2019年12月16日号

(2019年12月09日~2019年12月13日)

先週の為替相場

米中合意と英保守党圧勝

 12月9日の週は注目されるイベントが多かった。特にに今年1年を通しての注目材料だった米中通商協議と英国のEU離脱問題。これらの大きな進展は、相場に大きな影響を与えた。

 米中通商協議は12日のNY市場で第一弾の原則合意が報道され、トランプ大統領がその合意を承認したとその後報じられて、ドル高円安を誘った。

 それまでドル円は、108円台半ばを中心にした狭いレンジでのもみ合いが続いていた。しかし、原則合意報道を受けて一気に109円台前半に上昇。さらにトランプ大統領による承認のニュースに109円40銭台まで上値を伸ばした。

 同じ12日に行われた英下院選挙(用語説明1)は日本時間13日午前7時に投票が締め切られた。すぐ後に、英国営メディアBBCなどが出口調査(用語説明2)の結果について、保守党が単独過半数となる326議席をはるかに超える360議席超の議席を獲得する見込みであると圧勝を報じた。これでポンドが急騰。出口調査による見通しにはある程度の誤差が生じる。そのため、接戦であれば実際の開票が進むまで市場の反応は微妙なものになるのではないかと思惑が広がっていた。しかし、ある程度誤差があっても、単独過半数超えはまず確実という状況になった。

 選挙前までポンドドルは1.31台を中心とした推移が続き、投票締め切り直前の木曜日のNY市場では調整の動きから1.30台半ばを付けていた。この出口調査の結果で一気に1.34台。さらに1.3510台までの急騰となった。その後も高値圏での推移が続いた。しかし、週末を前に短期的な行き過ぎ感への警戒もあり、NY市場午前に1.3300近辺まで値を落とし、1.33台前半で週の取引を終えている。

 ポンド円も同様で143円前後での推移が続いた。調整もあって142円台半ば割れを付けていたが、選挙後には148円手前までの急騰に。その後145円台半ばまで値を落として週の取引を終えている。

 ラガルド新総裁にとって初めてのECB理事会が12日に行われた。ユーロは、対ドルでしっかりの展開に。景気について底打ちに暫定的な兆しとの発言がユーロ買いを誘った。また、その後ポンドの急騰につられる形で一気に上昇。先週初めの1.10台半ばから1.12手前まで上値を伸ばす場面が見られた。その後調整が入り1.11台前半で週の取引を終えている。

今週の見通し

 主要なイベントが一服し、次の方向性を探る展開に。

 米中通商協議の第一弾合意自体はドル買い材料。懸念された15日からの両国での関税引き上げが回避されたことで、決定的な両国間の関係悪化が避けられたとして、ドル円、クロス円はしっかりとした展開となっている。

 もっとも、合意内容自体はそれほど踏み込んだものではない。米紙が当初報じた米国の対中関税引き下げや、中国の農産物購入拡大については、段階を踏んで状況を確認しつつとなる見込みで、ドル円の上値を積極的に買い上げるだけの勢いに欠ける材料となっている。

 英ブレグジット問題も、合意なき離脱の可能性がほぼ払しょくされ、1月31日の期限までに先に合意したEU離脱協定に沿って離脱が正式に決まる可能性が高まったことはポンド買い要因。ただ、ここから英国・ユーロの経済にどのような影響が出てくるか、貿易協定などはどのように決まってくるのかなど、不確定要素も多い。そのため一段のポンド買いには慎重姿勢も。

 年末が近いとあって、こうした材料に大きな進展がなく、もみ合いが続く可能性が高い。特に来週はクリスマスウィークであり取引参加者も極端に減ることから、年内は落ち着いた動きが続く可能性も。

 ドル円は基本的にしっかりも、110円手前の売りを崩せるかは微妙。109円台でのレンジ取引を中心に、上値への期待感を残す展開が見込まれる。

 ポンドドル・ポンド円はもう一段の上方向を期待。短期的な行き過ぎ感には要注意で、調整の動きを交えながら、選挙後の高値を更新する動きを期待したいところ。

用語の解説

英下院選挙 二院制を採用する英国議会のうち、庶民院(下院)の議員を決める選挙。定数は650で、単独過半数は326議席となるが、歴史上の経緯から議会に登壇しないシンフェイン党の議席分や、投票に参加しない議長団の分がある。そのため、議会での事実上の過半数は若干少ない。英国全土を650の選挙区に分けて選挙区でトップの得票を得た候補者が議席を得るという単純小選挙区制度。上院である貴族院は非公選制による終身制度のため、国政への民意の反映は下院に限られる。下院は上院に対して優越権を持っている。
出口調査 各地の投票所で、投票を終えた有権者を対象にアンケート調査を行い、その結果を基に議席数を予想するもの。英国政選挙の場合、国営メディアBBC、英民放大手ITV、スカイが共同で調査を実施。2016年の国民投票では票数を読み違えて、当初ブレグジットは否決されたと報じる場面が見られた。国政選挙では、ある程度の誤差はあるものの、比較的正確な結果を示している。今回の英下院選挙では、出口調査は保守党368議席、労働党191議席となっていたが、結果は保守党365議席、労働党202議席であった。

今週の注目指標

豪雇用統計(11月)
12月19日09:30
☆☆☆
 前回、雇用者数が予想外に1年5か月ぶりの減少となるなど、厳しい結果となった豪雇用統計。正規雇用、非正規雇用がともに減少しており、雇用市場の弱さを印象付けた。豪中銀は今年に入って3度の利下げを実施したものの、依然として豪経済は厳しい状況。今月3日の豪中銀金融政策理事会では金利が据え置かれたが、市場では年明けの早い段階での追加利下げ期待が高まっている。追加利下げが行われるかどうか、大きなカギとなる雇用市場動向にも注目が集まるところ。今回は雇用者数が+1.50万人と比較的しっかりとした数字が期待されている。予想通りの回復を示すと豪ドルのサポートとなる。一方、前回同様に予想を下回り、マイナス圏にまで沈むと、一気の豪ドル売りもありそう。この場合、豪ドル円は74円台半ば割れも視野に。
英中銀金融政策会合(MPC)
12月19日21:00
☆☆☆
 英総選挙で与党保守党が圧勝し、EU離脱協定の議会通過と、秩序だった離脱が期待される状況で、英中銀金融政策会合(MPC)の判断が注目されるところ。今年前半は合意なき離脱が回避されれば利上げへの動きが強まるという見方が強かったが、同問題が長引き、不透明感から英経済の鈍化が懸念される中で、直近会合では2名の利下げ主張者が出る状況に。状況の変化を受けて利下げ主張者が減ればポンド買い材料となりそう。ポンドドルは1.35台にしっかり乗せる動きも。
米PCEデフレータ
12月21日0:00
☆☆☆
 米FOMCでの当面の金利据え置き期待が強まっているが、一部では利下げ期待も残っており、カギを握る雇用や物価関連の指標に対する注目度は高い。米国の物価関連統計では消費者物価指数(CPI)の注目度が高い。しかし、インフレターゲットの対象であり、FOMCでのプロジェクションマテリアルでも先行き見通しの対象とされている物価統計はあくまでPCEデフレータである。前回は総合・コア共に前年比が予想を下回るやや弱めの数字となった。今回は総合が0.1%ポイント上昇も、コアは逆に0.1%ポイントの下落が見込まれている。CPIは総合が10月の+1.8%から一気に0.3%ポイントも上昇する結果となった。しかし、PCEではCPIよりも寄与度が低い住居費の上昇が背景にあり、PCEでは上昇が抑えられる見込み。燃料油の価格上昇なども総合の上昇に寄与したが、食品とエネルギー価格を除くコアではCPI同様にややさえない数字に。市場の利下げ期待を押し上げるほどの勢いはないが、利下げへのハードル自体は下がっている状況。予想通りだと反応は難しいが、若干のドル売り材料として109円台後半からの重さが意識される展開に。

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