2020年01月06日号

(2019年12月30日~2020年01月03日)

先週の為替相場

中東情勢緊迫化

 12月30日からの週は円高が強まる展開となった。年末時点ではドル安円高の動き。2019年の年初にフラッシュクラッシュ気味に104円台までドル安円高が進行したこともあって、年末年始の市場を前にして、ポジション調整の動きが広がった。

 年末を前にした欧州通貨買いドル安のフローが入ったともいわれ、ユーロドルが1.1220台を付けるなど、ドルは全面安基調に。

 全世界的に市場が休場となる元日を経て、東京勢は3が日に参加者がほとんどいない中で、ドル自体はいったん買い戻しが入る展開に。年末に報じられていたトランプ大統領による米中第一弾合意は1月15日にもホワイトハウスで文書調印式を開催予定との材料などを受けて、市場に同問題に関する楽観論が広がったことなどが、ドル買いを誘った。

 中国人民銀行による預金準備率引き下げの動きもドル買い円売りにつながる格好となり、ドル円は年末につけた108円台半ば割れから108円80銭台まで買い戻しが入る場面が見られた。

 もっとも、そうした流れは中東情勢緊迫化で一気に変化した。

 トランプ大統領の指示により、米軍がイラン革命防衛隊(用語説明1)の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を空爆で殺害。米国とイランの間の緊張感が一気に強まったことで、リスク警戒のドル売り円買いが広がった。

 イランの最高指導者や政府関係者は米国への報復を宣言しており、世界の地政学的なリスクが一気に広がる中で、リスク回避の円買いが強まった。

 ドル円は108円割れまで値を落とす展開に。ユーロ円が年末時点の122円台から120円10銭台へ、年末144円30銭台まで買いが入っていたポンド円が141円ちょうど近辺へと、クロス円でも大きな円高進行が見られた。

今週の見通し

 地政学的リスク警戒。

 司令官クラスが殺害されたということで、緊迫感が一気に広がっている。米軍基地などがあるイラクは、同問題を受けて米軍などを含む外国部隊の国外への撤退を求める決議案を議会が可決するなど、中東全体にわたっての影響が懸念される状況に。

 当面の解決が難しいこともあって、当面はドル円、クロス円の頭が重い展開が続きそう。

 具体的な軍事的な衝突や大規模テロがある可能性が否定できないだけに、ドル買いには慎重姿勢が広がるか。ドル円は107円割れも視野に入れた動きが見込まれる。

 クロス円も同様に円買いの動きとなりそう。中東からの原油の輸送が難しくなる可能性があり、NY原油先物が大きく上昇するなど、石油価格の高騰が懸念される。この中で、日本経済にとっても決していい状況ではないが、それ以上にリスク回避での円買いの動きが優勢となりそう。ユーロ円は120円手前にまだ買い意欲が見られるが、割り込んでいく動きも意識したいところ。

 なお、円以外で買いが入っているのがカナダドル。先進国唯一の純産油国(輸出>輸入)として、原油高を好感。こちらももう一段のカナダ買いがありそう。ドルカナダは1.3000が重くなると1.2900割れを意識。

用語の解説

イラン革命防衛隊 1979年のイラン革命で同国の体制が大きく変化した際に、それ以前からあったイラン国軍に加えて新たに組織されたイランの軍組織。イラン国軍と同様に陸軍・海軍・空軍組織を持っており、国内に二つの軍隊が並列する格好となっている。国防省の統括下である国軍とは違い、革命防衛隊省の統括下にあり、情報部、特殊部隊(コッズ部隊)、ミサイル開発部隊、民兵部隊なども管轄しているほか、不動産・石油事業などの経済部門もある。創設の経緯から反米色が強い。
コッズ部隊 1980年代に起きたイラン・イラク戦争時に組織されたイラン革命防衛隊傘下の特殊部隊。対外工作が専門で、イスラエルなど敵国とされている国に対する破壊工作や、海外の反イラン勢力の排除などを担当しているとされている。また、親イラン派民兵組織「人民動員隊(PMF)」などもコッズ部隊の傘下にあるとされており、同組織のムハンディス副司令官は、ソレイマニ氏と共に米軍の空爆で亡くなっている。

今週の注目指標

米ISM非製造業景気指数(12月)
1月8日0:00
☆☆☆
 前回は予想を下回る冴えない数字となった同指標。今回は54.5と前回の53.9からの小幅改善が見込まれている。しかし、3日に発表された同製造業景気指数が予想及び前回を下回るかなり弱めの数字となっただけに、非製造業の数字にも警戒感が広がっている。前回は雇用部門が55.5と7月以来の高水準を記録した。全体の数字に加え、同部門の数字にも注目。前回からの悪化が目立つと10日の米雇用統計への警戒感につながり、ドル売りも。ドル円は107円台前半へ値を落とすような動きもありそう。
米ADP雇用者数(12月)
1月8日22:15
☆☆☆
 前回は予想の+13.5万人に対してわずか+6.7万人にとどまったうえ、前回値が下方修正された同指標。一方相関関係が指摘される米雇用統計(NFP)は予想を大きく上回り、前回値も大幅上方修正と、ADPとは全く方向感の違う結果となった。こうした状況が続くとADP雇用者数自体の市場からの信頼が失われるだけに、今回の結果には要注目。予想は前月比+16.0万人。市場はNFPの前哨戦という位置づけを完全には崩しておらず、予想を超えて雇用の回復が目立つとドル買いにつながる可能性も。ドル円が108円台半ばを回復するきっかけとなる可能性も。
米雇用統計(12月)
1月10日22:30
☆☆☆
 前回は非農業部門雇用者数(NFP)が、自動車大手GMのスト終結に伴う雇用増もあって、予想をはるかに超える+26.6万人を記録。失業率も予想に反して0.1%ポイント低下し、1969年以来の低水準となった9月分と並ぶ3.5%となった同指標。今回の予想はNFPが+16.2万人と前回ほどではないにせよ、まずまずの好結果が見込まれている。失業率も前回と同水準が見込まれている。予想前後の数字が出ると影響は限定的と見込まれるが、前回の反動もあって予想に反して弱めに出ると、地政学的リスクの高まりから神経質な市場で大きなドル売りにつながる可能性がある点には要注意。NFPが+10万人を割り込むような弱さを見せると、ドル円は106円台トライを意識する展開も。

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