2019年11月25日号

(2019年11月18日~2019年11月22日)

先週の為替相場

大きな方向性生じず

 18日からの週は、108円台半ばを中心としたレンジ取引が続き、大きな方向性の見られない展開となった。

 週初はまずドル高円安の動き。15日に報じられたクドロー米NEC(米国家経済会議)委員長の「米中協議の第一弾合意、取りまとめが近い」との発言以降のドル高円安基調が継続。週末の英国での世論調査で与党保守党が最大野党労働党などとのリードを広げ、単独過半数確保の見通しが強まったことによるポンド円の上昇などもドル円を支えた。

 ドル円は13日以来の109円台に乗せる動きを見せたが、109円台での買いには慎重姿勢が見られ、すぐに値を戻す動きに。さらに、米CNBCの中国支局長が「中国政府は合意を悲観的にみている」とSNSに投稿し、一気にドル売りが進行。ドル円は108円台半ばに値を落とした。

 その後は108円台でのもみ合いが続いた。ただ、株高などを背景に108円80銭台を回復の方向も続かず。香港人権法案が19日に米上院で、20日に米下院で可決されたことで108円30銭割れまで値を落とす場面となったが、ドル売りは続かなかった。

 21日には米中通商協議の中国側代表者である劉副首相が、米中通商協議について慎重ながらも楽観的という見方を示したこともあり、108円台後半に戻されてのもみ合いに。

 週の後半にかけてはポンド売りが広がる場面が見られた。世論調査で保守党のリードが広がったとの報道を受けて、先週初めはポンド高が優勢に。ポンドドルは1.2985近辺まで上値を伸ばす展開が見られた。19日の英ITVでの党首討論会を前に調整が入る場面も見られたが、その後1.2970近辺を付けるなど、基本的にはしっかりの展開。

 もっとも21日に出された労働党のマニュフェストで、富裕層向け増税や、インフラの国有化などが示された。労働党への支持が一般市民層から強まる見通しがポンド売りを誘い、高値から調整。

 さらに22日の英PMIでは製造業・非製造業PMIがともに予想を下回っただけでなく、景気の好況・不況の判断の境となる50を下回る弱い結果となった。一気にポンド売りが進行。ポンドドルは1.2820台まで値を落とす展開に。週初に141円台、いったん調整が入った後も21日に140円90銭台まで上昇していたポンド円が139円30銭台を付けるなど、ポンド安が広がった。

 21日の南ア中銀金融政策理事会は、大方の予想通り金利を据え置き。投票は3対2と市場の予想よりも利下げ圧力が強いことが示されたが、声明でインフレ見通しはほぼ均衡と示していた。早期の利下げ見通しが後退したこともあり、相場への影響は限定的に。

今週の見通し

 感謝祭ウィークで積極的な動きは出にくい。

 今週木曜日28日は米国が感謝祭(用語説明1)の祝日。翌29日は平日ではあるが、株式・債券市場は短縮取引となり、休みを取って連休にしている参加者も多いこともあって、週の後半にかけてはお休みムードが広がりそう。

 米中通商協議動向をにらみながらの展開が続く中で、長めの週末をはさんだポジション維持には慎重姿勢もあり、積極的な取引は手控えられそう。

 ドル円は108円台後半を中心としたレンジ取引が中心か。108円台半ばからの買い意欲が継続しており、基調はしっかりも、上値を積極的に買い上げる勢いにも欠ける展開に。

 米中協議で新たな展開が見られると流れが一気に変わる可能性がある。ただ、米国・中国両国とも、第一弾合意に関しては基本的に前向きな姿勢を示しており、目立った新規材料がなければドル買い円売りの流れが継続しそう。

 先週末PMIの弱さもあって値を落としたポンドは、来月の選挙をにらんでの展開が続きそう。

 先週の党首討論会での評価はほぼ五分五分で党勢の変化は見られず。最新世論調査でも保守党が労働党に10%以上の差を付けている。ただ、選挙前のポンド買いには慎重姿勢も。

 前回の英中銀金融政策会合(用語説明2)で2名が利下げを主張。秩序だったEU合意が成立すると英中銀は徐々に利上げにシフトというこれまでのシナリオが崩れてきている。基本的に保守党が単独過半数確保でポンド買いという流れは変わらずとみられるが、突っ込んだ買いには慎重姿勢。リスクは下方向か。ポンド円は139円割れで下げが強まる可能性も。

用語の解説

米感謝祭 イギリス植民地時代に感謝の祝祭として始まった米国の祝日。11月の第4木曜日と定められている。NY州では当日のみが祝日となるが、多くの州では翌日の金曜日も祝日となる。また、米株式市場、債券市場が金曜日は短縮取引となることや、木曜日から休みを取っている市場参加者が多いことなどから、週の後半にかけて米国市場はお休みムードとなる。
英中銀金融政策会合 英中銀金融政策会合(MPC)は、英中銀が年8回開催する英国の金融政策を決める会合。中銀総裁・副総裁を含む9名の委員での多数決で政策が決定される。議長・総裁の権限が強く、事実上議長提案の信任投票となり、否決される例がまずない日銀、米FRB、ECBなどと違い、英中銀のMPCは議長提案であっても否決されるケースがあることで知られており、各メンバーの動向がより重要となる。

今週の注目指標

独Ifo景況感指数(11月)
11月25日18:00
☆☆
 ドイツ5大経済研究所の一つIfoが全独約9000社に対するアンケート調査を基に算出する景況感指数。ドイツの経済指標の中でもっとも注目されているものの一つ。前回10月の同指標は悪化予想に反して9月と同水準に。また、内訳のうち先行きの見通しを示した期待指数が7カ月ぶりに改善するなど、ドイツの景況感に明るい兆しが見えていた。今回の予想は95.0と前回の94.6からの改善が期待されている。予想通りもしくはそれ以上の結果が出るとユーロ買いを誘い、1.10台半ばを回復するきっかけとなる可能性も。
米PCEデフレータ(10月)
11月28日00:00
☆☆☆
 今年3度目の利下げを決めた前回の米FOMCでの声明で、当面の状況確認が示唆されたことで、当面の米政策金利の据え置き期待が広がっている。もっとも、ここにきて雇用市場が鈍化傾向を示し、通商問題の不透明感が継続する中で、早期の利下げ期待も根強い。こうした状況のもと、雇用と並ぶ米FRBの二大責務である物価動向にも注目が集まるところに。PCEデフレータに比べて発表が早く(10月分は13日に発表済)、傾向が似通るCPIに注目が集まる傾向があるが、米国のインフレターゲットの対象であり、FRBが最も注目している物価統計はPCEデフレータだけに、今回の結果に要注目。10月のCPIは食品とエネルギーを除いたコアの前年比が予想外に鈍化したが、CPIに比べてPCEデフレータでは全体に占める割合が低い住居費関連の影響が大きいこともあり、今回のPCEデフレータの予想は前回並みとなっている。予想に反してCPI同様に鈍い数字を示すと、利下げ期待を押し上げる形でドル売りも。ドル円は108円台前半を試す可能性。
ブラックフライデー
11月29日
☆☆
 感謝祭の翌日の金曜日は米国の年末商戦が本格スタートする日となっており、全米の小売店が黒字になる日という意味もあってブラックフライデーと呼ばれている。米国の個人消費の勢いを確認する意味でも重要な日となっている。ここにきて個人消費との関連が深い雇用市場がやや鈍いこともあり、ブラックフライデーの動向が注目されるところに。市民の財布のひもが固いようだと、米景気の鈍化懸念につながる。来週以降のドル売りに寄与しそう。ドル円は108円台前半から107円台をうかがう流れも。

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