2019年11月11日号
先週の為替相場
FOMCドル高強まる
11月4日からの週は、米中通商協議の進展期待などを材料にドル高円安が進む展開となった。米中通商協議第一弾合意への期待感が高まり、週明けからドル円はしっかり。米中要人が同協議について前向きな進展を強調する中、習近平中国国家主席が訪米に前向きなどの報道がドル円を押し上げた。
5日のISM非製造業景気指数は、1日の米ISM製造業景気指数が弱めに出たことで事前に警戒感が見られた。だが、予想を超える好結果となったことで、ドル買いに安心感が出た面も。
その後、ドル円は109円台を回復。ただ、米中首脳会談は条件と場所の交渉が難航し、12月に延期との報道が入り、一時108円台に値を落とす場面が見られた。
しかし、7日のロンドン市場の朝に中国商務省が米中は段階的関税の撤廃で合意と発表。一気にドル買い円売りが進行。109円半ば手前まで上値を伸ばす展開となった。その後は週末まで109円台での推移。
トランプ大統領の米国は中国と関税撤廃で合意していないとの発言などが重石も、109円台を維持して週の取引を終えている。
ユーロは対ドル、対円で軟調。ユーロドルは1.11台後半から1.10台前半まで値を落とした。米中協議の進展期待でドル全般に買いが入ったことがユーロ売りドル買いを誘った。また、6日にIMFが欧州経済見通しを引き下げ、7日には欧州委員会がユーロ圏成長見通しを引き下げるなど、欧州景気動向への悲観的な見方がユーロの重石となっていた。
ポンドも対ドル、対円で売りが優勢に。週半ばまではユーロにつられる形でのポンド売りが目立ったが、スーパーサーズデー(用語説明1)となった7日の英中銀金融政策会合(MPC)を受けてポンド自体にも売りが出た。
政策金利の現状維持を決めたMPCでは、これまでの全会一致での決定ではなく、2名の委員が利下げに投票した。うち一人は、これまでタカ派とみられていたサンダース委員(用語説明2)で、市場の警戒感を誘った。また、四半期インフレ報告では1年-3年先にわたってインフレ見通しを引き下げた。特に1年後のインフレ見通しは前回8月時点での1.90%から1.51%に大きく引き下げられており、インフレターゲットの2.0%に遠いこともあり、市場の早期利下げ期待が強まる形でポンド売りを誘った。
今週の見通し
ドル円はしっかりも不透明感残る。
米中通商協議の進展期待は継続。第1弾合意の署名については、調印が来月に先送りされること自体は不安材料であるが、合意自体は成立するとの期待が強い。ただ、両国とも条件交渉で少しでも自国に有利な形に持っていきたいとの意識が当然あり、市場の警戒感を誘っている。
8日に香港のデモで初の死者が出たことも、米中協議進展の不安材料に。先月15日に下院で全会一致により可決した香港人権法案の、上院での採決(採決自体が行われれば、可決される可能性が高い)に向けた動きが加速しそうで、米中関係の圧迫材料となりうる。大統領が拒否権を発動したところで、議会での投票状況から議会が拒否権を覆して法案が成立するだけの票数を有しており、中国側の不満を誘いそう。
こうした状況が上値でのドル買い円売りに慎重な姿勢を誘っている。ただ、下がったところでは買いが出る流れが続いており、基調はまだ上方向。
今年3回目の利下げを決めた米FOMCで、当面の金利据え置きを印象付ける声明の変更が見られたこともあり、ドル高基調が継続。その後の米主要指標の好結果もドル高基調を後押ししている。
ドル円は108円台から109円台半ばのレンジを中心に、110円台トライのタイミングを探る展開か。108円台割れではいったんポジション調整売りが強まると見られ、レンジを超える動きには要注意。
用語の解説
スーパーサーズデー | 英中銀は年8回行われる英中銀金融政策会合(MPC)の結果発表において、2月、5月、8月、11月のMPCでは、通常の結果、声明、議事要旨の発表に加えて、四半期インフレ報告を同時に発表。カーニー中銀総裁の会見を発表の30分後に実施する。この年に4回しかない機会をスーパーサーズデーと呼ぶ。金融政策の大きな変更はこのスーパーサーズデーの時に実施されることが多い。 |
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サンダース委員 | マイケル・サンダース(Michael Saunders)。英中銀金融政策会合(MPC)の9名の委員は、総裁、副総裁を含む5名の英中銀内部の委員と、4名の英中銀外部の委員から構成される。サンダース委員は外部委員の一人。2017年、2018年に一度ずつ英中銀が利上げを実施した際には、二回とも実際に利上げを決めたMPCの3会合も前から一人で利上げを主張するなど、利上げに積極的なタカ派の委員とみられていた。 |
今週の注目指標
NZ中銀政策金利発表 11月13日10:00 ☆☆☆ | 今年の5月、8月と二度の利下げを実施したNZ中銀。8月の利下げは一気に0.50%の引き下げを行う積極的なものとなった。その後も必要とあれば利下げを実施する姿勢を崩しておらず、今回の会合での中銀の決定に注目が集まっている。5月に利下げして、次の6月は据え置き、8月に利下げして次の9月は据え置きという状況。周期的にも利下げが実施されてもおかしくないところ。9月の理事会声明では、インフレ・雇用の目標を達成するために必要であれば追加的措置という姿勢が示された。そうした中、今月初めの第3四半期NZ雇用統計は失業率が第2四半期の3.9%から4.2%に悪化。市場の利下げ期待を強める格好となっている。もっとも短期金利市場動向から見た利下げ割合は60%前後と、据え置き期待も40%程度残るなど、見通しはかなり分かれている。利下げ、据え置きどちらになってもNZドルは動きを見せそう。利下げが実施された場合NZドル売りが強まり、NZドル円は68円前半を試す展開もありそう。 |
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米消費者物価指数(10月) 11月13日22:30 ☆☆☆ | 12月の米FOMCでの金利据え置き期待が強まっているものの、利下げ期待もある程度残るなど、見通しが交錯する状況。米FRBの二大責務の一つである物価の安定に絡んで、消費者物価指数への注目度が高まる展開に。予想は前年比+1.7%、エネルギー・食料品を除くコア前年比が+2.4%と前回と同水準の数字が見込まれている。前回は総合+0.0%、コア+0.1%と弱めに出た前月比も、今回は+0.3%と+0.2%と持ち直しが見込まれている。予想前後の数字が出てくると、利下げ期待を若干後退させ、来月の金利据え置き見通しをサポートしてきそう。109円台を中心としたドル円の堅調な地合いをサポートする材料となりそう。 |
米小売売上高(10月) 11月15日22:30 ☆☆☆ | 米GDPの約7割を占める個人消費の動向を反映することもあり注目度が高い同指標。前回9月分は予想に反して前月比マイナスとなる-0.3%と、かなり弱い結果となった。GDPとの相関が特に高いといわれる自動車・ガソリンスタンド・建築資材・飲食店を除いたコア指数は+0.0%と、こちらも予想の+0.3%より弱く、米国の個人消費に対する警戒感につながった。今回は+.0.2%と持ち直しが期待されている。予想通り個人消費の持ち直しが見られると、来月のFOMCでの金利据え置き期待につながり、ドル買いの材料となりそう。ドル円が109円台後半を試すきっかけとなる可能性も。 |
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