2019年12月09日号

(2019年12月02日~2019年12月06日)

先週の為替相場

ポンド高優勢に

 12月2日からの週、ドル円は高く始まったものの、週前半に調整が入る展開となり、その後はもみ合いに。目立ったのはポンドの買いで、ポンドドルは1.2900割れから1.3160台まで上昇する展開に。12日の英下院選挙で、与党保守党が単独過半数を確保する可能性が高いという見方が、ポンド買いを誘っている。

 ドル円は2日東京市場午前に5月30日以来となる109円70銭台まで上値を伸ばす場面が見られた。米中通商協議の進展期待などがドル円の支えに。110円手前の売りに頭を押さえられ、高値圏でもみ合った。その後、同日の米ISM製造業景気指数が予想及び前回値を下回り、ドル売り円買いに。米トランプ大統領がブラジルとアルゼンチンが通貨安を誘導しているとして、両国から輸入する鉄鋼とアルミニウムに対する関税を復活させる意向を示した。これもドル円の重石となった。

 翌3日にはトランプ大統領が米中通商協議について、合意を急がないという姿勢を示した。このことでドル売りが加速し、108円台半ばまで値を落とす展開に。

 その後は108円台半ば割れでは買いが入るものの、戻りも109円ちょうどまでと、上値を抑えられる形で推移。米ADP雇用者数、ISM非製造業景気指数などの弱さもあって、108円50銭台まで値を戻して注目された米雇用統計を迎えた。

 雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想を大きく超えて26.6万人増を示す好結果となった。直近の関連指標が軒並み弱く、市場は予想を下回る可能性を意識していたが、大きなサプライズとなって108円90銭台まで。

 米株も大きく買われるなど、米雇用統計を好感する動きが見られた。しかし、ドル円の上昇は続かず。109円に届かずに調整が入り、108円50銭台と発表前の水準に戻して週の取引を終えた。

 ポンドは週前半から買いが続いた。12日の英下院選挙を意識した展開が続く中、ジョンソン首相率いる与党保守党が優位に選挙戦を進めていることがポンドの買い材料に。単独過半数を大きく上回る議席を確保するとの見通しが広がった。これで、EU合意の議会での可決と秩序だったブレグジット実施への期待感が広がっている。

 2日の1.29割れから、週後半には1.3160台まで上昇。米雇用統計を前にしたポジション調整に1.3110台まで値を落とし、その後1.3100近辺まで値を落としたが、1.3140近辺まで買い戻されて週の取引を終えている。

今週の見通し

 米連邦公開市場委員会(FOMC)と英下院選挙をにらむ展開。

 直近3会合連続で利下げを実施しているFOMCだが、前回の声明でこれまでの利下げ継続路線を示していたと捉えられていた「持続的な経済成長のため適切な行動をとる」との文言が削除され、「適切な道筋を精査」との文言が加わった。これで、当面の据え置き見通しが広がっている。直前での見通しは据え置きでほぼ一致。さらに要人発言動向などからも据え置きが濃厚という状況に。

 注目は来年以降の利下げ再開について。声明や参加メンバーによる見通し(プロジェクション・用語説明1)、議長会見などへの注目が集まっている。

 先週末の雇用統計が強めに出て、米景気の鈍化懸念が後退。さらにFOMCで強気な姿勢が示されると、来年一年の金利据え置き期待が広がり、ドル高が強まる可能性も。

 ドル円は109円台をしっかり回復し、110円を目指す展開も期待される。

 英下院選挙ではジョンソン首相率いる与党保守党が単独過半数を確保するかがポイントに。

 2016年6月の英国民投票で決定したブレグジット(英国のEU離脱)は、メイ前首相がまとめたEU離脱案の議会承認が進まず、当初の予定を延長して問題が長引いている状況。

 ジョンソン首相は、今回の総選挙で当選した場合、EU離脱案に賛成する誓約を保守党の候補者全員から得ている。単独過半数を確保すると、下院での可決が確定的。上院(用語説明2)は一般的に否決しないため、EUとの合意のある秩序だった離脱が実現することとなり、ポンドにとっては買い材料に。

 すでに織り込みが進んでいることもあり、ポンド高の動きはある程度落ち着いたものとなると予想される。ポンドドルで1.33を目指すような動きが期待されるところに。

用語の解説

FOMCメンバーによる見通し 米FRBは年8回開催されるFOMCのうち、半分の4回(3月、6月、9月、12月開催分)のFOMCで、参加メンバーによる経済成長率、失業率、物価、政策金利水準の見通しを、3年先までの各年末時点及びより長期という期間で示したプロジェクション・マテリアルを公表する。今回であれば、2018年、2019年、2020年、2021年および長期の見通しが示されることとなる。また、この中で政策金利水準見通しに関しては、各参加メンバーの見通し水準をドットで示したドットプロットも併せて示される。FOMCでの投票権を持たない地区連銀総裁の分も含まれていること、どのドットが誰の予想であるかは示されていないことなどから、あくまで全体の傾向がわかるだけであるが、来年にかけてのFOMCの姿勢がはっきりとわかることもあり、注目を集めている。
英上院 正式には貴族院(House of Lords)。公選制である下院(庶民院)とは違い、貴族による終身制での議会。1999年の改革前まで世襲貴族はすべて貴族院に議席を有していたが、改革後は一部を除いて議席を失っており、一代貴族によって議席が占められている。ソールズベリー・ドクトリンにより、下院選挙で与党がマニュフェストに記載し、選挙を受けたうえで下院を通過した法案に関して、貴族院は否決や大幅修正することができないと定められており、今回の選挙で保守党が勝利し、EU離脱案を下院で可決させた場合、貴族院が阻止することは出来ない。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI・11月)
12月11日22:30
☆☆☆
 雇用統計が強めに出たことで、物価がしっかりした数字を示すと、利下げ期待はさらに後退する状況。前回10月分は食品およびエネルギーを除いたコアの前年比が予想及び前回を下回る+2.3%にとどまった。要因は住宅関連の物価低迷。今回はコア前年比が前回と同じ+2.3%、総合が前回から+0.2%ポイント上昇の+2.0%が見込まれている。米国のインフレターゲットの対象はCPIではなく。PCEデフレータ。しかし、両指数とも変化の傾向は似ており、予想通りもしくはそれ以上の物価上昇傾向が見られるとドル買いに。ドル円は109円を意識する展開も。
米FOMC
12月12日04:00
☆☆☆
 直近3会合連続で利下げを実施している米FOMC。前回の声明で利下げの継続を示していたと市場が見ていた「適切な行動をとる」との表現がなくなり「適切な道筋を精査」との文言が加わった。これで、今回は据え置きとの見通しが広がっている。注目は声明内容と、参加メンバーによる景気・物価・政策金利の見通し(プロジェクション)。声明では前回示された「適切な道筋を精査」の表現が残るか、またほかに強気な表現があるかがポイント。プロジェクションでは、来年の利下げがどこまで見込まれているのかが焦点になりそう。今後、当面の金利で据え置くことが見込まれる内容が出ると、ドル円は109円超えが意識される。
英下院選挙12月12日
☆☆☆
 1月31日のEU離脱期限までに離脱実施を目指すジョンソン首相率いる保守党と、国民投票のやり直しを目指す最大野党労働党、ブレグジット自体に反対する自由民主党やスコットランド国民党などの対立が強まった。ハングパーラメント(どの政党も単独過半数を確保していない状況)の英議会では進展しなかったため、英下院は12日に総選挙を実施することとなった。世論調査では保守党が単独過半数を確保する勢いとなっている。しかし、単純総選挙区制での議席数の予想にはかなりの誤差が付きまとい、さらに連合王国を構成するイングランド以外の3か国ではそれぞれの地域政党の勢いが強い。つまり英国全体の支持率がそのまま議席数の差にならないため、選挙は波乱含み。予想通り保守党が単独過半数を確保するとポンド買いの材料となる。しかし、保守党が単独過半数を確保できず、再びハングパーラメント状態になると、期限までの離脱合意が難しくなり、混乱からポンドが売られる可能性も。ポンドドルは1.30割れも視野に。

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