2019年10月15日号

(2019年10月07日~2019年10月11日)

先週の為替相場

米中協議期待がドル円押し上げ

 10月7日からの週は、10日、11日の米中閣僚級通商協議への期待感がドル円を押し上げる展開となった。

 週の前半は中国側が知的財産権問題などを含めた幅広い合意には消極的との報道や、米国がウイグル自治区での人権問題に関連した中国企業の禁輸措置を発表などの動きが見られた。若干警戒感が広がる展開に。ドル円は107円を挟んだ水準での振幅となった。

 しかし、中国側による米国産農産品の輸入拡大の動きが報じられて、107円台後半まで上昇。香港紙が協議当日となる10日のアジア時間朝に、閣僚級通商協議の地ならしとして7日、8日に行われていた次官級協議で進展が見られず、閣僚級協議も1日で終了の見込みと報道。いったんドル売りが進む場面が見られた。しかし、閣僚級協議は11日も続くとの見込みを米紙が掲載したことで買い戻しが入るという神経質な動きに。

 その後は前向きな協議の進展見込みが報じられる中でドル買い円売りの動きが広がり、ドル円は108円台に。週末を前にトランプ大統領が中国とフェーズ1の合意に達したと発言。さらに買いが強まり、108円台半ばを超える場面まで見られた。

 具体的な合意文書作成まではまだ時間がかかるが、15日に予定されていた米国の対中関税引き上げについては先送りと報じられ、リスク警戒感が後退している。

 もう一つ大きな動きが見られたのがポンド。10日に行われた英国のジョンソン首相とアイルランドのバラッカー首相(用語説明1)の首脳会談で、焦点となるバックストップ関連で大きな進展があったとみられた。会談後の共同声明で「合意可能な道筋があることで一致」と示されたことや、バラッカー首相が今月中の合意が可能と発言したことなどが、ポンドの急騰を誘った。

 1.22台前半から1.24台まで上昇したポンドドルは、トゥスクEU大統領(用語説明2)が英国は現実的かつ実践的な提案を提出していないと、合意に消極的な発言を行ったことで少し調整。ただ、翌日のEUのバルニエ主席交渉官と英国のバークレイ離脱担当相との話し合いが建設的なものであったと報じられ、もう一段のポンド買いに。合意期待から一時1.27台まで大きく上値を伸ばしている。ポンド円も131円台から134円台まで10日の英愛首脳会談後に上昇し、さらに137円台後半まで上値を伸ばす展開に。

今週の見通し

 米中関係の改善期待がドル円の支えとなっている。12月15日に予定されている米国の対中関税第4弾の残りの部分(一部は先月実施済み)については現状では実施見込みが継続するなど、不安要素は残るものの、両国の前向きな姿勢が伝わったことでドル円、クロス円の支えに。

 今後の動向次第という面はあるが、中国での景気鈍化の動きや、米国の景況感悪化などを考慮すると、両国とも貿易戦争終息に向けた動きを強めてくる可能性が高く、市場の期待感は継続か。

 高値圏でのドル買いは避けたいが、109円超えに向けた動きを期待したいところ。ポンド円の買いがもう一段進むと上値トライに弾みがつく期待も。

 ポンドは、今月末のEU離脱期限を前に合意期待が継続。今週のEU首脳会合での合意は難しいとの見方が強い。ただ、臨時首脳会合の開催などを含めた対応が期待されており、合意なき離脱回避に向けた動きが強まっている。

 英国とEUの対立のもっとも大きな要因であるアイルランドと英領北アイルランドの国境についてのバックストップ問題で、当事国であるアイルランドが前向き姿勢を示している状況はかなり大きい。

 ポンド円は先週大きく上昇した後だけに不安定な動きも、流れ的には138円超えを意識したいところ。中期的なターゲットは140円台。

用語の解説

バラッカー首相 レオ・バラッカー(Leo Varadkar)。アイルランド首相兼同国与党フィナ・ゲール党首。2011年の総選挙で結党後初めて与党となったフィナ・ゲールは、当時の党首ケニー氏を首相に選出。バラッカー氏はケニー政権下で運輸・環境相、厚生相、社会保護相などを歴任。2015年の総選挙で、フィナ・ゲールは第一党の地位自体は守ったものの、大きく議席数を減らし、その責任を取ってケニー首相が辞任。その後の党首選を経てバラッカー氏がフィナ・ゲール党首兼首相に就任している。
トゥスクEU大統領 ドナルド・トゥスク(Donald Tusk)。二代目となる欧州理事会常任議長(通称EU大統領)。ポーランドの元首相で、首相在任中である2014年8月にファンロンパウ初代EU大統領の任期満了の後を継ぐ二代目大統領に選任された。今年11月30日をもって任期満了となり、ベルギーの首相であるシャルル・ミシェル氏が後任となる。

今週の注目指標

豪雇用統計(9月)
10月17日09:30
☆☆☆
 追加利下げを実施した今月の豪中銀理事会の声明でも警戒感が示された豪雇用市場。前回は失業率が予想外に悪化(上昇)、雇用者数自体は予想を大きく上回る伸びを見せた。ただ、内訳をみると非正規雇用が大きく伸びた一方で、正規雇用は1.55万人の減少と厳しい結果となっており、豪ドルの売りを誘った。今回は雇用者数の予想が+1.5万と前回の+3.47万人から鈍化見込み。失業率は前回並みの5.3%が見込まれている。予想前後の数字が出て、正規雇用の回復も顕著になるようだと、豪ドルには買い材料。豪ドル円は74円台回復も視野に。
EU首脳会合
10月17日18日
☆☆☆
 10月末の英国のEU離脱合意期限を前に、今週のEU首脳会合に注目が集まっている。10日のジョンソン英首相とバラッカー・アイルランド首相の会談で、合意に向けた期待感が一気に強まったが、実際の合意に向けては調整点が多く残っているとみられ、今週の首脳会合での合意の可能性は低い。EU議長国であるフィンランドのリンネ首相も合意に消極的な姿勢を示している。もっとも、首脳会議後も離脱協議を継続し、土壇場の妥協を図る可能性が指摘されるなど、前向きな姿勢は継続中。月末までのEU離脱に向けた動きが強まるともう一段のポンド買い。ポンド円は139円超えの動きも。
中国第3四半期GDP
10月18日11:00
☆☆☆
 米中通商摩擦に影響による景気鈍化が懸念される中国の第3四半期GDPが18日に発表される。前期は1992年以来の低成長となる前年比+6.2%となった同指標。インフラ投資の鈍化や通商摩擦や世界的な景気鈍化で外需がさえないことから、もう一段鈍化しての+6.1%が見込まれている。米中通商協議のフェーズ1合意が期待される中で、予想通りの鈍化であれば相場への影響は限定的も、予想を下回り6%を割り込むような結果になると、リスク警戒感からの円買いが強まる可能性。ドル円は107円台前半を意識。

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