2019年10月21日号

(2019年10月14日~2019年10月18日)

先週の為替相場

英国とEUの離脱修正案合意がポンド高に

 10月14日からの週は、円安が優勢な展開となった。市場の注目する二つの材料、米中通商問題、英国のEU離脱について、ともに前向きな動きが見られ、ドル高ポンド高円安の流れとなった。

 米中通商問題について、来月のAPEC(用語説明1)での米中首脳会談を前に、中国側が閣僚級の追加協議を要求などが週の初めに報じられた。当初はドル売り円買いに。ドル円は108円03銭を付けるなどの動きが見られた。

 しかし、英国のEU離脱協議の前向きな進展などを材料にリスク警戒の動きが収まり、ドル円でも円安が進んだ。週の後半には、先日合意が報じられたフェーズ1について、中国商務省は文書化作業を進めており、次のフェーズ2に向けての協議も行っていると、前向きな姿勢が報道され、ドル高円安に。ドル円は108円90銭台を付けるところまで上値を伸ばした。

 もっとも、政治主導の相場展開だけに、週末越えのポジション維持には慎重姿勢が見られ、金曜日海外市場でいったんポジション調整が入って、108円台半ば割れを付ける動きに。

 ポンドはブレグジットがらみで買いが強まる展開となった。

 17日、18日のEU首脳会合を前に、ぎりぎりの交渉が続いていた英国とEUの離脱協議は、15日時点で今日にも草案合意へとのニュースが流れ、市場の期待感を誘った。17日には離脱合意が報じられたことで、ポンドがもう一段高に。

 週の初めに1.2510台を付けていたポンドは、15日時点で1.28手前まで上昇。さらに17日には1.2990近辺と1.30目前まで上値を伸ばす格好となった。ポンド円も週初めの135円台半ばから15日に139円台前半まで大きく上昇。さらに141円台半ばまで上値を伸ばすなど、一気のポンド高に。

 北アイルランドの地域政党DUP(用語説明2)が離脱案に反対に回ったことで、英下院での可決が微妙になり、週末を前に少し値を落とした。しかし、ポンド円が140円を挟んでの振幅となるなど、高値圏を維持している。

今週の見通し

 ブレグジットがらみの不透明感が重石となっているものの、米中関係の改善期待は継続しており、ドル円はしっかり。108円台を中心に上値を意識する展開に。

 先週上値を抑えた109円手前の売りを崩せるかどうかがポイントとなりそう。

 来週のFOMCを前に米景気動向も気になるところであるが、今週はそれほど目立った経済指標の発表が予定されていない。また、FOMC前のブラックアウト期間に入っており、FOMC関係者からの発言も基本的には出てこない。そのため経済動向がらみの値動きは限定的で、政治相場が続く展開となりそう。

 米中通商問題に絡んだ要人発言には神経質になりそうで、大きな調整が入る可能性には注意したいところ。目先のターゲットは109.50-110.00だが、先に108円割れを試す可能性は十分にある。

 ポンドはEU離脱採決次第。

 離脱合意採決で過半数を確保できればポンドはもう一段の上昇へ。採決先送りを決めた19日の状況から、合意案の採決はかなりの僅差になりそう。22日に予定されている採決までは神経質な動きが見込まれる。DUPが賛成に回るなど、大きな流れの変化があれば、採決前にポンド高が進む可能性も。

 今回先送りを決めた修正案採決を棄権した議員や、修正案には賛成したものの、離脱自体には前向きな議員の取り込みに成功すれば十分に賛成多数となるレベルである。事前に大きな動きがなければ結果待ちの展開に。

 離脱案合意でポンド円は142円超えも。逆に否決された場合は、138円割れがありそう。ただ、EU側は否決された場合に備え、離脱期限の延長に向けて動いているとみられ、パニック的な動きは押さえられそう。

用語の解説

APEC アジア太平洋協力(会議)。アジア・太平洋21か国・地域が参加する経済協力の枠組み。1989年に始まり、日本、米国、中国、ロシア、豪州など同地域の主要な国が参加している。今年の議長国はチリで、11月16日、17日に同国サンティアゴで会議が実施される。
DUP 北アイルランドの地域政党である民主統一党。英保守党政権には閣外協力という形で与党勢力となっているが、バックストップの問題に関しては、北アイルランドのUK(連合王国)帰属を党是とする姿勢と合わず、メイ前首相時代から反対に回っている。現在の英下院で10議席を有している。

今週の注目指標

カナダ総選挙
10月21日
☆☆☆
 カナダの総選挙が21日に行われ、即日開票される。前回選挙では与党の自由党は、トルドー首相人気もあって、単独過半数を獲得した。しかし、その後首相のスキャンダルもあって、最大野党保守党との支持率が拮抗。直前世論調査では自由党が第1党を確保する見込みとなっている。過半数獲得にはかなり遠い情勢。連立政権樹立やハング・パーラメントでの少数与党政権樹立に向けて、今後のカナダ政局は不安定になりそう。政権の混乱はカナダ売り材料だけに、ドルカナダは1.32台回復に向けた動きも。
英下院EU離脱修正案採決
10月22日
☆☆☆
 19日に予定されていた英下院でのEU離脱修正案の採決は、修正案可決により先送りされる格好となった。ジョンソン首相は22日の採決実施を公言。採決を先送りさせた修正案の採決は322対306。今回棄権に回った議員の切り崩しに加え、先送りに賛成したものの、離脱自体には反対していない議員の票を加えると、ぎりぎりの攻防となりそう。離脱合意案可決で、これまで続いてきたブレグジット問題は一区切り、目先のポンド高に加え、中長期的にもポンド高が進む可能性がある。ポンド円は将来的に150円を目指す可能性mp。
ECB理事会政策金利発表
10月24日20:45
☆☆☆
 ドラギECB総裁にとって最後のECB理事会が行われる。政策金利の発表は24日20時45分。その後、総裁会見が21時半から実施される。前回の理事会で利下げや量的緩和再開を含む包括的な金融緩和の実施が決定したこともあり、今回は現状維持の見込み。注目は会見でこれまでのECBの姿勢についての総括や今後の見通しなどをどこまで示してくるか。緩和路線継続の雰囲気が高まるとユーロ売りも。ユーロ円は120円がターゲットに。

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