2019年09月09日号

(2019年09月02日~2019年09月06日)

先週の為替相場

米中協議再開など好感し、ドル円はしっかり

 9月2日からの週は、週の後半にかけてドル高円安の動きが強まった。

 当初はポンドが相場全体の動きを主導した。10月末のEU離脱を進めるジョンソン首相と、合意なき離脱に反対する勢力との対立が強まり、英政局が不安定になった.これを背景に、週前半はポンド売り。市場のリスク警戒を誘う形で円高が強まるなど、他の通貨にも波及する動きとなった。

 その後、野党に与党内の造反者を含めた合意なきEU離脱阻止を目指すグループと、早期解散も視野に入れたジョンソン政権との対立は、ことごとくジョンソン首相側の敗北に。

 先行き不透明感の拡大などから、ポンドドルは節目の1.20をしっかり割りこみ、3日に1.1950台まで値を落とした。しかし、合意なきEU離脱阻止法案の成立、早期解散総選挙の否決、EU離脱延長申請をジョンソン首相に義務付ける法案の議会承認などが進む中で、合意なき離脱懸念が後退する形で、1.2350台まで上値を伸ばす展開となった。

 ポンド円も126円60銭台から132円10銭台まで約5円半の大幅なポンド高となった。

 ドル円は、英国の政局混迷などを受けたリスク警戒の動きからの円買いもあり、週前半に105円70銭台まで下落。3日の米ISM製造業景気指数(用語説明1)が予想・前回を大きく下回った。好悪判断の基準となる50を割り込む49.1と、2016年1月以来の弱い数字を記録。これらのことも、ドル売り円買いの材料となった。

 その後はポンド高円安の動きに支えられて安値から値を戻すと、米中関係の改善期待などにドル買い円売りが強まる展開が見られた。

 4日に香港行政長官が逃亡犯条例改正案を完全撤廃。香港ハンセン指数の大幅高を誘ったことや、米中協議における人権問題での対立懸念が後退などの思惑でドル円はしっかりの展開に。

 さらに5日には米中閣僚級通商協議が10月に再開されることが発表された。従来9月に行う予定の先送りとなるが、両国関係の悪化で中止が懸念されていただけに、再開を好感する動きが広がった。

 さらに3日のISM製造業景気指数の弱さから警戒されていた5日のISM非製造業景気指数が予想を超える高数字となったことで、ドル円は節目の107円を超えて上昇する展開に。

 6日の米雇用統計がやや弱めに出たことで107円台は維持できなかったものの、押し目は鈍く、しっかりの展開のまま週の取引を終えている。

今週の見通し

 リスク警戒感の後退が継続し、ドル円はしっかりの展開となりそう。

 世界経済にとって最大の懸念材料である、米中の通商摩擦問題。この問題に関し、10月の協議再開報道で前向きな動きが見られたことが、大きな影響を与えている。

 両国間の主張の溝はまだ深いとみられ、高値でのドル買いには慎重姿勢も、米国が対中追加関税第4弾実施を決めた先月初めごろの、深刻な状況からの一服感が、これまでのドル安円高ムードを後退させている。下がったところではドル買い円売りが出る流れに。

 ドル円は106円台から107円台後半にかけてのレンジ取引が中心となりそう。

 もっともトランプ大統領を初め両国の関係者による発言次第で雰囲気が一気に変わる可能性があるだけに、下方向のリスクには依然として注意が必要。

 今週12日にECB理事会を控えるユーロは、頭の重い展開に。中銀預金金利(用語説明2)の引き上げはほぼ確定的とみられるが、量的緩和の実施についてはECB内からの批判も強く、実施は不透明な状況。来月末の任期満了を前に積極的な緩和実施で、景気回復への道筋を付けたいドラギ総裁が、量的緩和実施を強行した場合や、会見で今後の実施を強く示した場合にはユーロ売りが強まる可能性も。1.09を割り込むようなユーロ安進行もありそう。

 先週大きな振幅を見せたポンドは、今週も不安定な動きとなりそう。先週はジョンソン英首相の10月末での離脱強硬姿勢などを警戒したポンド売りから、一転して議会による合意なき離脱阻止の法案やEUとの離脱期限延長を首相に申請させる法案などの議会承認を受けて、ポンド高が広がった。

 今週も同問題についての注目が継続。週末には保守党EU離脱穏健派の大物であるラッド英雇用・年金相が辞任するなど、ジョンソン政権が揺れる中で、動向次第でポンド相場は大きく揺れる可能性。

 ECBと同じ12日の中銀会合で大幅利下げが見込まれているトルコなど、新興国通貨の動きにも注目。リスク警戒感の後退は、新興国通貨全般の買い材料となるが、積極的な買いが入るほどの安心感はなく、神経質な展開が続きそう。

用語の解説

ISM製造業景気指数 全米供給管理協会(ISM:Institute for Supply Management)が、全米300超の製造業の購買担当者に対して実施するアンケート調査を基にした、米国の製造業の景況感を示す指数。アンケートは生産、新規受注、雇用、輸出・輸入、在庫、入荷状況などの各項目について、前回調査から良くなっている、同じ、悪くなっているという3段階で回答を求め、季節調整などを加えて指数化する。50が経済活動の拡大・縮小の分岐点とされている。
中銀預金金利 ECBは政策金利として、主要政策金利(現行0.00%)、限界ファシリティ金利(現行+0.25%)、中銀預金金利(預金ファシリティ金利・現行-0.40%)の3つを採用している。このうち中銀預金金利とは、ユーロ圏の市中銀行が手元資金をECBの預け入れる際の金利のこと。同金利を引き下げることで、市中銀行の貸し出し拡大などを誘う要因となる。一方で市中銀行の収益率悪化などの要因ともなる。

今週の注目指標

ECB政策金利
9月12日20:45
☆☆☆
 10月末で任期満了を迎えるドラギ総裁は、任期中に積極的な緩和を実施し、景気回復の道筋を付ける意欲を示している。同総裁の任期中、後二回となった理事会での緩和実施が見込まれている。前回の理事会で今後の緩和実施の可能性が示されたこともあり、今回の理事会での中銀預金金利の引き下げはほぼ織り込み済みに。主要政策金利、上限である限界ファシリティ金利は据え置きで見通しが一致している。注目は量的緩和の実施まで踏み込んでくるかどうか。TLTRO(貸出条件付き長期資金供給オペ)が今月からスタートする中で、量的緩和の再開は行き過ぎとの見方が一部の加盟国から出ており、同総裁の対応が注目されるところ。量的緩和再開を強行してくると、ユーロドルは1.09割れなどの大きなユーロ売りとなる可能性も。
米消費者物価指数(CPI・8月)
9月12日21:30
☆☆☆
 今月のFOMCで追加利下げが見込まれる中で、利下げを決めるカギの一つである物価動向に注目が集まる。米国のインフレターゲットの対象はCPIではなく、PCEデフレータ。両指数とも動きの傾向はほぼ一致することもあり、より早く発表されるCPIが重要視される傾向がある。前回7月分は総合・コア共に前年比が予想を超える強めの数字となった。今回はガソリン価格の大幅安(全米全種の月次平均で4%超の下げ)など、エネルギー価格の下落もあって総合は前回から鈍化の予想。しかし、食品・エネルギーを除いたコアは前回より強まると期待されている。予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、少なくとも来週のFOMCでの0.50%の大幅利下げは難しいとの思惑が広がり、ドル買いの材料に。ドル円は107円台にしっかり乗せて108円を意識する流れも。
米小売売上高(8月)
9月13日21:30
☆☆☆
 通商摩擦問題などを受けた米企業の景況感悪化が懸念される中、米国の個人消費は堅調な動きを見せており、米小売売上高は前回までで5カ月連続の前月比プラス。前回は予想を大きく超えて4か月ぶりの大幅増を記録するなど、強い数字となっている。さすがに前回強すぎた分、今回は伸びが鈍化するとみられている。ただ、前月比でプラス圏は維持の見込み。予想を下回って前月比でマイナスを記録すると、米景気先行きへの警戒感につながりドル売りも。ドル円は106円台半ば割れも意識される。

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