2019年09月30日号

(2019年09月23日~2019年09月27日)

先週の為替相場

週後半にかけてドル高強まる

 9月23日からの週は、週の前半にドル安円高が優勢となる場面が見られた。しかし、週の後半にかけてドル全面高基調となり、ドル円も108円台を付けるなど、動きに変化があった。

 トランプ大統領への弾劾調査、米中通商問題に対する警戒感。これらのことなどがドル売りを誘ったが、対欧州通貨でのドル買いの動きもあり、ドルは全般に買いが優勢に。

 その前の週末にトランプ大統領が、「中国とは米国産農産品の輸入拡大などによる部分合意ではなく、知的財産権問題などを含めた完全合意を目指す」と発言したことを報じられた。週の初めは影響もあり、ドル円は頭の重い展開に。ユーロ圏及び加盟各国のPMI、特にドイツの製造業PMIの弱さを受けたユーロ円の売りなどもドル円の頭を押さえる材料となった。

 さらに、トランプ大統領がウクライナ大統領に対して来年の大統領選の民主党の有力候補であるバイデン前副大統領の子息に関する調査を求めたとされる問題(用語説明1)に関して、民主党のペロシ下院議長が弾劾調査を正式に開始すると報じられたことも、ドル売り円買いに。

 米コンファレンスボード消費者信頼感指数の弱さなどもドル売りとなり、ドル円は一時107円割れまで値を落とす展開が見られた。

 もっとも106円台でのドル売りには慎重姿勢が見られ、107円台を回復すると、一転してドル買い円売りが優勢に。

 中国が米国産豚肉の輸入拡大を決めたとの報道や、トランプ大統領の弾劾について、2/3の賛成が必要な上院で成立する可能性が低く、影響は限定的との見方が広がった。これらのことなどがドルの買い戻しを誘った。

 週末には米債利回りの上昇などもあってドル円は108円台を回復も、トランプ政権が米投資資金の中国への流入阻止を検討との報道で107円台に値を落とし、週の取引を終えている。

 ユーロドルはユーロ圏及び加盟各国のPMIの弱さが重石となった。ドイツ製造業PMIは49.1と6年半ぶりに経済活動の拡大・縮小判断の境となる50割れを記録。水準的にはリーマンショックの影響が残る2009年6月以来10年3か月ぶりの低水準となった。

 ECB理事の中でタカ派の代表格であったラウテンシュレーガーECB理事が今年10月末での辞任を発表。これもユーロ売り材料に。

 ポンドは英最高裁がジョンソン英首相による議会の閉鎖について、違法と判断したことでいったん上昇の場面も、対ドルでの1.25台が重いということもあり、その後は軟調な動きに。

 タカ派で知られるサンダース英中銀金融政策会合(MPC)委員(用語説明2)が、合意なき離脱の如何に関わらず利下げする可能性があると示唆した。このことで、週末にかけてポンド売りが広がる場面も見られた。

今週の見通し

 中国大型連休(国慶節)でやや動きにくさがあり、ドル円はレンジ取引が中心となりそう。

 市場は10日、11日に予定されている米中閣僚級通商協議に注目しており、それまでは上下ともに積極的な取引を手控える動きも。

 注目は米国の景況感。先月のISM製造業景況感指数は49.1と、好況・不況の判断の境となる50を3年ぶりに下回った。米中通商問題が米国の製造業の景況感に悪影響を与えているとの懸念が広がる格好となった。内訳をみても、生産、新規受注、雇用など、重要度が高いとされる項目の数字が軒並み大きく悪化しており、警戒感を誘う結果となった。

 今回の予想は50.1と改善を示しているが、予想を下回ってきた場合、警戒感からのドル売りが強まる可能性も。

 米国の年内追加利下げ見通しについて、市場およびFRB関係者の見通しが分かれる中で、4日の米雇用統計なども含め米経済指標動向には要注意。

 トランプ大統領の弾劾問題に関しては、よほどの新規材料が出てこない限り、影響は限定的か。民主党が多数派を占める下院で、過半数を超える支持で訴追決定までは可能も、ただでさえ上院は共和党が多数派の上に、過半数ではなく三分の二の賛成が必要な弾劾決定に至るハードルは相当高く、弾劾が成立する可能性はあまりない。

 ドル円は取引参加者の少なさもあり、107円台後半のレンジ取引が中心の展開が続きそう。下方向のリスクはあるが、106円台の売りには慎重姿勢も。もっとも108円台を積極的に買い上げる勢いも見られずという流れか。

 ユーロドルは1.09割れトライを意識。景況感の悪化、ドイツのリセッション懸念、追加緩和の影響などが重石に。ブレグジット合意期限まであと一カ月となったポンド動向への警戒感も欧州通貨全般の重石に。

用語の解説

ウクライナ問題 来年の大統領選で民主党の有力候補の一人であるジョー・バイデン前副大統領。同氏の息子ハンター・バイデン氏は2014年にウクライナの天然ガス会社ブリスマの理事に就任。しかし、米国はウクライナ政策に関与しており、利益相反の可能性があった。また同社の不正関与疑惑を捜査していた当時のウクライナの検事総長に対して、バイデン前大統領が解任を働きかけたという疑惑もあった。これらについて、トランプ大統領がウクライナのゼレンスキ大統領に、軍事援助を盾に調査を依頼したのではないかとの疑惑が持ち上がっている。
サンダース英MPC委員 マイケル・サンダース(Michael Saunders)MPC委員。英中銀の金融政策を決定するMPC(Monetary Policy Committee)は、9名のメンバー中4名が英中銀外部からのメンバーで構成されている。サンダース委員はその一人。米金融大手シティグループのエコノミスト兼欧州及び日本・豪州のエコノミストチームのヘッドを2016年まで務め、2016年から英中銀MPCメンバーとなった。

今週の注目指標

豪中銀政策金利 10月01日13:30
☆☆☆
 豪中銀(RBA)金融政策理事会が開催され、1日に政策金利が発表される。6月に3年ぶりの利下げに踏み切ったRBAは、7月の理事会で連続利下げに踏み切った後、8月、9月の理事会では据え置きに回った。10月の理事会では、もともと追加利下げ期待が見られた。しかし、米中通商協議再開を受けたリスク警戒感の後退もあり、9月半ばには短期金利市場動向から見た利下げ割合が20%台まで落ち込むなど、利下げ期待が大きく後退する場面も見られた。もっとも17日に公表された前回理事会の議事要旨で、追加利下げの可能性が示された。このこともあって、再び利下げ期待が強まっており、直近では短期金利市場動向から見た利下げ割合が80%を超えるなど、利下げ見通しが大勢となっている。一部で据え置き期待も残っていることから、実際に利下げがあるかどうかが注目ポイント。また早期の追加利下げの可能性を残すかどうかも注目ポイントに。利下げが実施され、さらに今後の追加利下げに含みを持たせるようだと、豪ドル円は71円台への下落を意識する展開に。
米ISM製造業景気指数(9月)
10月01日23:00
☆☆☆
 前回8月の米ISM製造業景気指数は49.1と好況・不況判断の境となる50を、トランプ政権下で初めて下回る結果となった。前回はチャイナショックで金融市場への警戒感なども広がる中での50割れであったが、今回は米中通商摩擦問題を受けての50割れと見られている。内訳をみると、先行きの景気動向に影響が大きい新規受注が前回から3.6ポイントも一気に悪化しての47.2。雇用統計との相関で注目される雇用部門は4.3ポイント下げての47.4と、かなり弱い結果となった。今回は50台回復が期待されているが、予想外に前回並みもしくはそれ以下の数字が出てくると、一気にドル売りが進む可能性も、ドル円は107円台前半への売りを意識する展開か。
米雇用統計(9月)
10月04日21:30
☆☆☆
 前回8月の雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+13.0万人と、事前予想の+15.8万人、7月分の+15.9万人(+16.4万人から下方修正)を下回る弱い結果となった。内訳をみると、小売部門が7カ月連続で雇用減となっており、全体の押し下げる結果に。比較的人材の流動性が大きい部門であるが、景気動向に敏感な部門でもあり、警戒感を誘っている。一方で雇用全体の先行指標と言われるテンポラリースタッフ部門が4カ月ぶりにプラス圏に復帰するなど、明るい印象を与える部分も見られた。失業率は予想通りも、労働参加率が上昇する中で3.7%を維持したことで、こちらも好印象。今回の予想はNFPが14.5万人と前回から若干の改善期待も、水準的にはやや物足りず、年内追加利下げ期待を後退させるには至らないか。予想及び前回を下回った場合は、警戒感が広がり、ドル売りも。ドル円は107円台前半から106円台をうかがう動きもありそう。

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