2019年11月05日号

(2019年10月28日~2019年11月01日)

先週の為替相場

FOMC後に調整進む

 10月28日からの週は、リスク警戒感からドル円にやや売りが入る展開となった。週の前半は堅調な動き。米S&P500(用語説明1)が史上最高値を更新するなど米株高の動きに支えられて、ドル高とリスク選好での円安が広がった。ドル円は一時109円台に乗せる動きに。

 週半ばに米FOMCと米第3四半期GDP、週末に米雇用統計と米ISM製造業景気指数と、重要な指標やイベントを控えていた。その中で、109円台での買いには慎重も、下値しっかり感の強い展開に。

 30日の米第3四半期GDP速報値は、第2四半期よりは低下したが、予想をしっかりと上回る好結果となった。FOMCを控えてドル買いは限定的も、堅調地合いを維持した。背景に、小売売上高などの動向からかなりの鈍化が見込まれた個人消費が、予想ほどの鈍化を見せなかったことがあった。

 同日(日本時間では31日午前3時)の米FOMCは、事前予想通り0.25%の利下げを実施。こちらは予想通りで市場の反応は限定的。ただ、今回の声明では、これまで追加利下げ見通しを誘っていた「適切に行動」との表現が削除された。「適切な金利の道筋を精査」と、当面の様子見を印象付ける表現となったことで、いったんドル買いに。短期金利市場動向から見た12月の追加利下げ見通しが、発表前のほぼ確定的との状況から、一気に20%前後まで低下。据え置き見通しが圧倒的になるほどの影響を見せた。

 ドル円は109円30銭近辺までと、直近高値を超えて上昇する場面も、すぐに値を落として108円台後半でのもみ合いに。買い一巡後のポジション調整の動きにも見られたが、109円台の重さが印象付けられる結果となった。

 その後は一転してドル安円高の動きが優勢に。109円台の重さが意識されて短期筋からのポジション調整が入った。そのほか、中国が米国との長期的・包括的な合意を疑問視との一部報道が、ドル売りを誘う格好となり、ドル円は108円割れを付ける動きに。

 107円89銭まで値を落とした後、108円ちょうど前後で米雇用統計(10月)を迎えた。雇用統計では非農業部門雇用者数が予想を上回り、前回値も大幅上方修正とまずまずの好結果に。この結果を受けて108円20銭台まで一時回復。ISM製造業景気指数(10月)は予想より弱めで、3カ月連続で節目の50割れも、9月分よりは改善で反応は限定的。株高などを受けたリスク選好の動きもあり、雇用統計発表直後よりもドル高を試すなど、ドルの買い戻しが少し優勢で週の取引を終えている。

 英国のEU離脱問題が注目されたポンドは、しっかりの展開に。週明け28日に、英国のEU離脱期限について、数週間の短期間の延期を主張していたフランスが、EU大統領やフランス以外のEU加盟各国が主張していた1月31日までの案を認めたとの報道が入り、ポンド買いのきっかけに。

 英保守党の主張していた12月の総選挙について、動議をいったん否決した英下院が、法案として再提出された29日に12月12日の総選挙を可決したこともポンド買いの材料となった。

 週初めの1.28ちょうどに近いところから1.2970台まで上昇したポンドドルは、その後1.29台での推移で週末を迎えた。

今週の見通し

 米中協議進展期待がドル円を支える展開に。

 米中閣僚級通商協議で大筋合意した米中協議の第一弾合意について、今月中の署名に向けた順調な動きが期待されている。もともとはAPEC(用語説明2)の場での米中首脳会談での署名が期待されていた。しかし、開催国のチリが国内情勢を理由に先週APEC首脳会談の中止を決定したことで、新たな署名の場を模索することとなっている。ただ、署名への動き自体は順調に進んでいるとみられている。

 米中の意見が対立している知的財産権や、強制的な技術移転の問題について、第一弾合意には含まれていないという見方が一般的(合意の詳細については、署名時に明らかになるとされている)で、中国側の輸入拡大、米国側の関税の一部撤廃などが中心とみられるだけに、署名への動きは今後も順調に進む可能性が高い。

 ドル円はしっかりとした動きが続くと期待されるところ。FOMC後のドル買い局面で109円台を維持できなかったように、高値からの買いにはなお慎重姿勢も、下値しっかり感が続けば、110円に向けた動きが強まると期待されるところ。

 ポンドは、12月12日の総選挙まで一服感。事前世論調査では保守党が優勢も、単独過半数を確保できるかどうかは不透明。ハングパーラメント(その政党も単独過半数を得ていない状況)で、連立先を探る展開になると、ブレグジット合意問題についてのごたごたが続く可能性も。世論調査動向などに注意しながらの展開が続きそう。もっとも、完全少選挙区制を採用する英下院は、全国的な世論調査だけでは票が読みにくい(選挙区ごとの偏りを加味する必要)。当面は1.28台後半を中心としたもみ合いか。

用語の解説

S&P500 格付大手S&Pグローバル・レーティングスなどを傘下に持つ米金融サービス会社S&Pグローバルとシカゴ・マーカンタイル取引所グループの合弁事業であるS&Pダウジョーンズインデックスが提供する米国を代表する株価指数の一つ。NY証券取引所(NYSE)、NYSE American、NASDAQに上場している銘柄から大型株を中心に代表的な米国企業500銘柄で構成された株価インデックス。
APEC アジア太平洋経済協力(Asia-Pacific Economic Cooperation)。アジア太平洋地域の多国的経済協力のために1989年豪州のホーク首相(当時)の提唱で、日本、米国、カナダ、豪州、NZなど13か国で発足し、現在21か国・地域からなる非公式な経済協力の枠組み。1993年から同枠組みでの首脳会議がスタートした。毎年持ち回りで議長国が変わり、2019年はチリが議長国として、同国の首都サンディアゴで11月16日17日に第31回APEC首脳会議が行われる予定だった。しかし、チリ暴動の激化を受けて開催が断念された。

今週の注目指標

豪中銀政策金利発表
11月05日12:30
☆☆☆
 豪中銀理事会の結果発表が5日12時半に行われる。豪中銀は今年6月、7月、10月の3回の利下げを実施。前回の理事会では雇用の鈍化に対する警戒感を示しつつ、必要であれば追加緩和の用意と示したこともあり、先月前半ごろまでは利下げ見通しと据え置き見通しが拮抗する場面が見られた。しかし先月17日に発表された9月の豪雇用統計において、正規雇用の伸びが著しく、失業率も改善と好結果が示されたことで、利下げ期待が後退。直近では据え置き見通しでほぼ一致する状況となっている。注目は声明で、雇用情勢について前向きな姿勢が示されると、豪ドルの買いにつながる可能性がある。豪ドルは対ドルで0.70を意識する展開に。
ISM非製造業景気指数(10月)
11月6日00:00
☆☆☆
 1日の製造業に続き、5日(日本時間6日午前0時)に10月のISM非製造業景気指数が発表される。前回9月分は予想を大きく下回り、2016年8月以来の低水準となる52.6と、節目の50は上回ったもののかなり弱めの結果となった。新規受注が大きく低下し、3年ぶりの低水準。雇用も低下し、5年8か月ぶりの低水準を記録した。今回は53.5と前回からは回復も水準的には低め。1日の製造業景気指数が前回からは改善も予想を下回る冴えない結果となった後を受けて、予想前後もしくはそれ以下の数字が出てくると、ドル買いの勢いをそぐ可能性。特に前回を下回って50を割り込むような大きな動きが見られると一気のドル売りが入る可能性があるだけに要注意。この場合ドル円は107円台への下落が予想される。
英中銀政策金利発表
11月07日21:00
☆☆☆
 英中銀金融政策会合(MPC)の結果発表が7日に行われる。今回は議事録に加えて四半期インフレ報告が発表され、カーニー総裁の会見が実施されるいわゆるスーパーサーズデーにあたっている。とはいえ12月12日にブレグジットの行方を左右する重要な総選挙を控えており、現段階で金融政策の変更余地はほとんどない。注目は総裁の会見で、合意の上でのブレグジットが実施された場合の、来年以降の利上げの可能性についてどこまで言及してくるのかなどがポイントに。もっとも、先月メディアでのインタビューでカーニー総裁は世界的な景気の不透明感などを背景に利上げには慎重な姿勢を示しており、期待は薄い。前向き姿勢が目立つようだと、利上げには至らずとも、来年の利下げ期待が後退する形でポンドはしっかりとなりそう。ポンドドルは1.30超えを期待したいところ。

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