2019年10月28日号

(2019年10月21日~2019年10月25日)

先週の為替相場

ドル円は落ち着いた動き

 10月21日からの週、ドル円は比較的落ち着いた動きを見せた。109円手前の売りが意識されて上値は108円70銭台で抑えられる一方、108円台前半では買いが出る流れに。英国のEU離脱の不透明感に対する警戒感などが上値を抑えたものの、米中協議進展期待などが下値を支える展開。上下ともに動きにくい流れが続いた。

 週の前半はややドル安円高が優勢に。19日に予定されていた英国のEU離脱修正案の採決が先送りとなった。これで、週明け108円20銭台まで値を落とすなど、若干円高が進行。その後、108円台後半までいったん値を戻した。しかし、先週本格化した米四半期決算発表の中で、半導体大手の業績見通しが市場予想を下回ったことにより、ハイテクを中心に米株と日本株が軟調となった。再び108円20銭台を付ける動きに。

 もっとも、下値進行はそこまで。英国の合意なきEU離脱懸念は小さいとの思惑などがポンド円の買いを誘い、ドル円もしっかり。108円台後半に値を戻して、その後は週末まで108円台後半を中心としたレンジ取引に。

 ポンドはEU離脱がらみの思惑が振幅を誘った。19日に予定されていたEU離脱修正案の採決が先送りされ、週明けいったんポンド売りも、下値が限定的なものにとどまった。すると、21日の海外市場でポンドの買い戻しが優勢に。

 22日に英下院は法案の基本原則を審議する第2読会(用語説明1)で、EU離脱案を可決した。しかし、今月末のEU離脱合意期限内に批准するために必要な、関連法案の高速審議動議を否決。期限内の合意がほぼ不可能になった。これを受けてポンドはやや軟調に。21日に1.30超えを付けていたポンドドルは、一時1.2840近辺に。その後1.29台半ば手前まで買い戻しも、再び売りが出て一時1.28割れを付ける動きとなった。

 先週のECB理事会は、ドラギ総裁の任期中最後のものだった。前回の理事会で包括的金融緩和を決定したこともあり、今回は事前予想通り現状維持となった。その後の会見も目立ったところはなかった。ポンドの先行き不透明感が重石に。

今週の見通し

 イベントが目白押しだけに、結果を確認しての動きとなりそうだが、基調はドル高円安方向か。

 米連邦公開市場委員会(FOMC)では3会合連続となる利下げがほぼ確定的。CME通貨先物市場動向から計算された利下げ割合は直近で93%に達している。

 利下げは完全に織り込み済みで、注目は声明の内容に。実体経済の鈍化傾向などを警戒する表現が目立つようだと、次回以降の追加利下げの期待が広がり、ドル売りにつながる可能性も。

 また、米四半期GDP、雇用統計など事前予想から結果が大きく外れると市場の雰囲気が一変する可能性がある指標の発表も予定されているだけに要注意。

 ただ、基調はドル買い円売り方向か。下がったところでの買い意欲が強いこと、米中協議の進展期待が根強いことなどが、下がったところでのドル買い円売りを誘いそう。

 108円台でのレンジ取引を中心に109円台半ばを目指す動きが強まるきっかけを探す展開に。

 ポンドはEU離脱の状況次第。28日に英国を除くEU27か国はEU大使級協議を行い、3カ月の期限延期を検討する見込み。また、英政府は下院に対して解散総選挙を求める見込み。こうした流れが順調に進むとポンド買いに。ポンドドルは1.29台半ばが目先のターゲット。

 もっとも英国議会任期固定法(用語説明2)により、解散総選挙には下院の3分の2の賛成が必要で、野党第一党労働党の賛成がほぼ不可欠。労働党は現時点での解散総選挙に反対しており、混乱した状況が続くようだと、ポンド売りも。この場合1.2750が目炊きのターゲットに。

用語の解説

第2読会 英下院は法案の採決に際して3読会制を採用している。歴史的に日本や米国のような委員会審議ではなく、本院での審議を重視しており、採決に際して段階に合わせた審議が行われる。第1読会は法案名の朗読が行われ、各議員に配布される。第2読会で基本方針の審議を行う。可決された場合、第3読会までに出される修正案で、基本方針から外れたものは認められない。第3読会で最終審議となり、採決を経て法案が成立する。
英国議会任期固定法 第1次キャメロン内閣時代の2011年に成立した内閣の解散権を制約する法律。2015年の総選挙から有効となっている。この法律により、それまで首相の専権事項となっていた下院(庶民院)の解散について、下院の3分の2の賛成もしくは内閣不信任案の可決が必要となった。

今週の注目指標

米第3四半期GDP速報値
10月30日21:30
☆☆☆
 米国の経済活動状況を示す四半期GDPが30日に発表される。第1四半期は前期比年率+3.1%と好調な結果となった同指標。第2四半期は同+2.0%まで落ち込み、年3%成長を目標に掲げるトランプ大統領によるFRBへの利下げ圧力につながった。第3四半期の予想は+1.6%とさらに鈍化の見込み。前回+4.6%と全体を支えた個人消費が+2.5%まで鈍化すると見込まれており、輸出や設備投資の低迷も加わって厳しい数字となりそう。FRBへの利下げ圧力が一層強まりそうで、予想通りもしくはそれ以下の数字でドル売り圧力となりそう。ドル円は108円ちょうどトライの動きも。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
10月31日03:00
☆☆☆
 3会合連続での利下げが見込まれている。利下げを実施した直近2回の会合で、2名ずつの反対(金利据え置きを主張)が出たことや、前回のFOMCで公表された参加メンバーによる政策金利見通しで、金利据え置き派がそれなりに見られた。これらから先月時点では金利据え置き見通しもそれなりに残っていた。しかし、その後の米経済指標の弱さもあって、ほぼ完全に利下げを織り込む状況になっている。注目は声明と会見。12月のさらなる追加緩和の可能性が含まれる弱気な姿勢が出てしまうと、ドル売りにつながりそう。ドル円は107円台半ばトライも。
米雇用統計(10月)
11月01日21:30
☆☆☆
 米実体経済の鈍化懸念が広がる中で、雇用統計に対する注目度が高まっている。前回9月分は非農業部門雇用者数が+13.6万人と予想を下回るやや弱めの結果となった。ただ、8月分の数字が大きく上方修正されたことや、失業率が予想外に低下し約50年ぶりの低水準となるなど、好悪入り混じるものだった。今回は非農業部門雇用者数の予想が+9.0万人とかなり低めの数字が見込まれている。予想通りもしくはそれ以下の数字が出てくると、実体経済の鈍化の懸念が見られるが、雇用は堅調という元々の見方が後退。米景気の鈍化懸念が過熱する可能性がある。ドル円は107円ちょうど割れを意識する展開もありそう。

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