定的なものにとどまった。しかし、その後はドル安が加速する展開となった。

 その前に出ていた中国による米国の対中追加関税第4弾に対する対抗関税の発表が重石に。中国政府は9月1日及び12月15日からの米国による対中関税第4弾に対する対抗策として、米製品750億ドル相当に対する報復関税(用語説明1)を発表。その後トランプ大統領が中国の報復関税に対して午後に対抗措置を発表すると発言。これらの米中対立により、一気にドル売り円買いが広がり、ドル円は105円台前半まで値を落とした。

 NY市場夕方に報じられたトランプ大統領の対抗措置は、これまでに課している関税2500億ドル相当について、関税率を30%に引き上げ、第4弾の関税については10%から15%に引き上げとなっている。また、法的拘束力はないものの、米企業に対して中国からの撤退命令を出している。

 こうした米中関係の悪化からのリスク警戒感が拡大し、ドル売り円買い圧力が週末を前に強まった。

 ユーロはイタリアの政局懸念が重石となったが、対ドルでの1.10台での売りには慎重な姿勢も見られ、こちらもジャクソンホール会議でのパウエル議長講演までは、限定的な値幅での動きにとどまった。

 イタリアのコンテ首相(用語説明2)は20日に辞表を提出。マッタレッラ大統領が首相に事態が落ち着くまでの暫定政権運営を命じたことで、大きな混乱は避けられているものの、暫定政権には予算の承認権がなく、今後の混乱が予想されるところに。ユーロドルは1.10台での買いを意識して、1.11台に戻す場面も、大台を維持できずという流れに。

 もっとも金曜日NY市場でのドル売りの動きにユーロドルは1.11台半ばまでユーロ買いドル売りが進む展開に。

今週の見通し

 米中関係の悪化懸念がドル円、クロス円の重石となりそう。

 注目されたパウエル議長講演自体は、想定の範囲内という印象で、ドル売り材料とは言え、影響は限定的。

 もっとも、そのすぐ後に発表された中国による米国の対中関税第4弾に対する報復関税と、米国の関税率引き上げなどによる対応の影響がまだ続くとみられる。

 世界第一位の経済大国である米国と、第二位の経済大国である中国の本格的な亀裂は、世界経済全体にとって大きなリスク要因に。

 投資資金は目先の逃避先として、円を選択する流れが強まると見られ、ドル円は大きなドル売り円買い圧力を浴びそう。

 世界の外国為替市場で取引量の多い四大通貨はドル、ユーロ、円、ポンド。米中関係の悪化懸念がドル売りを誘う中で、ユーロはイタリアの政局懸念と9月の追加利下げ見通しで買いにくい。また、ポンド合意なきEU離脱リスクが意識されて買いづらい状況。その結果、円に資金が集まる状況が見込まれるところに。

 ドル円は100円の大台が意識されるところ。ユーロ円の110円、ポンド円の120円など、心理的な大きな節目に向けた動きを意識する展開となりそう。

 ドル円の戻りの目途は、パウエル議長講演前の106円60銭近辺を戻せるか。同水準を戻すと中長期的な円高リスクが一服。それまでは頭の重さを意識。

用語の解説

中国による報復関税 中国政府は23日、米国が予定している対中追加関税第4弾に対する対抗措置として、米国からの750億ドル相当の製品に対して、9月1日と12月15日の二回に分けて10%と15%の追加関税をかけることを表明。対象は農産品、工業原料、日用品など。これまでに1100億ドル相当分の米国製品に追加関税をかけており、今回の措置で米国製品のほとんどが関税の対象となる。また、現在課税を停止している自動車及び同部品に対する関税について、12月15日に復活させることも発表された。
コンテ首相 ジュゼッペ・コンテ。2018年3月の総選挙で勝利した五つ星運動と連盟を組んだ同盟(旧北部同盟)は、党の代表がともに首相就任を見送り、フィレンツェ大学の教授であったコンテ氏(法学)を推薦する形で、同氏が首相に就任した。もっとも、連立政権内での対立激化から、同盟の党首であるサルヴィーニ副首相兼内相が内閣不信任案を提出。連立相手の五つ星運動が同盟の行動を激しく非難するなど、連立政権が事実上崩壊したこともあり、8月20日に首相が辞任を表明した。

今週の注目指標

独Ifo景況感指数(8月)
8月26日17:00
☆☆☆
 ドイツでもっとも注目される指標の一つである同指標は、前回、4カ月連続での低下で6年強ぶりの低水準となる95.7を記録した。世界的な通商問題などがドイツの景況感を悪化させている状況が意識された。今回は小幅ながら5カ月連続の低下となる95.0が見込まれている。今月13日に発表されたZEW景況感指数が事前予想をはるかに下回り、もっとも悲観的に見ていたエコノミストの予想をも下回る-44.1を記録するなど、ここにきて状況の悪化が見られるだけに、Ifo景況感指数も予想を下回る弱めの数字が出る可能性がある。この場合9月のECB理事会での追加緩和期待が強まり、ユーロ売りの流れに。ユーロドルは1.08をターゲットに値を落とす場合も。
米第2四半期GDP(改定値)
8月29日21:30
☆☆
 先月発表された米第2四半期GDP速報値は、事前予想の前期比年率+1.8%に対して+2.1%となった。予想よりは強めも、第1四半期の+3.1%からはかなりの鈍化で、トランプ政権が掲げる年3%成長の目標にも遠いことから、トランプ政権からの利下げ圧力が高まる要因となった。改定値の予想は+2.0%とさらに鈍化見込み。速報値発表後に公表された在庫関連の指標がやや弱めに出ており、予想程度の鈍化は織り込み済み。もっとも、予想をさらに下回る鈍化を見せると、9月のFOMCでの利下げ圧力拡大を伴い、ドル売りにつながりそう。ドル円は104円ちょうど近辺を意識も。
PCEデフレータ(7月)
8月30日21:30
☆☆
 9月のFOMCに向けて、物価統計にも注目が集まる。13日に発表された米消費者物価指数(CPI)は総合、コア共に前年比で予想及び前回を上回る強めの結果となった。しかし、米国のインフレターゲットの対象であり、金融政策への影響力が強いPCEデフレータは前回と同水準である総合+1.4%、コア+1.6%にとどまると見込まれている。ターゲットである2%にも遠く、利下げへのハードルにはなりにくい水準。予想通りもしくはそれ以上の数字でドル売り材料となりそう。ドル円は104円台前半がポイントに。

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